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CLANNAD小説(SS)の部屋
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48    『岡崎家<第8話・大晦日編>』(CLANNAD 汐編アナザーストーリー)
2005.01.03 Mon. 
『岡崎家<第8話・大晦日編>』
 
 渚の誕生日&クリスマスの日以降、俺たちの距離はさらに縮まったように思った。
 寝るときは、布団2つ分くらいのスペースに4人で寝るようになった。
 俺と杏が両端で、間に風子と汐がいる、という感じだ。
 夜中にふと目が覚めたりすると、3人の寝顔が間近にあって驚くこともあった。
 (汐の寝顔が近くにあって驚く者はいない)
 
 何か満足そうな表情で、汐を抱きしめたり俺の胸にしがみついたりしている風子。
 時折難しい表情になったり、逆ににやけてみたりして怪しい杏。
 幸せいっぱいの表情をしている汐。
 
 …俺はどんな表情で寝ているのか、少し恐ろしくも感じるが。
 
 大掃除。
 と言っても、狭い家でもあったし、俺と汐ではそれほど散らかさないし、造作も無かった。
 「なによ〜っ。やりがいが無いわねえ」
 そう残念そうな声をあげたのは杏だ。
 そんな期待されても困るのだが…。
 「ヒマですので、風子とトランプでもしましょう」
 「うん」
 娘ども2人は勝手に遊び始めるし…。
 
 「…またかった」
 「また負けてしまいました…」
 年齢差を考えると、ありえない光景がそこにはあった。
 パパ抜き・七並べにおいて、汐は風子をほぼパーフェクトに抑えて勝っていた!
 「もう一度挑戦ですっ」
 「…ちょうせんっ」
 「はいっ」
 
 まあ、風子の勝負弱さは何となくわかったが、汐の勝負強さはよくわからなかった。
 なんたって、渚の娘だ。
 渚がこんなに連戦連勝を続けるような人間だと、俺と一緒になるなんてことも無かったはずだ。
 ただ、同時に俺や、オッサンの血も引いているのだ。
 やはり、渚よりも俺に似ているのかもしれないな。
 そんなことを考えながら、2人の真剣勝負を眺めていた。
 
 ----------------------------
 
 大晦日を迎えた。
 血気盛んな(?)俺と杏たっての希望で、テレビ番組は「男祭り」。
 「いっけーっ!! 瀧本〜〜〜っ! そのまま締めてしまっちゃって〜〜〜ぇっ!!」
 「ぐわぁぁ〜〜っ!!」
 杏が試合を見てエキサイトするものだから、近くで見ていた俺が、ネックロックやスリーパーの犠牲になっていた。
 風子は…、
 「あの人血が出てますっ!大変ですっっ!!怖いですっ!!」
 とか言いつつ、汐を抱きしめている。
 汐は、
 「がんばれっ、がんばれっ」
 …と、なぜか俺の方を向いて応援してくれていた。
 
 「…ノゲイラもヒョードルも、どっちが強いかなんて決められないわよね…」
 「…ああ、そうだな……」
 俺と杏が、今日見た試合の感想を話していたら、傍らでは、2つの寝息が聞こえてきた。
 最終的には、風子と汐はお互いの手を握り合って、寄り添うように眠っていたのだった。
 その光景は、どう見ても"姉妹"にしか見えなかった。
 
 「寝ちゃったのね」
 「ああ…」
 「…悪いことしちゃったかな?」
 「どうして?」
 杏が、バツの悪そうな表情をして言うものだから、俺は思わず聞き返してしまった。
 「…だって、今日は汐ちゃんがパパと過ごす、初めての大晦日だったわけでしょ?」
 「……」
 杏の言葉を聞いて、俺は沈黙してしまった。
 あの日以降、汐と俺は同じ時を過ごしていたが、
 杏や風子がウチに来て以降は、常に汐の側にいたわけでは無かった。
 
 しかし…。
 
 「くーっ。くーっ」
 
 可愛らしい寝息を立てる汐は、風子と抱き合いながら、実に和やかな表情をして眠っていた。
 「…関係ないのかな?」
 「…そうだな……」
 本当のところはよくわからなかったが、汐は俺と2人だったときも、そして今も、
 寂しそうな表情をすることは無かった。
 早苗さんから聞いていた以前の汐からすると、十分明るさを取り戻しているようだった。
 
 「…ようやく寝静まってくれたわね……」
 杏の目がキラーン、と光った!
 そして、自分の真後ろにあった包みを取り出した!
 「じゃーん!!」
 手に取ったのは、一升瓶だった!
 「酒か?!」
 「そうよっ。今日くらい飲み明かさないとねっ」
 どうやら杏は、日本酒を買ってきたらしかった。
 「じゃあ、ビールも出すか?」
 滅多に飲むことの無いビールを、冷蔵庫から2本取り出してきた。
 「飲もっか? 朋也」
 「やるかっ」
 「かんぱーいっ」
 こうして、2人の年越し酒盛りが始まった。
 
 「あっはっは〜。朋也ったら、もう顔真っ赤ぁ〜〜」
 「杏だって目がイってるだろ?」
 お互い大して酒に強くないせいか、30分もすれば酔いがかなり回ってきていた。
 とは言え、俺は顔の赤さほど酔ってはいなかったが、杏はヤバイくらいに酔っている。
 「なぁ〜にぃ〜意地はってんのよぉ〜〜」
 初めて杏とは酒を飲んだのだが、どうやらカラミ酒らしい。
 「ほぉ〜らぁ〜〜。朋也ももっと飲んでよぉ〜」
 ろれつが回ってないせいもあるかもしれなかったのだが、口調が甘ったるい感じになっている。
 そうこうしているうちに、杏が俺に擦り寄ってきた。
 自分の頬を、俺の肩のあたりですりすりしている。
 そうしているのかと思うと、自分のコップに入っていた酒を一気に飲み干していた。
 「ぷはぁ〜っ。やっぱりぃ、朋也とやると何でも楽しいわねぇ〜」
 「俺も楽しいぞ」
 単なる普通の酔っぱらいのカラミ方ではあったが、それを杏がやってるというのは新鮮に映った。
 学生時代も、コイツといるときは色々と楽しかったっけ。
 色々とケンカもしたけど、それも一種俺たちにはコミュニケーションみたいなものだった。
 「ね、朋也ぁ」
 今まではもたれ掛かっているだけだったのだが、そのうち杏が俺の腕に抱くようにしていた。
 「ん? どーした? 杏」
 俺も随分と酒が入っていたから、腕に感じる杏の温もりや柔らかさを心地よく感じるだけだった。
 「…あのねぇ。あたし、いますっごく幸せ」
 「そうなのか?」
 「うんっ」
 少し意外だった。
 だって、ウチに来るようになって杏は、いつも風子に振り回されているだけに感じていたからだ。
 そんな状態が「幸せ」だと言うことが意外だった。
 杏の言葉の意味を考えていると、さらに杏は続けて話した。
 「だってぇ〜、こんなに朋也の近くにいれるんだもん」
 「そっかぁ〜。…ってどういう意味だ?!」
 「ドサクサにまぎれて抱きついちゃったぁ〜」
 俺の問いは、聞いちゃいねえ〜っ、な状態だった。
 しかし、俺の近くにいれるのが何で幸せなのが、さっぱりわからなかった。
 「えっへっへ〜。朋也とひとつ屋根のしたぁ〜」
 そうした杏の行動は、少しも嫌ではなかった。
 むしろ、何かいいな、と思った。
 そう思った自分の心の内はよくわからなかったが…。
 
 「ともやぁ〜。ともやぁ〜」
 杏は、俺の名前を連呼しながら眠りに落ちていった。
 俺もいつしか限界を迎えていた。
 俺の腕を抱く力が弱まって、杏は俺のヒザの上に落ち、そこで眠りについた。
 俺も、そんな杏に覆い被さるようにして眠っていた。
 
 とっくに時計は、12時の針を通過していた。
 実感の無いまま、「岡崎家」は1年目を終え2年目に突入していた。
 
<第8話終わり→第9話に続く>
 
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 岡崎家の、大晦日の風景について書いてみました。
 本当は、元旦くらいの風景と両方を1話に書く予定だったんですが、ボリュームが大きくなってしまったので、大晦日編だけで掲載します。
 
 まあ内容は、杏が酒で乱れて…って感じですね(そこだけかいっ!!)。
 杏って、結構内に秘めるタイプだと思うんで、酒でぶっちゃけるんじゃないかなあと思うわけです。これでもまだ、自制しているとは思うんですけどねw
 
杏「誰が自制してるですって?」
りきお「…後書きに登場されるんですか?」
杏「あんまり勝手なこと書かれるとねえ…」
りきお「ひぃっっっ!!!???」
杏「アンタなんか、陽平と同格で良いわよねぇ〜〜〜」
りきお「ぎゃぁ〜〜〜〜〜〜っっ!!!」
 
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 そんなわけで(?)、2005年初のSSでした!
 2005年も当サイトをよろしくお願いします!!
 
 感想などは「掲示板」とか「SS投票ページ」にお寄せください!!
 では次回は「元旦編ほか」をお届けします!

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