『幻想世界物語』 
  
  
 少女は、ずっと一人ぼっちでした。 
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 ある日、少女がいた森に、血相を変えた男の人が来ました。 
 その人は、小さな子どもを抱えていて、 
  
「助けてくれ」 
  
と、必死に言ってました。 
  
 少女は、その子どもの半身になることで、その子を、父親を助けることにしました。 
  
  
  
  
  
  
  
  
 その子の半身になって何年かが経ちました。 
 …運命の出会いがありました。 
  
 その子は、運命の出会いをしました。 
 それは、少女にとっても運命の出逢いでした。 
  
 ある男の子と出会ったのです。 
  
  
  
「…見つければいいだろ」 
  
…誰もいなかったはずの世界に、突如現れた存在。 
 それは…ただ1つの光。雲間から差した光。 
  
「えっ?!」 
  
 少女は、その子の気持ちと同調しました。 
 …そのくらい、衝撃的な出逢いだったのです。 
  
  
  
  
  
  
  
 その子は、いつしか男の子と深い関係になりました。 
 それは、少女も望んでいたことでした。 
  
 友達から恋人へ。そして結婚。 
 少女にはよくわかりませんでしたが、男の子と一緒にいられることは嬉しかったし、 
深い関係になったことも、より近づけたと感じられて幸せでした。 
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 その子は、その体内に子を宿しました。 
 少女は、どちらに行こうかと思案しました。それは、少女は1つだったため、どちらか1人にしかいられなかったからです。その結果、新たに宿した子のほうへ行くことにしました。 
 それと同時に、その子の体調が悪くなり始めました。 
  
  
 その子は、強い気持ちを持っていたので、半身となっていた少女がいなくなっても、 
子どもを産むまでは生きました。 
 けれど、それは最後の力を振り絞ったに過ぎませんでした。 
  
 その子は、少女が移った新たな命を誕生させたとほぼ同時に、息を引き取りました。 
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 少女は、新たに生まれた子の半身となっていました。 
 そして、前と同じように、男の子から愛してもらうはずでした。 
 あの子だった頃と同じように。 
  
 けれど、それは叶いませんでした。 
  
 男の子は、あの子の死のショックがあるのか、変わってしまいました。 
 生まれ出た少女のことを、拒絶してしまいました。 
 それはまるで、存在さえ拒絶するように…。 
  
 少女もショックを受けて、感情を出すことが少なくなりました。 
 少女が宿った子は、ただ普通の子どもとして育っていきました。 
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 しかしそれから数年が経ち、何かのキッカケで、少女が宿った子は、男の子と旅行することになりました。 
 最初は、同じように拒絶されたままで、元の関係とは程遠い距離がありました。 
  
 その旅の途中、少女は男の子にプレゼントを渡されました。 
 それは奇妙な形をした人形で、何だかわからないものでした。 
 けれど、男の子から渡された久しぶりのプレゼントでした。 
 少女は、それを大事に胸に仕舞いました。 
  
 少女は、そのプレゼントを通じて、少しずつ男の子との距離が縮まるのを感じていました。 
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 少女は、男の子に渡されたプレゼントを無くしてしまいました。 
 少女は必死にそれを探しました。けれど、見つかりませんでした。 
  
 ですが、男の子は少女の、その子の存在を認めてくれるようになっていました。 
  
 久しぶりに、少女は男の子に抱きしめられました。 
 その感触は、思い描いていたものよりもずっと温かでした。 
 そして、ずっとそうしていたいと思うようになりました。 
  
 少女は幸せでした。 
 大好きな人の、娘として一緒にいられて。 
  
 でもそんな幸せは、長くは続かなかったのです。 
  
  
-------------------------------- 
  
  
 大体これで半分をちょっと超えたところです。 
 幻想世界の少女の視点から見たCLANNAD本編、と言う感じになってます。 
僕がライフワークにしている「幻想世界の少女と汐」の関係について、ですね。 
  
 冬コミ新刊では、これにみちゃ氏の絵が1ページごとについて、より読み応えのあるのもになる…はずですw 
  
 感想等ありましたら、「Web拍手」や「掲示板」へお寄せください。 
 |