『終末世界』 
  
<プロローグ> 
  
 得るものは少なかった。 
 失うもののほうが多かった。 
 生きていく上では仕方の無いこと。 
 そう教えられてここまで生きてきた。 
 でも、手にしたものは皆壊れていき、 
 生あるものとして存在したものは、その温もりを失わせていた。 
  
 ぼくは、一生懸命何かを産み出そうと頑張った。 
 手がボロボロになるまで作り続けた。 
 目が痛くなっても作り続けた。 
 でも産み出すものは、冷たく無機質なものばかりだった。 
 意思だってある。 
 会話することだって出来る。 
 でも、温もりはそこには無かった。 
  
 彼らに罪は無かった。 
 でもぼくは、やり場のない悲しみを彼らにぶつけた。 
 産み出すたびに壊し続けた。 
 手の感覚が無くなるまで叩き続けた。 
  
 神様は破壊と創造を掌るものだと聞いたことがある。 
 ぼくは今それを両方している。 
 でも、そんな威張れるモノではなかった。 
  
 だって、失敗作を産み続けているだけだったから。 
 その失敗作を、自ら壊しているだけだったから。 
 自作自演だったから。 
 もし神様もそうなのだとしたら、 
 それは今のぼくと同じ次元のものでしか無いのだと思う。 
 神様なんて、様を付けて崇めるような存在では無いのだと。 
  
 ただ僕は、その事実に気付いただけ進んでいると思う。 
 大半の人間は、失敗作を産み続けている事実に気付きさえもしないのだから。 
 それは神様だって同じだと思う。 
  
 養えもしない人間を創り続けている。 
 そして、その大半は壊れていく。 
 残った人間は、自分たち以外の存在を壊し、食い尽くしていく。 
 食い尽くした後の大地には何も残らない。 
 そしてその代わりに、無機質なものを創り、残していく。 
 無機質なものは、その後また他の何かを壊すものへと変化する。 
 その繰り返し。 
  
 生あるものが無限だと信じていた頃は幸せだった。 
 壊しても壊しても、また生まれ出てくると。 
 でも、生あるものは有限だった。 
 有限のものを奪い合うために、人間同士の戦いまで起こった。 
 同じ種族で殺しあう戦い。 
 生あるものの中でも最も醜い、低次元の争い。 
 そんな争いが起こるたび、人間はさらに生あるものを食い尽くしていった。 
 その繰り返し。 
  
 もし、神様が万能ならば、その醜い連鎖をどこかで断ち切ってくれるはずだ。 
 でもそれをしようとはしない。 
 だって、神様は人間が生んだ幻想だったから。 
  
 僕は、無駄だと知りながらも創りつづけた。 
 産み出そうと努力した。 
 でも、僕の手で創り出したものには温もりは無かった。 
 心はあるのに。 
 会話だって出来るのに。 
  
 いつしか、手は限界に近づき、創り出すのも最後になりそうだった。 
 周りにたくさんあるはずだった生あるものは、もはや尽きかけていた。 
 これで最後にしようと思った。 
  
 風に乗って声が聞こえてきた。 
  
 「…家族が欲しいって、思ったことない?」 
  
 酷く懐かしい声。 
 温かな声。 
 僕を生あるものとして産んでくれた声。 
  
 家族。 
 それは僕が欲しかったもの。 
 そして創りつづけているもの。 
 叶わないもの。 
  
 最後だと思い、動かない手を奮い立たせた。 
  
 もうすぐ、僕も終わるのだと思って。 
  
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 書きたいと思っていた、オリジナルに近いSSを書いてみました。 
 某所で話題になった「世界の終わり」をモチーフに、CLANNADの幻想世界っぽい世界観で書いてみました。 
 正直、これだけでは何のこっちゃわからん?!って感じですが、現実の世界と照らし合わせてもらえると分かりやすいかと思います。 
  
 ここから先の展開ですが、CLANNADキャラを中心に、学校編のキャラを色々と使って、この#1の「終末世界」と「現実世界」とを行き来するようなSSにしていきたいと思います。 
 要は、CLANNADの世界観やキャラだけを使った、割とオリジナル色の濃いSSにしていきたいと思います。 
  
 何か要望とか、今後への期待や現時点での注文などありましたら、「掲示板」とかに寄せていただけると嬉しいです。 
  
 では、次回作が出来ることを楽しみにして…。 
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