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CLANNAD小説(SS)の部屋
CLANNADの小説を掲載していきます。

14    「Rainy Day」(CLANNAD汐高校生編)
2007.07.22 Sun. 
 
 
 わたしは、雨の日が好き。
 だって雨の日は……………。
 
 
 
 
「Rainy Day」
 
 
 
 
 梅雨という時期。
 雨が降って、外へ出るのがおっくうになる季節。
 学校に行っても、
 
「梅雨入りしたんだって〜」
「サイアクぅ。うっとうしいよねぇ」
 
 と、友達は口々にそう言う。
 でもわたしは、結構この時期が好きだったりする。
 
 だって、パパと一緒にいられる時間がたくさん出来るから。
 学校が終われば、ずっとパパといられるから。
 
「しおちゃんもそう思…わないんだっけ?」
「あ、うん。嫌いじゃないかな?って」
「そうだよねえ、しおちゃん家は」
 
 友達も知ってるくらいに、わかりやすいらしかった。
 
 
 
 下駄箱を通り、雨音が絶え間なく鳴り続く外へと出た。
 空を見上げても、何処に雲の切れ間があるのかわからないくらい、何時止むのかも知れない雨。
そんな中を、部活が中止になった友達も連れて校門へと向かう。
 
「あーあっ。この靴、せっかく乾いてたのになあ」
「靴の中もぐずぐずになるのも、何気に気持ち悪いよねぇ」
「うん、そうだね」
 
 わたしも、確かに気持ち悪かったりするんだけど、それもどうでも良いことだった。
 それを打ち消すくらいに良い事が待っているんだから。
 
 しばらく歩いていくと、待ち望んでいた姿が確認できた。
 
「ほら。迎えに来てくれてるんじゃない? お父上が」
「うんっ」
「お邪魔虫は消えよっか」
「ごめんね」
「ううん。それじゃあごゆっくり〜♪」
「ばいばい」
 
 
 
 友達と別れた。
 こんな身勝手なわたしと、友達になってくれているのは本当にありがたいと思う。
 心の中で感謝しつつ、待つ人の元へ向かうことにした。
 
 
 
「パパ〜っ」
「汐っ」
 
 結構いい歳した娘が、父親に向かって駆け、そして抱きつく。
 そんな光景、わたしたち以外には見たことが無かった。
小学校の頃はたまに見たこともあったけれど、中学、高校と進学していくと、
これはわたしたち父娘だけの行為だと気付いた。
 ヘンかもしれなかったけれど、今さら辞めたいなんて気持ちも湧かなかったから、ずっとこうしてる。
 そうしたいんだから、続けているだけだし。
 
 本当は、雨の日を喜んじゃいけないのだろう。
 だって、パパが仕事を出来ない、イコール、お給料が少なくなる、ってことだったから。
 それでも、わたしは刹那の幸せに溺れるかのように、雨の日を喜んでいた。
 そして、待ち望んでいた。
 
 悪い子でごめんなさい、パパ。
 
 
「今晩何が食べたい?」
「えーとっ…」
 
 家への道すがら、決まってこの話題になる。
 こんな話は大好き。
 
「冷蔵庫にかぼちゃが残ってたよね?」
「あれ? そうだっけか?」
「うん。じゃあ、かぼちゃコロッケで1品」
 
 こうやって晩ご飯を考えながら買い物をしてると、何だか主婦にでもなった気分。
 で、パパの反応も含めると、親娘と言うよりも夫婦みたいにも思えてきた。
 …そう思うと、ちょっと恥ずかしい気分にもなってしまった。
 
「…で、コロッケと何にする?」
「…うしお」
「…汐?!」
「…えっ? あ、うん。かぼちゃコロッケ!」
「またかぼちゃコロッケか?! 好きだなあ」
「あ…」
 
 ぼーっと、夫婦シチュで妄想してて、パパの言葉が聞こえていなかった。
 失敗失敗。
 
「えっと…。じゃ、じゃあミネストローネとあとは…」
 
 妄想を必死に打ち払って、現実モードへと頭を切り替えた。
 失言も聴こえていなかったみたいだし。
 
 
 
 
 行きつけのスーパーに行って食材を買う。
 パパの健康も考えて、出来るだけ出来合いのものは買わないようにしてる。
だから、料理のレパートリーはその辺の主婦には負けないくらい多かったり。
 
 ひとりで、パパのことを考えながらする買い物も好きなんだけれど、
こうやってパパと一緒に買い物をするのはもっと好き。
 
「何が食べたい?」
 
 とか聞いたり、
 
「これなんかどうだ?!」
 
 とか聞かれたり、そんな何気ないやり取りも全部好きで。
 本当に夫婦みたいに思えてくる。
 実際には、親娘にしか見えないのかもしれないんだけど、そこは自己満足みたいに思ってるから、
わたしにとっては至福の瞬間が続いた。
 
 
 食材を2人で選んで買ってきた。
 こういう日は、パパと一緒に台所に立つ。
 パパも、わたしに任せきりにしないで、一緒に料理を作ってくれる。
 わたしが全部作る日もあるけれど、2人で力を合わせて作るってのが何か良い。
 
「パパ、アレとって」
「おうよっ」
 
「汐、アレ入れといて」
「はーいっ」
 
 以心伝心。息がぴったりで気持ちが良かった。
 
 
 
 程なく、2人で作った料理が食卓へと並んだ。
 
「はいっ、パパ。食べてっ」
「おうっ」
 
 ぱくっ。もぐもぐ…。
 
 こうやって、まずはパパに食べてもらって、その表情や話し方から料理の完成度を読み取る。
 パパはいつも決まって、
 
「美味いぞ」
 
 って言ってくれるけれど、言葉どおりかそうで無いかくらいはすぐにわかってしまう。
 わかりやすいパパ。
 そんなところも好きだったりするんだけれど。
 
 今日の分なら大丈夫そうだ。
 それを見て、わたしも箸をつけることにした。
 
 
 
 食後は、テレビなんかを見ながらまったりと過ごす。
 別にテレビを見るのが目的じゃあなくて、単にパパに甘える時間だ。
 パパのひざの上に座るのはちょっと窮屈になってきたから、横にぴったりとくっ付いて座っている。
パパにしなだれかかったり、腕を抱いたりと、恋人同士みたいに好き勝手して。
 
 そして、わたしは感謝する。
 今日が雨降りだったことに。
 パパと長い時間、一緒に過ごせたことに。
 もし今日が晴れならば、この半分くらいしか一緒にいられなかったんだから。
 
 
 
 1つの番組が終わり、パパが立ち上がって窓を開け、空を見上げた。
 
「おっ。月が見えてるぞ」
 
 わたしも釣られて外を見た。
 パパの視線の向こうには、半分くらいの大きさの月が、雲の切れ間から輝きをこちらに送っていた。
 
 何時かは終わる雨。
 それを、永遠に続くように願ったときもあった。
 けれど、そんなものは永く続くはずも無いんだと、雨が降るたびに思い直していた。
 だから今、この瞬間を噛みしめるように味わっている。
 
 
 もし永遠に雨が降り続いたら、わたしはパパとずっと一緒にいられるんだろうか?
 パパはずっと一緒にいてくれるかもしれない。
 けれど、それでは何も始まらないし、何も終わらないこともわたしは知っていた。
 
 でも、わたしは待ち望んでいる。
 今日みたいな一日を。
 幼い頃から、今日までずっと。たぶん、明日からも。
 
 
 
 だから、わたしは雨の日が好き。
 だって、雨の日はパパと長い時間一緒にいられるから。
 
 
 
 
<終わり>
 
--------------------------------------
 
 
 いかがでしたか?
 ちょっと短い上に内容も薄いんですが、元々このくらいのボリュームで、雰囲気だけ楽しもうと言うSSを書きたかったので、こんなものです。
 恐らく汐は、雨の日が好きなんだろうなあ…と思いついて書きました。朋也の仕事は、雨では確か出来ない仕事だったかと思うので。
 
 この後は夏コミSSに浸からなければなりませんし、リトルバスターズもあります。忙しいです。でも頑張ろうと思います(07年7月22日現在)。
 
 感想などあれば、
 
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