※ギャグSSです。色々と設定をすっとばしてるのでただのアナザーストーリーとしてお楽しみください。 
 途中までは神主あんぱんさん他作の同名作品と共通です。 
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 「……なんでこんなことしてるんだろう」 
  
 周りに誰も居ないとわかっていても、ついつい僕はひとりごちてしまった。 
 でも仕方が無いと思う。 
 何故ならば、僕は今野球部のロッカーに隠れているからだ。 
 予め断っておくと、別に恭介たちとかくれんぼをしている訳ではない。 
 こうなった理由は至極単純だった。 
  
  
  
 「やぁ少年。いい所で会った」 
 「あ、来ヶ谷さん」 
  
 そう、つい5分ほど前、僕はたまたま中庭で来ヶ谷さんに会ったのだ。 
  
 「時に理樹君、今は暇かねいや暇だろう暇に違いないな」 
 「はい?」 
  
 来ヶ谷さんの唐突な物言いに思わず聞き返してしまう。 
 というか、なんだか凄く嫌な予感しかしない。 
  
 「いや実はだな、これからある場所に出向いてもらいたいんだ」 
 「ある場所?」 
 「うむ、私たちもよく知っている場所だ」 
 「ちなみに……どこなの?」 
 「部室だ」 
  
 なんだ部室か、と安堵する。 
  
 「一応大丈夫だけど、一体何なの?」 
 「それは行ってのお楽しみだ。なに、楽しいひと時になるのは間違いないぞ」 
  
  
  
 「……で、いざ着てみたらテーブルの上に紙切れが置いてあって、『しばらくの間ロッカーに身を潜めていること』だもんなぁ」 
  
 おまけにこれから部室で何が起こっても静かに見守っていること、という制限つき。 
 律儀に書いてあることを守ってしまっている自分も自分なのだけど、来ヶ谷さんには来ヶ谷さんの考えがあるのだろう。 
 というか、書いてあったことを守らなかった場合にどんなことになるかを想像しただけで怖かった。 
  
 「……って、あれは……」 
  
 部室に誰か入ってきた。 
 腰まで届く青くて長い髪が誰であるかを雄弁に物語っている。 
  
 「笹瀬川さん、今日は活動なしって連絡したのに」 
  
 笹瀬川さんの登場に首を捻っていると、更に二木さんと朱鷺戸さんが入ってきた。 
 何だか存在しちゃいけない人が居る気がするけど細かいことは気にしたら負けのような気がしたので考えないことにした。 
  
 「あなた方も呼ばれたんですの?」 
 「えぇ。それも棗妹に呼ばれてね」 
 「いったい何の用なのかしら」 
  
 鈴が……呼んだ? 
 なんで、とかどうして、とかもやもやしていると、噂の張本人が部室に現れた。 
  
 「よし、集まってるな」 
 「一体全体何の用事なんですの?」 
 「……私は貴方たちと違って忙しいのだけど」 
 「あたしだって忙しいわよ!っていうかなんであたしたちが貴方に呼び出されなきゃいけないわけ?」 
  
 女性たちは一斉に鈴に向かって言葉を放つ。 
 ややもすれば気後れしそうなほど気の強い3人の女子生徒を前に、鈴はふてぶてしい態度を崩さなかった。 
 こんなときに不謹慎だけど本当に成長したなぁ。 
  
 「それは簡単な話だ」 
  
 鈴は腕を組み、まるで三人を見下すかのような不遜な態度で答えた。 
  
 「お前ら、あたしとキャラが被ってるんだ」 
  
  
  
  
  
  
  
  
  リトルバスターズ!EX 2次創作SS 
 『彼女たちの見解』 原案:しま/神主あんぱん/りきお/NELUO 
  
  
  
  
  
  
  
  
  
  
 (えぇーーーーーーーーっ!?) 
  
 思わず漏れそうになった声を慌てて両手でふさぐ。 
 今の僕は隠れている身であるからして、居ることがバレるのはとてもよろしくない。 
  
 「いきなり何を訳のわからないことを言ってるんですの貴方は!!」 
 「そうよ、大体あたしとキャラが被るとかどこらへんが被ってるのか教えて欲しいわ!」 
  
 笹瀬川さんと朱鷺戸さんが反論を試みる。 
 というか、僕も気になるんだけど、笹瀬川さんたちと鈴ってどのあたりでキャラが被るんだろうか。 
  
 「お前らはアレだ。全員ツンデレとかいうやつだ」 
 「んなっ……」 
 「べ、別にツンデレなんかじゃないわよ!!」 
 「……ツン……デレ……」 
  
 ツンデレ、という単語に3人は敏感に反応する。 
 僕の(恭介による)知識によると、ツンデレっていうのは普段はつんけんした態度だけどいざとなるとすごくデレデレする人のことらしい。 
 ……身に覚えが無い筈なのにすごく当て嵌まってる気がするのはなんでだろう。 
  
 「で、あたしもツンデレらしい。ということはキャラが被るということだ。だからお前らはキャラを変えろ」 
  
 (えぇーーーーーーーーーー!?) 
  
 またも大声を出しそうになるのを必死でこらえる。 
 それにしてもこの鈴、暴君である。 
 というか、鈴ってツンデレなんだろうか。 
  
 「な、何を言ってますの!?大体、私がツンデレだとか一体全体何処を見てそう仰るのかしら!?」 
 「そうよ!あたしだってそのツンドr……ツンデレとかいうのとは違うわ!!」 
 「あたしはよく解らん。が、くるがやがそーいってた。あとツンドラってなんだ」 
  
 鈴……授業はちゃんと受けようね。 
 ちなみにツンドラって言うのは永久凍土とかがある氷原地帯のことだよ。 
  
 「あぁもううるさいわねそうよ言い間違えたわよ。おかしいでしょ。滑稽でしょ。笑いなさいよ。笑えばいいじゃない。あーっはっはっはっは!!!」 
 「あーっはっはっはっは」 
 「笑うなああああああああああ!!!」 
 「な、なんだ!わがままだなお前!!」 
  
 本人が望んだとおりに笑ったはずだったのに鈴は怒られてしまった。 
 今回に関してはすごく同意するよ、鈴。 
 というか朱鷺戸さんがすごく不憫で仕方ない。 
 確か彼女はクラスではすごく大人びて人気がある人だったはずなのに。 
 理想と現実すごく違うから夢から醒めなさいってところだろうか。 
  
 「待ちなさい、棗鈴」 
 「む」 
  
 収拾がつかなくなるかと思い始めたタイミングで、今まで口を閉ざしていた二木さんが鈴に言葉を投げかける。 
  
 「一つ非常に気になるのだけど」 
 「ほう、それはなんだ」 
 「私たちがキャラを変えたとして……唯一のツンデレとなった貴女はいったい何をするのかしら」 
 「え」 
 「あ」 
  
 二木さんの言葉に、笹瀬川さんと朱鷺戸さんがはっとした表情になる。 
 というか、考えてみればたしかにおかしい。 
 今までだって別に問題があった訳じゃない。 
 仮に本当に4人のキャラが被っていたとしても大きな問題は別に無いはずだ。 
  
 「…………」 
 「…………」 
 「…………」 
 「…………」 
  
 無い、はず、なんだけど……。 
 なんでこの4人の間にはこんなに緊張感が漂っているのだろうか。 
  
 「そんなの、決まってる」 
  
 緊迫した空気の中で、鈴が静かに口を開く。 
 その時、僕は思わず耳を疑った。 
  
 「同じキャラだったら理樹にアピールするのに不利だからだ!!」 
  
 僕の名前が出たっ?! 
  
 どうなってるんだ? 
 僕にアピール? 
  
 「ちょっとそれどういうことっ?」 
  
 食いついたのは…朱鷺戸さん。 
  
 「同じキャラ? 理樹くんにアピール? 勝手に話を進めないでよっ」 
 「どーしてだ。お前とあたしじゃモロかぶりじゃないか。だからキャラ変えろ」 
  
 ちょっ、鈴さん理不尽すぎっ。 
 まあ鈴は結構頑固なところもあるから…にしてもだよっ。 
  
 「理不尽すぎるわっ。受け入れられないわよっ」 
  
 当然の沙耶さんからの反論。 
 いきなりキャラ変えろって言われて「はいわかりました」って言う人なんて何処にもいないと思うけど。 
  
 「あと、させ子」 
  
 うわっ。よりによって一番やばい呼び方を。 
 しかも沙耶さんからの返答にはスルーですか。 
  
 「なんですの?」 
 「お前もモロかぶりだから変えろ」 
 「で・き・ま・せ・ん・わっ」 
  
 まあ当然だろう。 
 そもそも、これで「はいわかりましたわ」とか言ってたら、ツンデレキャラ失格だしね。 
 ってツンデレ失格ってなんだ。 
  
 「キャラを変えてどうしろって言うんですの? 
  直枝理樹に媚びへつらうキャラで接しろって言うんですの? 
  直枝さまぁ…って潤んだ瞳で求めるようなわたくしを貴女は見たいって言うんですの?!」 
 「いや誰もそんなこと言ってない」 
 「スルーしやがったんですのっっ?!」 
  
 鈴さん鬼畜すぎ。 
  
 でも僕は思う。 
 ツンデレ×ツンデレこそ、最強のカップリングなんじゃないかと。 
 この二人を見ていると凄くびんびん来るものがあるんだけど。 
  
 …。 
  
  
 何を言ってるんだろう? 考えているんだろう? 
 欲求不満がたまって、思考回路がおかしくなってしまったのかもしれない。 
  
  
 「そして…おまえ」 
 「…せめてあだ名的なものでいいから、個人名を特定できる名前で呼んでくれないかしら…」 
 「はるかの…嫁」 
 「嫁っ?! 嫁…お嫁さん…。はるか…の…お嫁さん…?」 
 「そうだ。まちがってはないだろう」 
  
 出たっ。 
 真・ライジングニャットボール級の剛速球。 
 僕でもそこまで思ったことは無いんだけど…。 
 奔放で生活力のない旦那(葉留佳さん)に、世話焼きすぎでしっかりモノの嫁(二木さん)って…実はもの凄くハマリすぎじゃないのか??! 
  
 「まあ、あの子は生活力は無いし、甲斐性も無いし、誰かが支えてあげてなきゃダメな子なんだけど。 
  その…支える側は、本当なら男の子がいいのかもしれないけど、 
  そんな甲斐性とか生活力のある男子なんてそうそういないでしょうから… 
  必然的に私が支えてあげないといけないんでしょうね…って」 
 「なんだ、わかってるじゃないか」 
 「ふざけないでっ! 
  …直枝からわたしを遠ざけようとしてるの? 甘いわね。そう簡単に引っかかると思った?」 
 「バレたか」 
 「バレバレよっ」 
  
 おお。 
 僕は鈴とのボケツッコミが成立している光景に驚きを感じていた。 
 しかも笹瀬川さんも二木さんも、朱鷺戸さん並みのノリツッコミというか返しが上手い。 
  
 しかし誰ともオチがついていないんじゃない? 
 投げっぱなしでツッコミ切れていないっていうか…。 
 それも鈴らしいけど。 
  
 「よしっ。お前ら納得したな! 解散っ」 
 「「「するわけないでしょ」ですわっ」わよっ」 
  
 見事に揃ったツンデレ三人娘。 
 同じ属性なだけに息がピッタリだ。 
  
 「そもそも棗鈴。貴女が一番問題ではなくて?」 
 「なにがだ? さそ子」 
  
 いやいやいや。その呼び方も十分に危ない気がするよ? 
 しかし、流れが止まった。笹瀬川さんの一言で。鈴のターンが終わった感じがする。 
 僕は彼女の次の言葉を待った。 
  
 「貴女…わたくしたちと同じキャラですの?」 
 「なにっ」 
  
 ?? 
 どういうことだろう? 
  
 特に笹瀬川さんと鈴なんかはどこか似ている部分があると思うんだけど…。 
  
 「そもそも、貴女はツンデレじゃないんじゃなくて?」 
 「なにぃっ?!」 
  
 !!!! 
  
 鈴…が、ツンデレ…じゃない? 
  
 な、なにをいってるんだこのひとは。 
 鈴はツンデレ設定から生まれたキャラだったはずだ。 
  
 「貴女、あの方…直枝理樹に対して、いつツンツンしたんですの?」 
 「あたしが理樹にツンツンしたって言うのかっ?!」 
 「逆・で・す・わっ。ツンツンしたことあるんですの?」 
  
 うわ…逆ギレ? 
 しかも質問に全く答えてないってのがすごい。 
  
 「校内で調査させてもらったわ。 
  もう裏付けは取れているの。あなたが直枝に対してツンツンしたことなど無いってね」 
 「何でそんなことが言い切れるんだっ」 
 「風紀委員会と生徒会、寮会のネットワークを甘く見ないほうがいいわ」 
 「くっ」 
  
 今回は鈴じゃなく、二木さんの発言にツッコみたい。 
 何を見たんだ? 
 僕と鈴のどういう場面を見たんだ? 
 僕らってそんなに目立ってたの? 
  
 しかしそこまで心の中でツッコんで、ふと思い返した。 
 本当に鈴が僕に対して、ツンツンしていただろうか? って。 
  
 「じゃ…じゃあ具体的にあたしが理樹にツンツンしてない証拠はなんだ!」 
 「証拠? 笑わせるわね。 
  じゃあ聞くけど、貴女、直枝に対するツッコミってどうやってるの?」 
 「あー、そりゃもちろんハイキックだ」 
 「嘘おっしゃって、棗鈴。貴女が直枝理樹に対してハイキックしてるのなんて、一度も見たことありませんことよ」 
  
 …。 
  
 そうだ。 
 僕は、鈴から一度もハイキックを食らったことが無い。 
 もしかしたら謙吾もかもしれないけど、真人や恭介が日常的にハイキックでツッコミをされているのに、僕に対してはそんなことはしてない…。 
  
 「…理樹は弱そうだからだ」 
 「弱そう? 確かに、直枝の見た目からは強さは感じられないわね」 
 「まあ…同感ですわね」 
  
 弱そうだから…か。 
 あんまり嬉しくない理由だった。 
  
 「ちょっと…ちょっと待ってよ! 
  あたしを置いて、理樹君語りをするのは止めてくれる?」 
  
 っと、ここで沙耶さんが割って入った。 
 理樹君語りってのは気になるけど、どう言ってくれるのかはちょっと楽しみだ。 
  
 「まあ理樹君は弱い。それは事実ね」 
  
 がくっ。 
 思わずロッカーの扉を開けそうな勢いでずっこけた。 
 フォローしてくれるのかと思ったのに…。 
  
 「だって、女装がすごく似合ってたの。あんな男の子いないと思うわ」 
  
 …。 
  
 もう、終わりにしてもいいですか。 
  
 「でもね。理樹君って…すごいんだ。すごい力を持ってるんだ。 
  何十回って繰り返してたら、本当に…。 
  だから、弱いって決め付けないで欲しいの」 
  
 沙耶さんの言ってる意味はよくわからなかった。 
 けれど、嬉しかった。そんな風に僕を見てくれていたってことが。 
  
 「はいはい。直枝理樹のいいところはわかりましたけど、肝心の、棗鈴の偽ツンデレ疑惑は晴らせてませんことよ」 
 「うっさいだまれっ」 
 「あらら、まだ認めませんこと?」 
  
 振り出しに戻る…。 
  
 「じゃあ、あたしがツンデレだったら、理樹に対してハイキックくらい当たり前っ、なのか?」 
 「そういうことになりますわ」 
 「じゃあお前ら、理樹に対してハイキックでツッコミ入れたのかっ?」 
 「えっ」「うっ」「ええっ」 
  
 いきなり鈴のターン? 
 確かに僕は、ツンデレ3人衆からハイキックをされた記憶は…ない。 
 ない…けど。 
  
 「そもそもハイキックでツッコミなんかいれないわよっ」 
 「そ、そうですわっ。そんなはしたない真似…貴女しか出来ませんわっ」 
 「パンツ丸見えよ」 
  
 鈴のターンが一瞬で終わった。 
 最後の二木さんの一言がキツイ。本当だけど。 
  
 「何っ。パンツ丸見えだったのかっ、あたしはっっ」 
 「今まで気づいてないほうがおかしいよ…」 
  
 はっ。思わず素でツッコんでしまった。 
  
 「?」 
 「どうかしましたの?」 
 「あ、ううん。何でもないわ」 
  
 慌てて口を押さえた。 
  
 気づいてない気づいてない気づいてない…。 
 今ここにいることがばれると、って考えるだけでぞっとするし。 
 何とか回避できて助かった。 
  
  
  
 「…で、何であたしたちはケンカしてるんだ?」 
 「貴女のせいですわっ」 
  
 鈴の場の空気を読まない発言で、ようやく話が振り出しに戻った。 
 こういう強引さが鈴のいいところでもあると思う。 
 やりやすいんだよね、こういう性格なんだって把握しておけば。 
  
  
 「整理すると、棗鈴。貴女はツンデレじゃない。 
  直枝にハイキックをしないってことは、直枝にムカついたりイライラしたりってことが無いんでしょう? 
  だったら、私たちとキャラは被らないわけ。わかる?」 
 「おー、そうか。確かに理樹にムカついたりってあんまりないな…。お前らと被ってないのか」 
 「そういうことですわ」 
 「なんだかわからないけど、そういうことね」 
  
 うん。鈴はツンデレじゃないと思う。 
 少なくとも僕に対しては。 
  
  
  
 「じゃあくるがやは何であたしにそんなことを言ったんだ?」 
  
 それは気になる。 
 鈴にこの騒動の張本人になるように吹き込んだのも来ヶ谷さん。 
 僕にこうしろと言ったのも来ヶ谷さん。 
  
 …黒幕は来ヶ谷さん? 
 今さら気づいたけれど、これは不味い展開になってるんじゃないだろうか?? 
  
 「来ヶ谷さんが言ったのね。…全くあの人は」 
 「来ヶ谷さんが? ってわたくし、あまりあの方のこと知りませんわ」 
  
 不味いと思う。今もどこかで見ているんじゃないだろうか? 
 そして、おあつらえ向きの展開になれば乱入してくるんじゃないだろうか? 
  
 「…と言うことは……、なるほどね」 
 「何かわかったの?」 
 「ええ。とりあえず、ここに誰も侵入できないようにしないと」 
 「どういう意味ですの?」 
  
 さすがは二木さん…なのか? 来ヶ谷さんの意図に気づいたみたいだ(たぶん)。 
  
 「あの人なら色々とやりかねないと思うから。 
  それに…直枝のこともあるし」 
 「なお…え? 理樹がどうした?」 
  
 僕? 僕が何でここで出てくるんだろう? 
  
 「貴女は、直枝のことが好きなんでしょう?」 
 「ああ、当たり前だ。それがどーした」 
 「それがどうしたって言うんですの?」 
 「…なんで今さらそんなことを確認されないといけないわけ?」 
 「OK。それが確認できたらいいの。 
  で、直枝を来ヶ谷さんに渡すのは嫌でしょ?」 
 「そういう流れなんですの?」 
 「くるがやに理樹を渡すのかっ。それは嫌だっ」 
 「だから、その対策を考えようって思ってるんだけど」 
  
 来ヶ谷さんのことまでちゃんと計算してる…のは凄いけど、相手はあの来ヶ谷さんだ。 
 いくら頭脳明晰な二木さんだろうと分が悪いんじゃないだろうか…。 
  
 「あー、その点なら心配要らないわ。そんなこともあろうかと、しっかり仕掛けておいたわ。 
  …外野さん。入ってきたら…どかーん! ってこと。いい?」 
  
 沙耶さんがいた! 確かに彼女ならこういう工作活動は得意分野かもしれない。 
  
 …。 
  
 トラップでも仕掛けたんだろうか? 
 来ヶ谷さんが入ってくる気配が無いとしたら…本当なのかな。 
 無茶苦茶するよ。ここ単なる野球部の部室だよ? 
  
 でも、来ヶ谷さん乱入が無くなっただけでも良かったのかなあ。 
  
  
  
  
  
 「そうそう。この後のプランなんだけど…」 
 「ぷらん?」 
 「直枝をどうするかってこと」 
 「ああ、そうか」 
 「それは全く考えてませんでしたわね」 
 「理樹君をどうかする…? あんなことやこんなことや…で、どういうこと?」 
  
 僕をどうかするって…。 
 そもそも僕がここにいるってことはバレてないはずだから、今後の計画みたいなものかな? 
  
 「例えば、私たち四人で直枝を好きにできるとする。 
  そうしたら、貴女たちならどうしたい?」 
  
 えぇーっ。 
 でもまあ仮定の話だから…。 
  
 「そうですわね…。わたくしには皆目見当がつきませんわ」 
 「なら貴女は?」 
 「女装はさせたいわね。衣装はあたしのを提供するわ」 
 「それだけ勧めるんだからインパクトはあるんでしょうね。興味あるわ。 
  個人的には貴女のが一番気になるんだけど。棗鈴」 
 「あたしか。そうだな、理樹にしたいこと…。 
  ううむ。う〜みゅ…」 
 「はぁはぁ」 
 「…どうしたの? 笹瀬川さん」 
 「あ…いえ、決して棗鈴の悩み顔を眺めてて可愛いとか萌えたとか、 
  そんなこと一度も考えたことありませんからねっ」 
  
 はいツンデレツンデレ。 
 まあ、笹瀬川さんの鈴に対する態度を見てるのは凄く可愛らしいんだけどね。 
  
 「…で、どうですの?」 
 「ああそうだな…」 
  
 しかし鈴がじれったいな…。 
 何を迷ってるんだろう? 
 幼馴染なのに、その思考がわからない。 
  
 「じゃああれだ。理樹と…その…」 
 「その?」 
  
 言いよどむなんてますます鈴らしくないじゃないか。 
 でも、突っ込むわけにもいかないので、じっと待つことにする。 
  
 「いちゃいちゃしたいんだーっっ!!」 
 「な、なんですってぇぇ〜〜〜っ」 
 「う…随分ストレートなのね」 
 「あたしももっとはっきりと欲望を表すべきだったのかな…」 
  
 いやいやいや。 
 鈴とはそういう風に考えたこと無いからっ。 
  
 「色々と驚いたけど、異論は無いわよね?」 
 「ええ」 
 「そう…よね」 
 「なら、私たち四人でやろうじゃない」 
 「四人でかっ」 
 「ええ。そのほうが都合がいい事もありそうだし」 
  
 決定なの?! 
 何だか、素敵空間なのか生き地獄なのか、わからない未来が僕の前に完成してしまった…。 
 そんな気がした。 
  
  
  
  
  
 「…で、話は聴いてたわよね? 直枝」 
 「!!!」 
  
 気づかれてる? まさか。 
  
 「えーっ、理樹君いるのっ? うそっ、どこっ、いつからっ?!」 
 「いましたんですのっ?」 
 「ええ。ちょうど私の後ろのほうにあるロッカーの中かしら。 
  棗鈴にツッコんだときに声が漏れてたわ」 
  
 場所まで的確だ! 
 って言うか、あの時のツッコミがバレてたんだ…。 
  
 「なんでっ。何でスパイのあたしが気づかないで、一般人のあなたが気づいてるのよーっ。 
  しかも何? 好きな人の、理樹君の気配にずっと気づかないで、のほほんとトラップを仕掛けてたわけ? 
  滑稽ね。おかしいでしょ? 笑えば? 笑うがいいわ。笑いなさいよっ。 
  あーはっはっは…ってね」 
  
 「あーはっはっはっ」 
  
 沙耶さんの自虐笑い来たっ。 
 問題は、僕みたいなスルー機能をこの三人が持っているかだけど…。 
  
 「なっ。いきなり笑うか、ふつー」 
 「ど、どうしたんですの? 頭おかしくなりましたの?」 
 「大丈夫?」 
  
 見事にみんなツッコんだ!! 
  
 「…どうせあたしは一般人にも劣る低能で使えないスパイよ…。 
  精神状態もおかしくなるわよ…悪かったわね…」 
  
 で、やっぱり沙耶さんは二重にダメージを受けていた。 
 ゴメンね。こればっかりは僕がそこにいても助けられないよ…。 
  
  
  
 「…で、直枝、気づいてないとでも思ったの? 
  こっちの4人の意見はまとまっているのよ? 覚悟なさい」 
  
 二木さんの視線は…まっすぐ僕の入っているロッカーのほう…へ? 
  
 まずいっ。 
 そうは思っても、逃げ場なんてあるはずが無い。 
  
 えっ、じゃあ僕はどうしたら…って、もうすぐ側まで来てるよっっ。 
  
 「理樹くーん。手荒な真似はしたくないから、おとなしく出てきて」 
  
 そんな言葉を、愛用の銃を構えながら発しても全く意味を為さないかと…。 
  
 「理樹っ。あたしと…その…いちゃいちゃしたくないのか?」 
  
 うっ…。 
  
 「今なら出血大サービスだ! あたしが抱きしめてやろうっ。どーだっっ」 
  
 そ…それはダメだよっ。 
 別の意味で崩壊しちゃうよっ。 
  
 「か…観念なさいっ。数々の私物を手になさってる貴方になら、もう何をされても構いませんわっ」 
  
 いやいやいや。 
 確かに鈴経由で色々と貰ったけど、それとこれとは全然話が違うんじゃないの? 
  
  
 がちゃ。 
  
  
 「うわぁっ」 
  
  
 こもっていた熱が解放され、ひんやりとした外気?が僕を包み込んだ。 
 そして眼前には…。 
  
 「どうしよっか…直枝。何プレイがいい? 葉留佳のフリした感じがいい? やっぱり私が上?」 
  
 二木さんが。 
  
 「ようやく出てきたか。あたしにくちゃくちゃにされたいんだなっ。よーし、お望みどおりくちゃくちゃにしてやろう」 
  
 鈴が。 
  
 「良かった、理樹君が蜂の巣にならずに済んで。何する? 着衣プレイ? 女装プレイ??」 
  
 沙耶さんが。 
  
 「わたくしの私物、他にあげてもよくてよ? 何がよろしいかしら? それとも、わたくし自身で?」 
  
 笹瀬川さんが。 
  
  
 …んで、僕はどうなるの? 
  
  
 「ご想像の通りね。じゃあ、そうね…とりあえず脱いだら?」 
 「え? えっ、えっ」 
 「あとは…私たちの好きにさせてもらうからっ」 
 「覚悟だっ、理樹っ」 
 「うわぁぁぁぁ〜〜〜〜っ」 
  
  
  
  
 くちゃくちゃだ…。 
 くちゃくちゃすぎた…。 
  
  
------------------------ 
  
  
 その頃、部室の外では…。 
  
  
  
 「予定とは違ったが…まあいいだろう」 
 「でもこれはこれでいいものだ。うんうん。ああ、忘れないうちに動画として記録しておこう。 
  さすがにメモリーは8GBしか用意してなかったが…惜しいことをしたな」 
 「あとで色々と使えそうだからな…。あー鈴君、肝心なとこが見えな…」 
  
  
  
 …end. 
  
  
<><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><><> 
  
<あとがき> 
  
 りきおです。しまさん、NELUOさん、神主あんぱんさんと4人での合同企画?リレーSSのアンカーとなりました。書くのが遅すぎるだけだけど…。本当にすいません。しかも途中からオチに行くまでの展開に無理が出てきて、色々と付け足しているうちに長々となってしまい…。完成させた自分を誉めてやりたいですけども。言い過ぎか。あまり比べないでくださいね?? 
 言いたいのはただ一つ。「鈴はツンデレじゃない!(理樹に対しては)」ってことですw ハイキックしてないのはもちろんなんですが、鈴が理樹にツンツンしたシーンってどれだけありましたか? ありませんよね? 鈴はずっと理樹の裾を掴んでべそかいてるイメージしかありませんw 田舎暮らしのシーンでも特に理樹にツンツンしたシーンはありませんでしたしね。ただ振り回されているだけだと思うんです。甘えてワガママを言うのもツンデレの一種と言われたら反論が出来ませんが…。なので僕の鈴SSはツンツン成分が弱めです。 
 しかし、年末年始の冗談みたいな企画だったのに、半年近くかかるか? ふつー。すいませんでした。 
  
  
 感想などありましたら、 
  
「Web拍手」「掲示板」「新SS投票ページ」 
  
 などへどうぞ! 
  
  
◆リンク(彼女たちの見解 競作作家さんたち) 
しまさん(ふらんき〜)http://franky.omiki.com/ 
NELUOさん(The Sleeper)http://sleepingguest.web.fc2.com/ 
神主あんぱんさん(光神社)http://kannusi.hp.infoseek.co.jp/ 
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