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★リトルバスターズ!SS部屋★

リトルバスターズ!のSSを掲載していきます。

  23   『続・鈴との日々』(鈴・後日談)
更新日時:
2007/10/08 
『続・鈴との日々』
 
 
 こんこん。
 
「僕。理樹。鈴、いる?」
 
 がちゃ。
 ノブが回転して扉が開く。
 
 ふわっと、廊下とは全然違う空気に包まれる。
 その瞬間、頭がくらくらするような感覚に襲われた。
 
「入って」
「うん」
 
 彼女の招きに応じて、僕は辛うじて部屋の中へ入った。
 
 
 
「こ、こら、理樹っ」
 
 後ろ手でドアを閉じると、堪らずに正面から抱きしめていた。
 だって、仕方が無い。
 大好きな子の空気に包まれているんだから。
 我慢が出来るはずが無いんだ。
 
 ここは鈴の部屋。
 相変わらずルームメイトはいなくて、1人部屋だ。
 だからこそ、部屋の空気は…鈴100%なんだ。
 
 すぅ〜っ。
 
「?」
 
 空気の発生源の間近で息をすう。
 …。
 さっきドアを開けたときよりも、全然濃い匂いが僕の感覚を麻痺させる。
 目の前にある頭を見る。
 
「髪、下ろしてるんだね」
「もうちょっとで寝るからな」
 
 いつもは後ろ髪をくくってポニーテールにしてるけれど、
今はその長い髪を下ろしているだけだ。
 
「大人っぽく見えるね」
「そうか? 髪、くくってないだけだぞ?」
 
 雰囲気からして違うんだ。全然。
 
 抱きしめながら、その褐色に輝く綺麗な髪を手で梳く。
 風呂上りなのか、ちょっと湿っていた。
 そういえば、匂いもシャンプーやらせっけんやらの匂いが強い。
 
 すぅ〜っ。すぅ〜っ。
 
「ぅぅ…」
 
 抱きしめられたままでどうしていいかわからずに、困っている彼女。
 可愛い。
 可愛すぎる。
 ああ…僕ってこんなキャラだったっけ?
 でも、そんなことはどうでも良くて…。
 
 すぅ〜っ。すぅ〜っ。
 
「いいにおいだ…」
 
 ただその感覚に浸っていた。
 
 
 
 
「あたしの彼氏はヘンタイだ」
「どうして?」
「彼女のにおいをかいでばっかいるからだ」
「うん」
「ふしあわせだ」
「そう?」
「うん。だって…」
「その彼女もヘンタイだからだ」
「うん?」
「あたしも…その、理樹のにおいをかいでいるからだ」
「そうなんだ」
「ああ」
 
 やっぱり、愛おしかった。
 そんな思考ですら、可愛いと思えてしまうから。
 
「やっぱり、僕らは繋がってるんだよ」
「ああ。ちょっといやなつながり方だけどな」
 
 そう言うと、彼女はより僕に身体を預けてきた。
 
「でも理樹。あたしたちはたいせつなことを忘れてないか?」
「大切なこと?」
「そうだ。あたしたちふたりにとって、たいせつなことだ」
「うーん…」
 
 前にもあったようなやり取り。
 しかし何だろう?
 今は鈴が腕の中にいて、空気は鈴のものしか感じられなくて、
それ以外に大切なことなんて僕には思いつかなかった。
 
「いま、理樹がこのへやにきた理由だ」
「理由?」
「そうだ。…何っ? そんなことも忘れたのかっ?!」
 
 今度は本当に思いつかない。
 鈴との大切な約束を忘れるなんて…。
 今側にある温もりと匂いに溺れて忘れてしまったのか?
 
 すーっ、と、高揚していた気持ちが下がった。
 
「…ごめん、鈴。忘れた」
「しょーがないやつだな」
 
 そう言った鈴は、ちょっとだけお姉さんっぽく見えた。
 良かった。全然怒ってなかった。
 
「宿題、しようっていったのは理樹だろ」
「あ…」
 
 そんなことはすっかり忘れてしまっていた。
 …確かに、ある意味では大切なことだった。
 
 
 
 
 小さめのテーブルを出してきて、その側に腰掛けた。
 彼女は…向かい側に座るのかと思いきや…、
 
「よっ」
 
 隣だった!
 しかも寄り添うように密着されてしまっていた!
 
「そこは…ヤバイって」
 
 絶対集中なんかできやしない。
 集中できたとしても、おそらくは宿題にじゃあない。
 
「ダメか?」
 
 上目遣いで訊かれた。
 うああぁ…。
 
「ダメなわけないよ」
 
 そう答えるしか選択肢は無かった。
 反則だよ…。
 
 
 
「ここはこうやって、こうして…」
「うん。…わかったようなわからないような」
「こう考えるとどう?」
「あ、そうかっ。わかった」
 
 僕は、必死に理性で抑え込みながら鈴に教えてあげながら宿題を進めた。
 
「理樹は頭いいな」
「そうかな? 来ヶ谷さんとか西園さんとか、天才クラスがいるから僕なんか全然じゃない?」
 何故か周りには天才がずらりと揃っている。
 恭介は色んな意味で天才だ。謙吾だってなかなか良く出来る。小毬さんも成績は上位らしい。
 そういえば、クドだって二木さんともの凄く難しい話を平気でしてたりするし、
来ヶ谷さんや西園さんなんて、もう次元が全然とことん違う…。
 僕の成績は悪いほうじゃなかったけれど、ちょっとそれを考えるとヘコむ。
 
「いいや。全然違う。
 みんなは、理樹みたいにやさしく教えてはくれない」
「そうかな?」
 
 今のみんななら、鈴とも仲良くやってくれると確信があるんだけど。
 …来ヶ谷さんだけはヤバイかもしれないけど。
 
「…鈍感だな」
「何が?」
 
 そういうと、彼女は僕の腕を抱きしめていた。
 そうすると、胸の柔らかいところとかが伝わるんだけど…。
 そんな感触をしばらく堪能していた――
 
 
 
 
 
「できたっ」
「ふぅ。ようやく、だね」
 
 とても困難な宿題が終わった。
 ある意味、真人の筋肉方面よりも集中力が散ってしまい大変だった。
 
「ありがと。理樹っ」
 
 頬にちょん、と柔らかな感触が。
 
「どうだった?」
「ん。よくわからなかった…かな?」
 
 ちょっと意地悪を言ってみる。
 本当は、くすぐったくて気持ちよくて。
 『よくわからなかった』わけが無かったんだけど。
 
「む〜っ。なら本気でしてやるっ」
 
 ちゅ〜っ。
 
 吸い付くようにされた。
 
 ちゅぽん。
 
 そんな音が聴こえるくらいに。
 
「どうだっ!」
「どうだっ…って言われても」
 
 あんまり色気ってものは感じなかった。
 けれど、
 
「あーっ」
「どうしたの?」
「理樹のほっぺたにあとがついた」
「どれ?」
「これ」
 
 鈴が、側にあった手鏡をかざして見せてくれた。
 
 …。
 
 見事なまでに、鈴の唇の痕がくっきりと浮かび上がっていた。
 
「鈴の…キスマークってやつじゃないのかな?」
「きすまーく?」
「うん」
「鈴が本気でキスしてくれた証拠ってこと」
「ああ。そーゆーことかっ」
 
 何とか理解してくれたようだ。
 
「…理樹はつけてくれないのか? きすまーくとか」
「つけて欲しいの? 鈴」
「あたりまえだ」
 
 正直、ほっぺにキスマークなんて聞いた事が無かったので、
定番(?)の首筋につけることにした。
 髪をかき分けて、白いうなじに口づけた。
 …結構恥ずかしいし、どきどきしたけど、どこか気持ちよさもあった。
 好きな子に、自分の痕跡を遺すっていう行為に。
 
「理樹っ。こそばいっっ」
 
 彼女は、くすぐったそうにしながらも、嬉しそうにしてた。
 
 
 
 
「もう、宿題おわったからいいな」
「うん?」
 
 そういうと彼女は…、少し移動して、ちょこん、と、僕のひざの上に…。
 うわぁぁ…。
 
 程なくして、背中を僕に預けてきた。
 
「いっかい、こうしてみたかったんだ。
 理樹のひざのうえ〜っ♪ りっきのひざのうえ〜♪」
 
 あの時と同じく、変な歌を歌ってて上機嫌だ。
 
 小さいけど、柔らかいおしりの感触が直に伝わる。
 腕を抱くようにするから、胸の感触までわかってしまう。
 
 こうして抱いてみると、彼女の小ささがよくわかる。
 背はそれほど低いわけじゃなかったけれど、肩とか骨格とかがまるで違ってた。
 
 僕も負けじと抱く腕の力を強めた。
 
 守っていきたい。
 ずっと一緒にいたい。
 笑い合っていたい。
 
 色んな感情が入り混じって、でもそれらは同じベクトルを描いていて。
 彼女も、いつの間にか歌うのをやめて、腕の中で和んでいた。
 
「…ここ、いいな。うんっ。すごくいい!」
「そう。気に入ったんなら、またおいでよ」
「うんっ。そうするなっ」
 
 そう言い合うと、お互いが抱く力を更に強くした。
 この温もりを大切にしたい。
 その思いはたぶん一緒なんだ。
 
「鈴」
 
 彼女をこちらに振り向かせ、その唇に自分の唇を重ねた。
 お互いがお互いの存在を確認する。
 体勢が体勢だから、もうほとんど全部が一緒になって、どこまでが僕で、
どこからが彼女なのかもわからなくなってしまったけど。
 
 とにかく、こんな日常が続いていけば良いな、と思っていた。
 学校を卒業しても、ずっと。
 
-------------------------
 
「理樹がいない…。どういうことなんだっ、恭介っ!!」
「恭介よぉ…。これが、お前の望んだ世界ってやつなのか?」
「う…すまない」
 
 その頃、僕のいない部屋では、男3人で集まっていたそうだ。
 
「俺は…ただ、鈴を幸せに出来るのはあいつしかいないって…。
 そう思ったんだっ」
「理樹はなあ…。鈴だけじゃなく、俺たちにも必要なんだよっ!!」
「そうだぞ?! 恭介。お前にもわかってるはずだっ」
「ああ、わかってるさ! わかってる…。わかってるから…こんなに寂しいんじゃないか!!!」
「…」
「…」
 
「悪かった、恭介」
「俺からも謝っておく。すまん」
「やめてくれ…。余計に虚しくなるだけだ…」
「うう…。カムバーックっっ!! 理樹ーーーっ!!」
「帰ってこーいっ!!」
 
 
 
 帰ってから、もみくちゃにされたのは言うまでも無かった――。
 
 
<終わり>
 
-------------------------
 
 オチが落ちきらなかった…。
 りきおです。
 
 内容については、鈴の性格とか言動、行動を壊さずに、どれだけ鈴で萌えられるか?を考えていたんですが、鈴のゲーム本編のCGを見れば、それだけで十分萌えられますからね。普通に動かしただけになりましたw やり過ぎかもしれませんけど、こんな感じなんだろうなあ、とかニヤニヤしながら書いてみました。
 
 鈴については、他のキャラがメインのSSでも出すつもりですし、ハッピーエンド以外の話も書くつもりですので、鈴ファンの方はお待ちくださいませ。
 
 感想などあれば、
 
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