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CLANNAD小説(SS)の部屋
CLANNADの小説を掲載していきます。

19    『大好きなひと』(CLANNAD汐中学生編 その2)
2007.02.06 Tue. 
※この作品は『初めての…』(汐中学生編)の、汐視点バージョンのSSです。
 読み比べていただくと、より面白いかと思います。
 
 
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 ウチのパパは鈍感すぎると思う。
 でも、そんなパパが大好き。
 今までも、これからも。
 だから…もっと愛して。
 …パパっ。
 
 
 
『大好きなひと』
 
 
 最近気になることがある。
 それは…少しずつ大きくなってきた、自分の胸。
 同級生に比べたら、全然比較にならないほど小さかったけれど、
それでも、男の子のそれと比べたら、大きくなってきたのが服越しにでもわかるようになっていた。
 中学に上がったけれど、まだブラジャーは持ってはいない。
 タンスにはママのがあったりしたけど、当然サイズが合うはずもなく、
未だに何も着けずにいた。
 薄着の季節になれば、同級生や大人たちのいやらしい視線を受けることになるだろう。
 …それは避けたかった。
 だって、わたしはパパしか見てはいなかったから。
 パパだけに気付いてもらえたら良かったから。
 他の男がどう見ていようが気にしてなかったけれど、万が一何かあったら、パパが悲しむことになる。
 
 本当は、パパからわたしの成長の証に気付いて欲しかった。
 でもパパは、わたしを「女の子」としては見てくれてはいなかった。
 毎日お風呂には一緒に入っているし、寝るのも一緒なのに…。
 だから、わたしは自分から行動を起こした。
 
「ね? パパ」
「何だ? 汐」
 
 いつもわたしは、パパと一緒にお風呂に入っている。
 それは2人にとって自然なことだった。
 ずっとそうしてきたんだから。
 
 小学校4年くらいから、周りの友だちはだんだんと一緒に入らなくなってきたみたいだった。
 みんな、周りに流されているだけだと思っていたんだけれど、
わたしたちが変わってるんだと言うことに途中から気付いた。
 だから、今も一緒に入っていることは友だちには話さなくなった。
 
 …でも、気付いて欲しかったんだと思う。わたしの変化を。
 子どもから女へと変化していくわたしを。
 
 だけど、いつまで経ってもパパは気付いてくれなかった。
 だからわたしは、仕方なく自分から言うことにした。
 
「…汐、大きくなった?」
「ん? そうだな…」
 
 そう言うと、パパは頭を撫でてくれた。
 …背じゃない。
 もっと、女の子として成長した部分に気付いて欲しかったのに…。
 
 パパは鈍いと思う。
 ママも、もしかしたらこんなパパをもどかしく思っていたかもしれない。
 でも、毎日いっしょにいたら、こんなものかもしれない。
 そう思って、わたしはもう1つ行動を起こした。
 
「ううん。背じゃ無くて…ここ」
 
 わたしは、自分の胸を持ち上げるようにして言った。
 
 …1年位前から膨らんできた胸。
 まだ、全然大きいとは言えなかったけれど、もう完全に男の子とは違う、
女の子らしい形にはなってきたと思う。
 パパは意識してなかったんだろう。わたしの胸を見つめていた。
ちょっとだけ恥ずかしかったけど、嬉しかった。
 
「ん? 胸がどうした」
 
 拍子抜けするようなパパの言葉。
 でも、これで挫けるようならまだまだだ。
 そんなことを思いながら、わたしは胸を主張するような仕草をして言った。
 
「汐のおっぱい、大きくなったかな?」
 
 ちょっと、持ち上げるように。
 …まだまだ、持ち上げるほどには大きくないその胸。
 でも、やっと主張し始めたおっぱい。
 
「うん。大きくなってきたな」
 
 そうパパに言われると、自分で言ったことなのに恥ずかしくて照れ笑いしてしまう。
 パパが認めてくれたのは嬉しかったのだけれど、
出来れば、わたしが言う前にわたしの成長に気付いて欲しかったな。
そんな風に思ってた。
 
「ね? パパ」
「ん?」
 
 ようやく本題に入ろうと思った。
 パパは鈍いからまだ気付いていないのだけれど。
 また、胸を主張して言った。
 
「…ブラジャー、買って欲しいの」
 
 パパは、はっ、とした顔をした。
 やっと…気付いてくれたんだ。
 
 
 
 パパは、わたしに生理が来た時も大慌てしてたっけ。
 結局、早苗さんが全部教えてくれたんだ。
 女の子のことがわからないのは…当然なんだと思う。
 
 パパは、小さい頃にお母さんを亡くしたらしかった。
 そこからは、おじいちゃんに育ててもらったみたい。
 女の人と暮らしたことって、ママだけしかいなかったみたいだし。
 
 だから、パパからわたしのことに気付いて欲しい、と言うのは、わたしのワガママだった。
 それでも、ママと同じ女の子…女性へと成長していく、わたしの変化を知って欲しかった。
 
 それに、最近は男子の視線も気になる。大人の男たちのも。
 パパは平気なんだろうか?
 わたしは、パパ以外の男の人なんて全然興味が無かったから、そういう人たちの好奇の目が、少しだけ嫌だった。
 
「ゴメンな…」
 
 そう言って、パパはわたしを抱きしめてくれた。
 背中に、胸に、頭に…。
 体全体に、パパの優しさを感じた。
 
「…ううん。汐のわがままだから」
 
 敢えてそう言った。たぶん、パパは経済的に心配させている、と思ってるのだと感じた。
 
 うちは決して裕福では無い、と思う。
 パパはいつも早く帰ってきてくれて、わたしを退屈させることは無かった。
 こうやって、一緒にお風呂に入って色々と喋ったり、
買い物に行って、帰って一緒に夕飯を作ったり。
 今なら、そんなことをしていたら、お金は稼げないことくらいはわかった。
 でも、お金の話じゃあない。
 
 わたしは、パパに自分の成長を気付いて欲しかっただけなんだ。
 パパから、わたしが女の子へ、女性へと変わっていくのを指摘されたかったんだ。
 そして、女の子として、女性としてわたしと接して欲しかったんだ。
 だから「わがまま」なんだ。わたしは。
 
 いっぱいの愛情を注いでくれるパパ。
 いつも、たぶん仕事中も、わたしのことばかり考えてくれているパパ。
 わたしの幸せのためにしてくれているパパ。
 
 いっぱい、いっぱい色んなものをパパはくれているのに、まだわたしは欲しいものがあるんだよ。
 だから、わたしは「わがまま」なんだよ。
 
「そんなこと…。そんなこと、無いからな。
今度の休み、一緒に買いに行くか?」
 
 パパは、わたしを抱きしめたまま、震える声でそう言った。
 …パパ、泣いてる?
 ごめんね。わたし、パパを困らせてるね。
 
「パパ…、いいの?」
「ああ。
 汐の気に入るものが見つかるまで、付き合うからなっ」
 
 罪悪感から控え目に言ったけど、パパは少し誤解しているみたいだ。
 でも、パパからお出かけのお誘いをしてくれるのは、素直に嬉しかった。
 
「…うん」
 
 わたしは座りなおして、そう言った。
 パパがより強く抱きしめてくれるのがわかった。
 
「ありがと。…パパ」
 
 わたしは、ダメを押すように、胸のあたりを抱きしめていたパパの腕を、
より胸の感触をわかってもらうように、自分の手を重ねて押し付けた。
 膨らみ始めた胸に、パパの逞しい腕が一層強く感じられた。
 
 
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 週末になった。
 いつものように、パパの腕の中で目覚めたわたしは、その温もりを名残惜しく感じながらも、
今日1日起こるであろう楽しいことを思いつつ、パパにあいさつした。
 
「おはよ、パパっ」
 
「おはよう、汐」
 
 少し遅れてパパも応えてくれた。
 いつも一緒に寝ていて、早く起きたほうが起こすことになっていた。
 でも、わたしがパパを起こすことのほうが圧倒的に多かったけれど。
 
 先に起きて、パパの可愛い寝顔を見るのも、わたしの日課みたいなものだった。
今日も、よだれを垂らしただらしの無い顔を、30分くらい早く起きて眺めてた。
寝言で「汐〜汐〜」と言って抱きしめてくれるのをたっぷりと堪能させてもらった。
 
「じゃあ、行くか?!」
「うんっ」
 
 身支度をして、わたしたちは町へと繰り出す。
 わたしは、パパの腕を抱いて歩くのが好きだった。
 昔は手を繋ぐだけだったけれど、それは身長が足りなかったから。
本当は、腰を抱いて歩きたかったけれど、さすがにそれは歩きにくいだろうと思って。
 こうやってると、パパの温もりを身体の半分くらいで感じることが出来て気持ち良かった。
 
 その感触に酔ってると、ちょっと大胆なことも聞いてみたくなった。
 
「…パパ」
「何だ? 汐」
 
 腕を組んだまま歩いてて、こんなことを言ってみた。
 
「…デートみたい……」
 
 ……。
 しばらくの沈黙。
 パパは困惑していた。いや、一生懸命考えていた。
 そうして、パパが考えた末に出した言葉は、こんなことだった。
 
 
 
「そうだな…。でもこんなオッサンじゃ嫌だろ?」
 
 
 
 ?
 
 ?????
 
 
 
 パパは何を言っているんだろ?
 言葉の意味を理解するのに、かなりの時間を要してしまった。
 
 …パパがオッサン?
 
 そんなことあるはずが無かった。
 全然格好良いままだった。
 
 もちろん、年相応になっているかもしれなかったけれど、オッサン臭いわけでもなかったし、
パパのことを嫌だと思ったことなんて一度も無かった。
 むしろ、ずっと自慢の種だった。
 
 だから、パパからのそんな言葉は酷くわたしを傷つけた。
 …もしかしたら、わたしがパパに対して、少し距離を取ったとか思われているのかもしれなかった。
そんなことあるはずが無い。だってわたしは、ずっとパパの側にいたいんだから。
 
「ううん。パパ、オッサンなんかじゃないよっ!
 パパ、ずっとカッコいいし…」
 
 わたしは激しく抗議した。
 そして、パパの腕をわたしの胸とかに強く押し付けるように抱いた。
 膨らんできた胸。ママと同じように変わってきている胸を主張するように。
 
「そっか…。じゃあ、パパ頑張るなっ」
「うんっ。だから、ずっとカッコいいパパでいてねっ」
 
 そう言ったパパの目は凄く優しくて…。
 やっぱり大好きだった。一生、離れたくないとも思った。
 
 パパと目が合った。
 わたしもそうだったけれど、パパも一緒に笑ってくれていた。
 こんな、ささやかな日常も、わたしの幸せの一部なんだと思った。
 でも本当は、もっとわたしのことを好きになって欲しかった。
 ただの娘とパパってだけじゃなく、もっと深いところで――。
 
 
 
 
 
 
 
 商店街まで来た。
 たまに、友達と来る事のある場所。
 でも、断然パパと一緒に来たほうが楽しかった。
 …本当にデートみたいだったから。
 
 見ている人たちはどう思うんだろう?
 パパは格好良いまま。問題はわたしだった。
 わたしは、まだ背も低いし胸も小さかった。
 顔も…たぶん幼いままだ。
 今後、劇的に大きくなることも無いのかもしれなかった。
 
「よしっ。入るかっ」
「うんっ」
 
 パパは何故か、店の中に入るときに気合を入れていた。
 入りなれていないのかな?
 なら、わたしはそんなところを気にしちゃいけない。
 そう思って、さりげなくパパの手を取って中に入ることにした。
 
 
 エスカレータを上がり、フロアのある階まで来た。
 
 くいっ。
 
「パパ、こっちこっち」
「お、おう」
 
 目的の場所がわからないのだろう、辺りをきょろきょろと観ているパパの手を引いてうながした。
 ここで「汐、こっちだぞ」と言われて連れてこられたら…、ちょっと考え物だったから安心した。
 
 わたしは、ジュニア用の下着売り場へとパパを連れてきた。
 そして、パパが見てくれていることを確認してから、ブラジャーとかを見て回った。
 
 わたしの胸はまだ小さい。
 Aカップのでも余るくらいで、普通のブラジャーならAAサイズが丁度良かったりした。
 本当はスポーツブラでも良かったけれど、折角パパが買ってくれると言っているんだから、
少しだけ甘えようかと思った。
 
「んん…」
 
 でも、いざ1つに決めようと思うと迷う。
 可愛いの、肌触りが良さそうなの、…大人っぽいの。
 ずっと悩んでると、パパに思いがけない言葉を掛けられた。
 
「汐。別に何着か買って良いからな」
「…えっ?! パパ…、いいの?」
「ああ…。って言うか、洗濯が間に合うくらいには買えよな」
 
 …パパはわたしに甘い。
 ううん。
 パパは、わたしに凄く優しい。
 
 考えてみたら、毎日同じブラを着けて行くわけには行かない。
 でも、そんなことに気付いてくれたこと自体が凄く優しいんだ、と思った。
 
 それを聞いたわたしは、選んだ3つを見比べたあと、パパの方を見て、
 
 にこっ。
 
 と笑って、
 
「うんっ」
 
 と力強く言った。
 そして、選んだ3つを抱きかかえた。
 
 
「試着しますか?」
 
 店員がそう聞いてきたので、
 
「汐、試着しておくか?」
 
 そう訊ねられた。
 試着しないことにはわからないこともあったから、
 
「うんっ」
 
 そう言ってパパのことばに従った。
 
 
 
 しゃーっ。
 
 更衣室のカーテンを閉めた。
 別に、パパから見えないようにしたかったわけじゃない。
 パパ以外の人から見られたら大変だからだ。
 パパにだったら、いくら見られても構わない。
 …と言うか、パパにはむしろ、見てもらいたかった。
 
 だから、こうやって遮断してしまうことが、少し寂しくて申し訳ない気がした。
 …パパはどう思ってくれているのかな?
 家ではこんなことしないからね、パパ。
 
 服を脱ぐ。
 ただそれだけのことなのに、どうしてか緊張している。
 いつもよりその作業には時間が掛かってしまった。
 そして、ブラの試着。
 
 …。
 
「ん〜っ」
 
 一応、初めてのことだったから、ホックがうまく留まらない。
 でも、わたしはふと良いことを思いついた。
 ちょっとしたいたずらゴコロで。
 
「パパ〜」
「どうした? 汐」
 
 そう呼ぶと、瞬時に反応してくれるパパ。
 側にいてくれたことが嬉しかったし、わたしを気に掛けてくれていたことも嬉しかった。
 
「手伝って」
 
 本当は手伝いなんて要らなかった。
 でも、何となくパパには見てもらいたかった。
 わたしの、初めての瞬間を。
 今のわたしを。
 …パパは驚くかな?
 
「良いか?」
「うん」
 
 そう言うと、脱衣所のカーテンを開けてパパが入ってきた。
 わたしは…ブラを着けようとしてる途中で、上半身は裸のまんま。
 パパは目を真ん丸くしてて、慌ててカーテンを閉めていた。
 
「お、おいっ、汐。前くらい隠さないとダメだろっ?!」
 
 予想通りの反応に、わたしは心の中でにんまりした。
 
「え? どうして? いつも一緒に着替えてるのに」
 
 本当のことだし。
 
「ほ…ほらっ。パパが入ってくるときに、他の人に見られるだろ?!」
 
 やっぱり、パパはわたしのことを一番に考えていてくれる。
 それに、わたしを気遣ってくれる言葉に、少し申し訳なく思った。
 
「あ…。うん、そうだね。ゴメンね、パパ」
 
 他の人に見られることは、決して良くないことだ。
 けれど、パパが側にいてくれるんだったら別にどうでもいい事で。
 わたしは、パパが入ってきたときと同じ、上半身裸のままで立っていた。
 
 パパが、わたしの顔と胸とを交互に見ている。
 作戦成功だ。
 普段は意識しないようなところを意識してくれている。
 
「…パパ?」
 
 わたしは、嬉しさを噛み締めて、平静を装ってパパを呼んだ。
 
「ああ…、ゴメン。ブラを着けるのを手伝って欲しいんだったな」
「うん」
 
 本当はそうじゃない。
 けれど、パパにブラを着けてもらいたかった気持ちもあった。
 それで、わたしを意識してくれるのだったら、結果オーライでもあったから。
 
 でも…パパは不器用だった。どうやって着けて良いかがわからないようで。
 経験が無さそうだった。
 ママには、こんなことしてあげなかったんだろうか?
 
 わたしは、パパに申し訳なく思いながら、自分である程度着けた。
 あとは…、
 
「パパ。後ろ止めてくれるかな?」
 
 パパは、じっとわたしの背中を見てた。
 ちょっとだけ恥ずかしかったけれど、こんな風に見つめられて悪い気はしなかった。
わたしが心地よさに浸っていると、パパはホックを留めてくれた。
 
「ありがとう。…で、パパ。どう?」
「うーん、そうだな…」
 
 緊張した。
 初めて見せる下着姿の自分。
 いつもと変わらないような反応だったら、たぶんガッカリしていたと思う。
 
「色っぽく見えるな」
 
 だから、こんな言葉を掛けられて、わたしは舞い上がるどころか、どうやって反応して良いかが全くわからなかった。
 パパが「色っぽい」なんて言ってくれた。
 嬉しかったけれど、その言葉の意味を噛み締めると、だんだんと恥ずかしくなってきた。
パパの視線は、わたしの胸に集中していたし。
 
「えへへ…」
 
 思わず、わたしも笑ってた。
 嬉しさと恥ずかしさから。
 パパはわたしの頭を撫でてくれていた。
 その、優しい感触にずっと浸っていたかった。
 
 
 
 
「んしょっ」
 
 パパの感触を堪能して、わたしは試着していたブラを外した。
 …パパは、何も着けていないわたしの胸を、じーっと見ていた。
 今までとは、確実に違ったパパの目を見て自信がついた。
 
「どしたの? パパ」
「あ…いや、別にな」
 
 わたしは、何も気にしていないフリをして、次のブラの試着を始めた。
 
 
 
 
 結局、他にも迷う柄があって買ったのは計5着。
 さすがにやり過ぎた、と思った。
 けれど、どれも試着してパパに見せてみて、気に入ってくれたものだけを選んだから、
それ自体には満足していた。
 こういう機会もなかなか無いだろうし、試着してパパに見てもらうだけでも嬉しいものだった。
 
「似合うな」
「それ可愛いな」
「汐にピッタリだ」
「汐〜っ」
 
 こんなことを言われたら、ついついたくさん選んでしまう。
 …ママともこんなときがあったのかな?
 そう考えると、ちょっと恋人気分だった。
 
「…○○○円になります」
 
 驚いた。
 最初は値札を見ながら選んでいたのだけど、追加で買ってもらったものは全然値段を無視してたから。
 高すぎる。
 パパに悪いことをした…。
 そう思ってパパを見たのだけれど、
 
 何事も無く支払って、笑顔をわたしに返してくれて、ほっとして釣られて笑った。
 
「はい、汐」
 
 少し厳重に包装された下着を、パパが受け取って渡してくれた。
 わたしはそれを受け取ると、しっかりと胸に抱いた。
 
 
 
 
 
「…ね? パパ」
「ん? どうした、汐」
 
 帰り道。
 久々に、普通に手を繋いで歩いていた。
 腕を組むのも好きだったけれど、手を繋ぐってのは全然違う安心感があった。
 お互いがお互いを感じていられるから。
 
「今日はありがと」
「…いいや。気にすることなんか無いぞ」
 
 最後の最後までパパは優しかった。
 今日1日で、もっともっと好きになってしまっていた。
 本当は、わたしの凄く身勝手でワガママなことに付き合わせただけなのに。
 
「また…付き合って」
「ああ。いつでも付き合うぞ」
 
 わたしは、もしかしたら世界で一番ワガママな娘かもしれなかった。
 こんなことまでして、「また…付き合って」なんてことが言えて、
心の中ではもっと愛して欲しいって思ってる。
 そんなことを頭の中で巡らせていると、
 
 ぎゅっ。
 
 後ろからパパに抱きしめられていた。
 
 ずるい。
 
 この感触。
 温かくて優しくて、すべて包み込まれるような、すごく安心できる感触。
 わたしは…ずっと前にこの感触を知ってしまっていた。
 だから、もっとこうやって欲しかった。
 
 たぶん、わたしは笑っていたと思う。
 ママも…笑っていたと思う。
 こうやって抱きしめられて、泣いていても最後には笑ってしまっていて。
 パパにすべてを委ねたんだと思う。
 
 
 
 もっと抱きしめて欲しい。
 もっと愛して欲しい。
 
 …ママにしてたこと、全部。
 
 
 パパ…大好き。
 
 
<終わり>
 
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 いかがでしたか?
 もう11ヶ月も前のSSの別視点バージョンですが、ほとんど新しいSSと言っても過言では無い内容になってませんか?
 
 内容ですが…これを汐だと思ってくださる方が多ければ幸いです(汗) 完全に、汐萌えor娘属性もちの方オンリーの内容になってしまいましたので。
 
 ただ、このSSには続きがあります。
 このまま中学生編を続けるか、高校生編にするか、あるいは汐を朋也の高校時代にタイムスリップさせたお話を書くか…。
 もしよろしければ、感想や今後への要望などを、
 
「汐SSアンケートページ」
 
へお書きください。
 
「Web拍手」
「SS投票ページ」
「掲示板」
 
などへも感想などをお待ちしています!

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