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CLANNAD小説(SS)の部屋
CLANNADの小説を掲載していきます。

29    『初めての…』(CLANNAD汐中学生編?)
2006.03.21 Tue. 
※このSSは、CLANNAD汐編の後日談的なSSですが、「岡崎家」とは直接関係ありませんのでご了承ください。
 汐編後、朋也と汐の2人での生活が続いていたら…と言うお話です。
 
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『初めての…』
 
 
 俺と、愛娘である汐は、いつものように一緒にお風呂に入っていた。
 家の風呂は狭く、湯船は2人が身を寄せ合わないと浸かれないくらいだった。
 だから必然的に、娘は俺のヒザの上に来ることになる。
 俺はそんな娘の身体を抱くようにして温もるのだった。
 
「ね? パパ」
「何だ? 汐」
 
 俺1人で育て上げると誓った日から、すくすくと成長してきた娘。
 あどけなさは依然として残るものの、女らしい美しさも徐々に感じられるようになってきていた。
 そんな娘の問いかけに俺は応えていた。
 
「…汐、大きくなった?」
「ん? そうだな…」
 
 身長はあまり大きい方では無かった。
 もちろん、母である渚も大きい方では無かったから、恐らくは遺伝みたいなものだと思う。
 それでも、腕の中にすっぽりと埋まった頃からすれば…、
 
「大きくなってるぞ」
 
 そう言って、俺は娘の頭を撫でた。
 娘は、くすぐったそうに、でも嬉しそうに身を委ねていた。
 でも娘は、そんな俺の愛撫を振りほどくように、俺に向き直って言った。
 
「ううん。背じゃ無くて…ここ」
 
 そう言って指差したのは…自分の胸だった。
 
「ん? 胸がどうした」
「汐のおっぱい、大きくなったかな?」
 
 そう言うと、娘は自分の胸を持ち上げるようにしていた。
 俺はそこを凝視する。
 
 …。
 ……。
 ………ううむ。
 
 確かに、今まではまっ平らだと思っていた部分が、確実に膨らみを主張し始めていた。
 
「うん。大きくなってきたな」
 
 そう応えてやると、娘は少し顔を赤らめて、でも少し嬉しそうにはにかんだ。
 
「ね? パパ」
「ん?」
 
 しばらく照れていた娘が再び口を開いた。
 そして、再度胸を持ち上げるようにしてこう言った。
 
「…ブラジャー、買って欲しいの」
 
 …そこまで言われてようやく気付いた。
 汐は、大きくなってきた胸が恥ずかしいのだと。
 だから、ブラジャーが欲しいのだと。
 
 娘はもう、中学1年生だ。
 中学にもなって、ブラをつけていない子はあまりいないのかもしれなかった。
 
 俺は、そんな娘の成長を気付いてやれなかった後悔と、
気付いてもどうしようもなかった、自分の経験値の無さを思い出していた。
 
 
 汐に初めて月のモノが来たとき。
 俺は、汐を抱きかかえながら顔色を変えて古河パンに駆け込んだらしい。
 …らしい、と言うのは、俺自身は、その時の記憶が無いくらいに動転していたからだ。
 そのためか、結局、早苗さんに色々と助けてもらったりしていた。
 そのことに対し、俺は自分の無力さに打ちのめされた。
 
 
 自分ひとりで育て上げる、と言う誓いは、脆くも崩れ去っていたのだ。
 
 
 今回だって、汐が言ってくれたからこそ気付けたが、
俺に遠慮したりして言えなかったりしたら、
汐自身がずっと恥ずかしい思いをしていたかもしれなかったのだ。
 
「ゴメンな…」
 
 俺はそう言って、汐を抱きしめた。
 素肌から、直に娘を感じた。
 
「…ううん。汐のわがままだから」
 
 そんな健気な娘の言葉に、俺はさらに胸が詰まる思いがした。
 汐は遠慮してか、俺に何かが欲しい、とはほとんど言ったことが無かったのだ。
 
 別に、家の財政が逼迫していたわけじゃあない。
俺はパチンコを断ち、酒も週末に飲む程度に抑えていたし、
休みの日は汐と2人で遊んでいたから、大した出費は無かった。
 だから、俺1人の稼ぎでも、2人が生活していく上では問題も無かったし、
汐には不自由させるほどの状態ではなかった。
 それでも、汐は俺に対して、お金のかかるようなわがままは言ったことが無かったし、
贅沢をしたいと言ったことも無かった。
 
 だからこそ、そんなことを「わがまま」と言った娘に対して、
自分の至らなさが、余計に不甲斐なく思えて仕方が無かった。
 ウチの財政に気を遣っているのか、遠慮しているだけかのかわからなかったけれど。
 
「そんなこと…。そんなこと、無いからな。
今度の休み、一緒に買いに行くか?」
 
 俺は、溢れてくるものを堪えながらそう答えた。
 
「パパ…、いいの?」
「ああ。
 汐の気に入るものが見つかるまで、付き合うからなっ」
 
 まだ遠慮している娘に、俺は努めて力強く言った。
 
「…うん」
 
 娘は身を捩ると、少し嬉しそうにそう答えた。
 俺の腕には、膨らみ始めた娘の胸の感触があった。
 
「ありがと。…パパ」
 
 そう言うと、娘は後ろから抱きしめている俺の腕を、より強く抱いていた。
 
 
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 週末になった。
 腕の中で目覚めた娘は、いつもの二割増くらいの笑顔であいさつをしていた。
 
「おはよ、パパっ」
 
「おはよう、汐」
 
 少し遅れて俺も応える。
 
「じゃあ、行くか?!」
「うんっ」
 
 身支度もソコソコにして、俺たちは町へと繰り出す。
 娘は、背が伸びたこともあってか、俺の腕を抱くようにするのがお気に入りらしかった。
 小さい頃は、ただ手と手を繋ぐだけだったのだが。
 だから今日も、そんな状態で歩き出した。
 もちろん、手は繋いだままで。
 目指す先は…町の商店街だ。
 
「…パパ」
「何だ? 汐」
 
 腕を組んだまま歩く娘が、歩きながらこう言った。
 
「…デートみたい……」
 
 ……。
 どうなのだろう?
 父と娘でデートなんてことは、あまり無いだろうとは思う。
 けれど、娘に抱かれた腕に伝わる温もりと柔らかさが、娘の言葉を否定できなくしていた。
 
「そうだな…。でもこんなオッサンじゃ嫌だろ?」
 
 娘は、親の贔屓目に見ても可愛かった。
 学校まで迎えに行ったとき、娘の側にいたガキどもの視線が違っていたのも感じた。
 明るくて活発で、それでいて優しかったりしたら…。
 モテないわけが無いと思った。
 だから、年相応に、同い年くらいの男と歩く方が良いのかと思っていた。が…、
 
「ううん。パパ、オッサンなんかじゃないよっ!
 パパ、ずっとカッコいいし…」
 
 そう強い口調で言われた後、絡みついた腕の密着度を高めていった。
 腕に押し付けられる、娘の膨らみを感覚として感じてしまっていた。
 それで、娘の発言の真剣さが理解できた。
 
「そっか…。じゃあ、パパ頑張るなっ」
「うんっ。だから、ずっとカッコいいパパでいてねっ」
 
 俺は、娘の隣にいるに相応しい男で居続けよう。
そう心から誓った。
 すぐ隣にいる娘と視線が交錯した。
 互いに微笑みあった。
 幸せな気分で、商店街を目指した。
 
 
 
 俺たちは、見慣れた商店街に辿り着いた。
 普段はそう行くことは無いところだが、仕事では頻繁に訪れていた。
 それに、俺が学生だった頃とは様相がかなり異なっていた。
 駅前は「再開発」で、商店街の一部が取り壊されて、大きなショッピングセンターになっていた。
そこに、昔商店街で店をやっていたところも入っているのだ。
もちろん、俺には縁の全く無いような、おしゃれな店も入っているようだったが。
 
「よしっ。入るかっ」
「うんっ」
 
 俺は、自分に似合わない店へ入ることへのためらいから、気合を入れたつもりだったが、
娘はそんな俺の葛藤など全く意に介してはいないようだった。
 俺は娘に引き摺られるようにして、巨大な建物の中へと入っていった。
 
 
 中はとてつもなく広かった。
 でも、案内板を見て、女性もののフロアはすぐわかったので、その階へと進んだ。
 
 そのフロアへと脚を踏み入れた。
 …そこは、まさに未知の世界だった。
 男っ気が全く無かった。と言うか、男の匂いがほとんどしなかった。
 
 くいっ。
 
「パパ、こっちこっち」
「お、おう」
 
 俺は、娘に引かれるがまま、歩を進めた。
 足取りは重かったが。
 
 
 娘に連れられて来た先は…。
 予期していたとおり、女性の下着売り場だった。
 その中でも、ジュニア用のコーナーへと連れて行かれた。
 
 ここは、丁度中学生くらいの女の子がつける下着を売っているところらしく、
周りには、汐と同じ位の歳の女の子と、俺より一回りくらい年上のマダムたちがいた。
 
 不審者を見るような視線を感じる…。
 
 俺はなるべく気にしないように努めて、娘の後姿を追った。
 
 
 娘は、熱心に下着を見つめていた。
 俺はそっとその後ろについた。
 
「んん…」
 
 凄く悩んでいるようだ。
 2つ、3つを手にとって見比べていた。
 …もしかすると、1つに選ぼうとしているのだろうか?
 
 そう思った俺は、すぐに声を掛けた。
 
「汐。別に何着か買って良いからな」
「…えっ?! パパ…、いいの?」
「ああ…。って言うか、洗濯が間に合うくらいには買えよな」
 
 1着だけ買ったところで、洗濯している間には着ける下着が無くなる。
 だから最低限、3日分くらいは欲しかった。
 
 それを聞いた娘は、選んだ3つを見比べた後、俺の方を見て、
 
にこっ
 
 と笑って、
 
「うんっ」
 
 と力強く言った。
 そして、選んだ3つを抱きかかえた。
 
 
「試着しますか?」
 
 店員がそう聞いてきたので、
 
「汐、試着しておくか?」
 
 そう娘に尋ねた。
 すると、
 
「うんっ」
 
 そう言って俺のことばに従った。
 
 
 
 しゃーっ。
 
 更衣室のカーテンが閉められた。
 何か、酷く疎外感を感じた。
 家では、一緒に風呂にも入るくらいオープンなのだ。
当然、脱衣所(と呼べるほど広いスペースは無いので、適当な場所で脱ぐが)ではお互い隠したりはしないので、
拒絶されたような、少し寂しい思いがした。
 俺は仕方なく、更衣室の前に立って待つことにした。
 
 しゅっ。
 衣擦れの音がする。
 
「ん〜っ」
 
 娘の悩ましげな声が聞こえた。
 デザインがイマイチなのだろうか? …サイズが合わないのだろうか?
 その声から俺は、様々な想像を巡らせていた。
 
「パパ〜」
「どうした? 汐」
 
 いきなりの呼びかけだったが、俺は即座に反応して返答していた。
 
「手伝って」
 
 …その言葉は、願っても無い申し出だった。
 ので、俺は更衣室のカーテンに手をかけた。
 
「良いか?」
「うん」
 
 一応、娘の了解を取ってその中へと入った。
 そこには…、
 
 
 未だブラを着けられずに、胸を晒したままの娘がいた。
 俺は後ろ手で慌ててカーテンを閉めた。
 
「お、おいっ、汐。前くらい隠さないとダメだろっ?!」
 
 まさか、娘がそんな状態で招きいれたとは思わなかったので、俺は少し動揺していた。
 しかし、
 
「え? どうして? いつも一緒に着替えてるのに」
 
 と、娘は全く意に介してはいなかった。
 
「ほ…ほらっ。パパが入ってくるときに、他の人に見られるだろ?!」
 
 俺は、もう1つ心配していることを言った。
 
「あ…。うん、そうだね。ゴメンね、パパ」
 
 だが、そのことに関しては娘も素直に受け止めてくれたようだった。
 
 で、改めて娘を見た。
 …やはり、胸は晒したままだった。
 
 家では、それこそ毎日のように見ているのだ。
 胸だけじゃなく、全部を。
 ただ、家の外で見る娘の裸の姿は、いつもとは違って見えていた。
 
「…パパ?」
 
 視線が定まらない俺を見かねてか、娘から声をかけてきた。
 
「ああ…、ゴメン。ブラを着けるのを手伝って欲しいんだったな」
「うん」
 
 そう言うと俺は、娘が手に持っていたブラを持って、着けようとした。
 しかし…。
 
 そんな経験の無い俺に、着けられるはずが無かった。
 ぎこちなく苦闘していると、娘が助け舟を出してくれた。
 娘は、自らブラのカップの部分と肩ヒモの部分を合わせると、俺に、
 
「パパ。後ろ止めてくれるかな?」
 
 後ろ…。
 おそらくフックが後ろについているということだろう。
 俺は後ろに廻り、娘の背中を見た。
 それは、小さいけれど綺麗な背中だった。
 …あまり見つめていても不審がられるだけだったので、フックを止めてやることにした。
 そのときに触れた素肌の感触がとても柔らかだった。
 
「ありがとう。…で、パパ。どう?」
「うーん、そうだな…」
 
 これが、初めて見る娘の下着姿だ。
 いつもは上半身裸しか見ていなかった。
 こうして、ブラを着けた姿を見ていると、何故か、
 
「色っぽく見えるな」
 
 そう思ったから口に出していた。
 ブラのデザインはシンプルなものだったし、色気を感じるほど胸も大きくは無かったが、
何故か色気を感じてしまった。
 これが下着と言うものの魅力なのだろうか?
 
 じぃーっ、と娘の胸を凝視した後、再び娘の表情を見た。
 すると…照れているのか、頬をほんのりと紅く染めて笑っていた。
 
「えへへ…」
 
 改めて、娘はこの世で一番可愛いと認識させられた。
 どこかの事務所の人間にスカウトされないように気をつけないといけない…と。
 …こんな田舎までスカウトに来るとは思えなかったが。
 などと、娘の頭を撫でながら、またアホなことに思いを巡らせていた。
 
 娘は俺に見せ終わると、背中に手を回し、
 
「んしょっ」
 
 そんな声と共にブラを外した。
 再び眼前に、上半身裸の娘の姿。
 
 素直に、綺麗だと思った。
 まだ膨らみきってはいなかったが、確実に女性としての自己主張を始めた胸。
 透き通るようなきめの細かい白い肌。
 
 そんな娘を、じーっと見ていた。
 
「どしたの? パパ」
「あ…いや、別にな」
 
 間違っても、娘の身体に魅入っていた、とは言えなかった。
 別にやましい気持ちは無くとも。
 
 娘は、そんな父親の視線を気にしながらも、次のブラへと手を掛けていた。
 
 
 
 結局、俺に見せて、俺が納得したものを選んで買うことになった。
 合計5着。
 決して安い買い物では無かったが、洗濯してギリギリ間に合うような数では、
また娘に窮屈な思いをさせてしまうと思ったのだ。
 できれば、毎日どれを着けていこうか悩む位には買ってあげたかった。
だから、最初に悩んで持って来た3着だけじゃなく、追加で2着も買ってやることにした。
どうやら、自分で選んで悩んだものは、俺にとっても納得のデザインだったらしかった。
 
「…○○○円になります」
 
 レジ担当のお姉さんの声を聞いて、娘が不安そうな顔をしたが、
俺が何事も無く支払って笑顔を娘に返すと、少しだけその表情が和らいだ。
 
「はい、汐」
 
 俺は少し厳重に入れられた袋を娘に渡した。
 娘はそれを受け取ると、大切そうに胸に抱いていた。
 
 
 
「…ね? パパ」
「ん? どうした、汐」
 
 帰り道。
 久々に、普通に手を繋いで歩いていた。
 
「今日はありがと」
「…いいや。気にすることなんか無いぞ」
 
 今日という日は、俺にとってもかけがえの無い1日になったと思う。
 娘の成長を間近で感じられたこともあるが、父親として、娘の悩みを解決できたことは嬉しいの一言だった。
 
「また…付き合って」
「ああ。いつでも付き合うぞ」
 
 そう言うと、俺は娘を背中から抱きしめた。
 娘は身を捩りながらも、どこか嬉しそうに笑っていた。
 
 
 
『…変わらずにはいられないんです』
 
 
 懐かしい声が聴こえた。
 俺が愛してやまなかった人の声が。
 
 少し前なら、その声の主を探して動揺していたが、今ではそれも無かった。
 なぜなら、その声の主はもう戻ってこないことを知っていたから。
 
 
 俺たち家族も、変わらずにいられない。
 でも、出来る事ならば、2人の今の関係が続けばいい。
 そんな希望とも願望とも判断できないような思いを抱きつつ、娘の温もりを感じていた。
 
<終わり>
 
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 いかがでしたか?
 まあ駄文ですね(^-^; ただ父親だけの片親なら、女の子を育てるのは大変だろうなあ…って思ったところから思いついたネタです。ロリこんとかに出品してみたかったネタでもありましたが。
 
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