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★リトルバスターズ!SS部屋★

リトルバスターズ!のSSを掲載していきます。

  9   『リトバスで体育倉庫イベント@佳奈多編』
更新日時:
2008/09/27 
※このSSは、神主あんぱん氏の原案の下(タイトルまでの冒頭部分は氏の文です)で書いています。
※以前に書いた『リトバスで体育倉庫イベント@佐々美編』と同じシリーズです。
※08年3月に出たイベントの同人誌用に書いたSSに加筆修正しています。
※元はもちろんCLANNADの体育倉庫イベントがありますが、知らなくても大丈夫です。
※一応、エクスタシーのネタバレはありません。
 
 
 
 
 
「ねぇねぇ理樹くん」
 
 休み時間に他のクラスからやってきた葉留佳さんが僕に話し掛けてくる。
 手を後ろにずっとやっているが何か持っているみたいだ。
 
「ん、どうしたの葉留佳さん」
「10円玉持ってる? ギザギザのやつ。それも2枚」
「ギザギザの10円玉? そんなのあったかなあ」
 
 持っている財布の中身を確認する。
……あった、しかも都合よく2枚。
 
「うん、あったよほら」
「おー! じゃあさじゃあさ、その10円玉を立ててみて!」
「え、うん」
 
 何がなんだかよくわからないまま葉留佳さんに言われたとおり10円玉を机の上に2枚立てる。
 
「あー違う違う、2枚縦に並べるの」
「2枚縦に? できるのそんなの」
 
 確かに硬貨1枚だけ並べるってのはやったことあるけど、2枚縦に並べるなんてやったこと一度もない。というか無理な気がする。
 
「だからギザギザの10円玉ならできるんじゃないかなーって」
 
 確かに、普通の10円玉を使うよりはやりやすいかもしれない。それでもかなり難しいと思うけど。
 
「まあやってみるよ」
 
 10円玉を一枚机の上に立てる。その後もう一枚の10円玉を両手の人差し指ではさみ、ゆっくりとその立ててある10円玉の上に持っていく。
 少しでもバランスが崩れれば倒れる、少しでも下手にゆらしたら倒れる。
 唾を一度飲み込み、意識を集中させる。
 立ててある10円玉の上に人差し指で持っている10円玉が触れた。下のを倒さないよう、微調整をしていく。
 このくらいで大丈夫だろうか、そう判断した僕は人差し指を10円玉から離していく。
 1秒、2秒、3秒――上においた10円玉は倒れる様子はない。どうやらうまくいったようだ。
 
「で、できた……」
 
 机の上に振動を与えないように肩の力を抜いて一息つく。
 
「おーすごいすごい! 理樹くんさっすがー」
「何がさすがなのかわからないけどほめてくれてありがとう」
「じゃあさ、じゃあさ。頭の中で誰か思い浮かべて。気になる女の子とか」
「女の子? うーん」
 
 僕は頭の中で一人思い浮かべる。
 
「そんでね、『リタフニコウソクイイタ』って3回唱えるの」
「リタフニコウソクイイタ、リタフニコウソクイイタ、リタフニコウソクイイタ……」
 
 そのとき、さっきまで倒れる気配のなかった10円玉が突然崩れた。
 
「あれ、倒れちゃった。後でみんなにも見せようかと思ったのに」
 
 なんかもう二度とうまくたてられないような気がする。そんだけ集中力のいる作業だったし。
 
「ところでさ、何だったのさっきの、その呪文みたいなやつ」
「やーえっとね、さっきこんな本見つけてきたの」
 
 そういって葉留佳さんが前に手を出し、『おまじない百科』と書かれた本を僕に見せる。表紙にはたくさんのハートと少女マンガみたいな女の子が描かれている。
 
「おまじない?」
「そ! それでね、今理樹くんがやったのはなんと! 女の子と二人っきりで体育倉庫に閉じ込められちゃうというおまじないなのです!」
 
……へ?
 
「今、なんて?」
「思い浮かべた女の子と二人っきりで体育倉庫に閉じ込められちゃうというおまじない」
「そんなピンポイントなおまじないがあるの!?」
「やーだって、ほら、ここに」
 
 葉留佳さんが指をはさんでいたページを見せる。確かにそこにはいったとおりのおまじないが書かれていた。
 
「ほんとだ……」
 
 葉留佳さんから本を受け取り、そのページをじっくりと読む。確かに葉留佳さんが言ったとおりの内容が書かれていた。
 よくみるとおまじないを解く方法まで書かれている。しかしこっちの方はよくみないとわからないようなところに書かれてあった。しかも古い本だったからか文字も消えかかっていて見辛い。
 
「それで誰かにやらせてみたらおもしろいかなーって。で、理樹くんに白羽の矢がたったんですよ。おめでとーぱちぱち!」
「うれしくないよ!」
「やーでも女の子と二人っきりだよ? もしかしたらムフフな展開があるかもしれないよ?」
「いやいや、それにあんまり効果なさそうな気がするし」
 
 こんなおまじないが本当に成功したらおまじないというより呪いだ。
 
「まー確かにね。ところで、理樹くんは一体誰を思い浮かべたのかなー」
 
 葉留佳さんがニヤニヤしながら聞いてくる。
 
「さっきの聞いたあとじゃ言いづらいよ!」
 
 だって僕が思い浮かべた相手、それは――。
 
 
 
 
『リトバスで体育倉庫イベント@佳奈多編』
 
 原案:神主あんぱん氏
 作:りきお
 
 
 
 
 
「…で? どうして私は貴方と閉じ込められているわけ?」
「いやあ…その…」
 
 何となく外に出たら野球のボールが転がっていて、それを拾って直そうとしたんだけど…。
 偶然、倉庫の調査をしていた二木さんと出くわして…そして…。
 
「訳がわからないんだけど」
 
 現在に至る。
 
 …。
 
 どう話したらいいんだろうか?
 どう説明したら納得してくれるんだろうか?
 
「何であなたとこんな場所に閉じ込められないといけないわけ?」
 
 …って、無理か。
 
 だけど、言ってもいいんだろうか?
 そういうおまじないがあって、それで僕が二木さんとって願ったって。
 でも、もう何を言っても無駄で…。
 なら正直に言ってしまったほうがいいのかもって思う。
 
「実はさ…おまじないなんだ」
「はぁ? おまじない?」
 
 予想通りの反応。
 そりゃあそうだろう。
 こんな状況になって、その答えに「おまじない」なんてものは期待して無いだろうし。
 
「何? 貴方、私をからかっているわけ?」
「いや、そんなんじゃないけど」
 
 おまじない以上のものでも以下のものでもない。
 …って、やった本人がその効力に驚いているんだけど。
 
「これは、思った人と体育倉庫に閉じ込められるっていうおまじないで…」
「そんなおまじない? あるわけないでしょう」
「いや…ほらここにあるし」
「…」
 
 やっと納得…してくれた?
 …のかはちょっと判断できないけれど。
 僕も、それ以上の説明は出来ないから助かったって面もあった。
 
 しばらく、倉庫の中は沈黙で包まれてしまう。
 気まずくて、でも何も言えなくて…。
 彼女…二木さんはどういう心境なんだろうか?
 って考えていたら、彼女のほうから口を開いた。
 
 
「…で? 私と体育倉庫に閉じ込められたかったの?」
「う、うん」
 
 まあ、そう願ったことは事実だからこそ、否定は出来なかった。
 
「……閉じ込められて何がしたいわけ?」
「えっ?」
 
 何が…したい?
 いや、何となく二木さんが思いついただけで、具体的なプランなんて何も無い。
 …プランって何だ。
 
「ああ…まあそういうこと? 男がしたいことってそういうことかしら?」
「??」
 
 彼女が、自分の中で何か答えを出したみたいだ。
 でも、男のしたいことって…。
 
「最低ね。…最低。
 貴方にはそんな下心とか、汚い気持ちは無いと思ってたのに…」
「…」
 
 一方的な妄想の答えから、そんな言い方をされてしまった。
 下心って…。
 
 そりゃあ、冷酷とか言われてるけど。
 本当に大切な人のことを考えて行動してる彼女に、惹かれない理由なんて何処にも無いし。
 凛とした振る舞いとか鋭い目つきとか、客観的に見たら凄く格好いいし…。
 頭の良さとか冷静さとか、何か運動も出来そうな雰囲気もあるし。
 貴重なツッコミ要員にもなれそうだったし…。
 リトルバスターズのメンバーに入って欲しい…なんて言いたくなるときもたくさんあった。
 
 けれど下心って…。
 最低、なんて連呼されてちょっと泣きたくなった。
 
 でも、そんな僕の妄想を追い越すように、彼女は言った。
 
 
 
「なら…好きにすればいいじゃない。今なら誰の邪魔も入らないわ」
「えぇーっ?!」
 
 爆弾発言?!
 好きにすれば…って、どのくらいと言うかどんなと言うか、どのレベルと言うか…。
 いやでも、好きにしたらどうなることか…。
 
「まあもっとも、ここを出た後の貴方の処遇は…わかってるだろうけど。
 停学、で済めばいいけどね。私が親告すれば刑事事件になるのでしょうし」
 
 やっぱり。
 でも何だろう?
 誘われているような、脅されているような…どっちもかもしれないけれど。
 
「その…覚悟があるなら…すればいいじゃない」
 
 そういうと、なぜか敷いてあった体操用のマットの上に、仰向けに寝てしまった。
 
 …。
 
 いやいやいや。
 『そういうこと』をしてしまったら、僕はもう学校には行けないだろう。
 それどころか、狭い暗い寒い場所に閉じ込められてしまうと思う。
 
 とりあえず、そういうことをするって選択肢は選べないから、色んな誤解を解かないと…。
 一応、彼女のほうへ移動しようとする…。
 
「うわっ」
 
 暗がりのせいで、足元がおぼつかない。
 何かに躓いて、そのまま…。
 
 ばたんっ。
 
 倒れこんでしまった。
 
 ふにっ。
 
 あったかいし、柔らかいところへ…って。
 
「きゃっ…」
 
 二木さんの身体だった!
 しかも顔を突っ込んだ場所は…胸の間?!
 
「くっ…。行動が大胆すぎね、貴方」
 
 でも、その言葉と相反する、身体の小刻みな振動…。
 …震えている?
 
「ご、ごめんっ。二木さんっ!!」
 
 慌てて退こうとしたけど、なぜか頭を抱きしめるように抱えられた。
 …?? 意味がわからない。
 
「別に…構わないわ」
「う、うん。ありがとう…って、構わない???」
 
 ???
 何が構わないって?
 
「言葉のとおりだけど?」
 
 …ってことは、この体勢のままでいいってこと…なんだけど。
 決して大きくはないのだけど、柔らかくて温かなこの場所から、退かなくてもいい…。
 
 いやいやいや。
 もしこの絵を見られたら…どうなるんだろう?
 どう…見えるんだろう?
 やはり、僕が彼女を襲っているように見えるんだろうか?
 それとも、彼女が僕を誘っているように…って、それは都合が良すぎるのか…。
 
 それか…恋人同士のように…って、それこそ都合良すぎるよねっ?!
 
「誰にでも許すわけじゃないわ。貴方だから…してるの」
「…」
 
 何だろう?
 思いっきり自分に都合のいい解釈をすれば…、
 
 僕に好意を持っている?!
 
 ってことになる…けど。
 えーっ?!
 
「そ、それって? 二木さん???」
「私、こういうこと初めてだから…その、よくわからないの」
「う…うん」
「だから…その、貴方がしたいようにして」
「う…うんって。えぇーっ」
 
 僕のしたいようにって…そんなこと言われても…。
 これ以上いやらしいことなんて。
 
 現に、今胸の中に顔をうずめているわけで。
 そりゃあ、うずめているってほど深い谷間じゃないけれど…。
 って、何失礼なことを考えているんだろう?
 
 
 どくん。どくん…。
 大きな鼓動が顔面に、頬に伝わってくる。
 たぶん、僕の鼓動も伝わってるだろう。
 ドキドキが止まらない。
 
「ふ、ふふ二木さんっ。そ…そのっ」
 
 背中に回された両の手を緩め、顔を彼女の真上に移動する。
 体勢が体勢なだけに、吐息が顔を撫でるように当たり、交じり合う。
 
 彼女の瞳を見た。
 琥珀色にきらきらと輝く瞳。
 体育倉庫の中は薄暗かったから、それはなおのこと綺麗に見えた。
 
「ど、どうしたの?」
 
 彼女の問いかけに動揺の色が見え隠れする。
 頬が、顔全体が熱くなるのを感じた。
 たぶんそれは、見つめ合う彼女も同じなのかもしれない。
 
「あ…ああ。そういうこと? なら…すればいいじゃない」
 
 そういうと目をつむり、僕の肩を抱き寄せた。
 軽く閉じられた唇はつやつやと艶かしく輝き、僕を誘うように見えた。
 
 キス…したい。
 
 僕もそのまま、覆いかぶさるようにして、キスを…、
 
 
 ガチャ。ぎぃぃぃぃっ…。
 
 
 ?!
 扉の開く音?
 
 慌てて飛びのこうかと思ったけれど、彼女の抱きしめる手が強くて解けないっ。
 
「委員長? いますか、委員長?」
 
 どうやら風紀委員らしい。
 …って、一番まずくない?!
 
「え…あ…。
 お…お役目ご苦労様」
 
 この姿を見られたら、まずいのは僕だけじゃないはず。
 二木さんだって…。
 
「!! い、委員長? な、ななななな何をっ?!」
 
 抱き合うように倒れこんだ僕らを見て、風紀委員の子が後ずさりした。
 そりゃあ…驚くよ。
 
「その男子生徒は…直枝理樹じゃないですかっ。
 委員長はその…お、おお襲われたんですかっ?!」
 
 あ…そっか。
 逆ならともかく、この体勢は僕が一方的に襲ってるようにしか見えない。
 
 うう。
 停学とか、最悪は退学…かなあ。
 覚悟を決めないといけないかもしれない…。
 けれど…。
 
「違うわ」
「えっ?! でも…」
 
 彼女が反論してくれた?
 別に反論しなくても、僕が襲ったことにすれば自分は傷つかないというのに…。
 
「二人してここに閉じ込められてて、退屈してたから、護身術の練習をしていたの。
 身体を張って付き合ってくれてたから、むしろ助かったんだけれど」
「護身術…ですか? でも…そんな風には…」
 
 その委員の言葉を聞くや否や、彼女の片腕が僕の首に巻きついて抱えるようにされ…、
 ってよりも締めてきてっっ?!!
 
 く…くるしっ……。
 
「んーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっっ」
 
 ばんばんばんっ。
 
「…とまあ、こんな感じかしら?」
「はぁ…。委員長、すごいですね…」
「げほっげほっ」
 
 放してくれたけど…一時的に空気が送られなくなったのと、
 頚動脈を締められたので死ぬかと思った…。
 何なんだ? 今の。
 
「ちょっと片づけしてから行くから、先に行ってて」
「あ、はい」
 
 そういうと、委員の子は何処かへ立ち去った。
 
 
「さて…と。
 悪かったわね。フロントチョークなんてかけて」
「い、いや…」
 
 フロントチョーク…って、格闘技番組とかで見るような技なんだろうか?
 何でそんな技を?
 
 ってそんなことより、
 
「ごめんっ。誤魔化してくれてっ」
「誤魔化す? ああ、だってそうでもしないと、私にとっても不都合だからよ」
「不都合?」
 
 何で不都合なんだろう?
 ましてや、自分を襲おうとした男が相手だと言うのに。
 
 じーっと彼女の瞳を見つめる。
 やっぱり琥珀色の瞳は綺麗で、さっきよりも陽射しが多く入ってきているから、
余計に輝きが増して見えた。それはまるで宝石のように…。
 
 
「そ、そろそろ行くわよっ」
 
 突然、ぷいっと顔を反らして背を向ける彼女。
 名残惜しいけれど仕方が無い。
 
「今日のことは…許してあげるから、その代わり口外は厳禁よ」
「う…うん。わかったよ」
「じゃあ…また」
 
 
 …また?
 
 その言葉の真意が測れない僕は、彼女を見つめていた場所から、ただその背中を見送った。
 
 
 
<終わり>
 
 
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【後書き】
 いかがでしたか?
 
 感想としては…佳奈多イイ!
 
 佳奈多を書くときに注意しているのが、ツン成分とデレ成分の比率なんですが…もうどっちに転がっても佳奈多は可愛くしかならない(ぇ-。かつてここまで書きやすいキャラがいただろうか…。ってくらい、終始ニヤニヤしながら書いてしまいました(笑。EXではどんな感じになるかわかりませんが、たぶんこんな感じでニヤニヤさせてくれるんじゃないだろうかなあ、と楽しみであります(これを書いた当初はまだEX未プレイでした)。
 …期待以上だったような気がしますw(←EXプレイ後の感想)
 
 
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