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CLANNAD小説(SS)の部屋
CLANNADの小説を掲載していきます。

3    『体育倉庫イベント@ふぅちゃん編』
2009.03.22 Sun. 
『体育倉庫イベント@ふぅちゃん編』
 
 
 
 宮沢のおまじない。
 …思った人と体育倉庫に閉じ込められる?
 何てピンポイントすぎるおまじない。
 ただ、案外当たるから恐ろしい。
 
 
 …で、どうしてか思い浮かんだのは…風子。
 何であいつなんだ???
 
 胸もぺったんこだし、顔を含めた容姿は子どもっぽいし、
何より頭の中がおこちゃますぎる。
 あいつと閉じ込められたところで、何か美味しいイベントや興奮させられるような展開が、
俺には全く思いつかなかった。
 
 だから、本当ならその選択肢は…無かったはずだった。
 無かったんだ。
 …が、全く思いつかないところから、何が起きるのかも興味があった。
 だから思い浮かべたんだ。あのちっこいのを―――。
 
 
 
 
 俺は一人で体育倉庫に来た。
 が、その間に目当ての人物に遭遇することは無かった。
 
 さすがに、一緒に閉じ込められないとこのおまじないは成功しない。
 と言うことは、既にその状況が作れない状態では無理か…。
 
 そんな風には思ったが、でもまあ、ダメ元で体育倉庫の中には入ってみることにした。
 中に潜んでいる…なんて逆転弾があるかもしれないし…。
 
 開きっぱなしになってる入り口を通過し、中の様子を窺うことにする。
 あのちっこいのが隠れられそうなところを隈なく探す…が、姿はおろか気配さえ感じられない。
 
「風子…、いるか?」
 
 …。
 
 返事も無い。
 どうやら本当にいないらしい。
 
 そんなことをしているうちに、扉が閉められた。
 …閉じ込められたようだ。一人で。
 
「なんなんだよ、全く…」
 
 部分的にしか効果が現れなかったんだろうか?
 しかし何が悲しくて、一人でこんな場所に閉じ込められなきゃならないんだろう…。
 
「出るか…」
 
 解呪の方法も聞いているんだった。
 しかし…一人でやるというのも恥ずかしすぎる。
 まあ他に誰かいても恥ずかしいのだが。
 
 かちゃかちゃ。
 
 ベルトを外し、ズボンを脱ごうとする…と…。
 
 
 
 
「風子、参上ですっ」
 
 
 
 …。
 ……。
 
「って、いきなり風子、貞操の大ピンチですっ!!」
「いやいやいや」
 
 俺は慌ててベルトを締めなおす。
 って言うか、何処から入った?!
 入れるわけが無いし!?
 何処から現れたっ?!
 人の気配は確かに無かったはず!!
 …訳がわからないんだが。
 
「風子、登場していきなりやられるなんて、時代劇の悲劇の女性並みですっっ」
 
 その例えもよくわからないんだが。
 良いではないか〜ってやればいいのか?
 残念ながらそんな色気はこいつには無いと断言できるし。
 やろう…とは思わないんだが。
 
 
 
 
「…で、どうなってるんだ?」
「風子にもよくわかりません」
 
 参上されてからしばらく。
 閉ざされた体育倉庫の中で訊いてみた。
 しかしわからないらしい。
 
「どうして風子がここに参上してしまったのかがさっぱりわかりません」
「わからないのかっ?!」
「はい…」
 
 当の本人がわからないのではどうしようもない。
 これも、あの凄まじいおまじないの効果なのか?と思うだけで、背筋が薄ら寒く感じてしまう。
 
「まるで風子が岡崎さんに、悪い魔法で召喚されたような感じでした」
「おいおい…」
「誰かの求めに応えたような感じでしたので…」
 
 あながち、風子のその感じが間違っていないだけに、更に恐ろしい。
 何せここは密室なのだから。
 
「やはり岡崎さんは、風子をこんな密室に召喚して、色んないやらしいことを…考えていたんでしょうか」
「いやいや、ないない」
 
 そもそもこいつでは、欲情する材料がなさ過ぎだろう?とか思っているくらいだし。
 
「そう全否定されると傷つきます」
「どっちなんだっ」
 
 欲情されたいのか、されたくないのか。
 …どっちでも良いけど。
 
 
 とは思ってみたものの、こうやって近くにいると、どうしても見てしまうわけで。
 
 普段はあまりちゃんと見ることの無いのだが…女の子…だよな。
 って確認するまでもなく、誰がどう見てもコイツは女の子だ。
 
 長くてストレートで艶やかな黒髪。大きなリボン。
 少し大きめじゃないかと思うような長いスカート。そこから伸びる黒タイツのほっそりとした脚…。
 誰がどう見ても「男の子」だなどと間違えるはずも無い。
 むしろ…とっても女の子っぽい可愛らしさ満載だ。
 …女の子っぽい? 可愛らしい?
 今まで感じたことの無い感じだ。
 
 顔もまじまじと見てみることにした。
 暗がりだったが、わずかに差し込む光に照らされたその顔は…とても整った顔をしていた。
 
 キレイ…というよりは、とても可愛らしい、という表現が似合うような、そんな童顔。
 でも、凄く整った顔をしてるのは、誰の目にも明らかかもしれない。
 それはそうだろう。コイツは伊吹先生の妹なんだから。
 あのもうろくしたジィさんが認めるくらいの、美人さんの。
 
 そうやって改めて見ると、少し丸顔なところはよく似ているし、ぷっくりとした唇とかも愛らしい気がする。
 それに何より、目とか表情が似ている。
 じっと見つめると、上目遣いでこちらを覗き込んで来るようにしたりとか…。
 何の曇りも無い笑顔なんかはどうだろう?
 …風子はめったに笑顔なんか向けてくれないのだが。
 
 
「どうしましたか? 風子に惚れてしまいましたか?」
 
 見ると頬を赤らめ、視線を外して恥ずかしそうにしてる風子がいた。
 そんなことを言われて、やっと長い時間見つめていたことに気づいて、
自分の方が恥ずかしくなってきた。
 
「仕方がありません。あまりに岡崎さんのツボに入ってしまったということなんですね」
「いやいやいや、そんなことは…」
「そんなことは…どうなんですか?」
「…」
 
 …?
 
 …否定できない。
 さっきまでは出来たのに…。
 きっぱりと。
 出来たはずなのに。
 
 今はどうしてか、否定できない。
 と言うか、否定したくない気持ちが自分の中に…芽生え…て。
 
「否定しませんか…」
「…」
 
 …。
 
 気まずい空気が漂う。
 
 スカートの裾をささっと直し、整える必要の無いほど整っている前髪もいじる風子。
 あれ? 意識…されてるのか?
 
 そういえば、俺が見つめすぎていた時から、ずっとコイツの顔は赤いままだ。
 少しうつむき加減だが、恥ずかしそうに赤らめてる顔は…、
 
 …可愛い。
 
 ツボに入った、ってそんな安易な判断はしたくない。
 確かに、
 
「可愛いんだ」
 
 と確信できる何かを感じている。
 と言うか、そもそもコイツのことは可愛いと思ってたし。
 でも何処か、そういうのが照れくさく感じる自分がいたのも確かなんだが…。
 
「か…可愛いですかっ」
 
 口に出してしまっていた!
 思ってることが心の中だけでとどめられないのは、何かの悲しい習性ってやつだろう。
 …何だ? 悲しい習性って。
 
 見ると、顔は更に赤くなっていたが、どこか嬉しそうに照れ笑いしていた。
 …本気で可愛いんだが。
 
 
 ぽんぽんっ。
 
「わっ」
 
 いつものように頭に手を置く。
 照れ隠しの意味もあったけど、これまでは癖みたいなものだったのが、
今は親愛の情も込めてやってみた。
 
「わーっ」
 
 風子の反応は…いつもと同じような感じだった。
 
 わしわし。
 
 少し強めに撫でてやる。
 
「んっ」
 
 おっ。反応が変わった。
 
 なでなで。
 
 今度はやさしめに撫でてやる。
 
「ん…」
 
 目を閉じて、気持ち良さそうに身を委ねてる…。
 って、犬や猫そのものなのかっ?!
 
 しかし…まあ、頭のてっぺんを撫でるのは凄く気持ちがいい。
 元々ツルツルしてて気持ち良さそうだとは思っていたが、
実際に撫でてみると、想像を超える気持ちよさが直接手のひらに伝わってきた。
 
 調子に乗って、ちょっと抱き寄せるようにしてやる。
 両手で抱え込むようにして。
 
 …軽い。
 おまけに小さい。
 そして…温かい。
 
 そんな状態で撫でてやると、気持ちが良いのか身体を預けるようにしてきた。
 
「気持ち良いのか?」
「…」
 
 返事が無い。
 でも、俺の身体にもたれかかりながら、うっとりとしているのを見ると、
本気で気持ちが良いらしい。
 
 俺自身も気持ちが良かったから、片手で抱きしめながら髪を撫で続けた。
 
 
 こんな近く…密着した状態でこいつと接するなんて…。
 おまじないの前には考えられなかったことだ。
 しかも、嫌などころか、心地よすぎる。
 
「嫌じゃないのか?」
「…はい」
「抱きしめてるの、俺だぞ?」
「…わかってます。岡崎さんでなければ…嫌です」
「…?!」
 
 あれ? 俺…好かれてる??
 これってもしかして…。
 
「なあ、風子」
「なんでしょう?」
 
 両想い…って…こと…。
 
「俺な…お前のこと…」
 
 
 がたんっ、がたがた…。
 
「おーいっ、岡崎ぃ。中にいるんだろーっ?」
 
 邪魔が入った…のか?
 唐突に俺たちは解放された。
 
 
 
「春原」
「ん? どうしたの? 僕への感謝の言葉?」
「逆だ」
 
 ぐいっ。
 思いっきり耳をつねってやる。
 
「いててててっ。何するんだ、岡崎ぃっ」
 
 
「風子ちゃんは、野獣のような岡崎から解放してあげたんだから、僕に感謝してるよね?」
 
 懇願するような…いやらしいような、そんな顔と声で。
 
「余計なお世話ですっ」
 
 ぱこーん。
 ヒトデが顔面にクリーンヒットした。
 
「ぎゃーっ。風子ちゃんまで…」
 
 
 
 惨めな金髪男を見ながら、俺たちは顔を見合わせて笑った。
 
 
 
<おわり>
 
 
【後書き】
 りきおです。いかがでしたか? これは同人誌に掲載したSSだったりします。それの完全版ですね。
 
 個人的には、あの体育倉庫イベントになぜ「風子」という選択肢が無いんだ!! なぜ門前払いなんだ!! っていう衝動を吐き出してみました。もう少し頑張って、もっと萌える感じにしても良かったんですが(汗。案外おとなしくなってしまいました。
 あとは…アニメでCLANNADを知った方には「こんなのふぅちゃんじゃないっ!!」ってお叱りを受けそうですね(汗。僕の中では、風子のベースはあくまで風子シナリオの終盤(アニメで言えば一期の6話〜8話くらい?)なんで。
 アニメでは「贔屓されすぎだろ!」って声もあるみたいですが、僕の中では一番は風子です。嫁って感じじゃないですが、ほんと飼いたい感じですよね(ぇ。
 
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