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頂きモノSSの部屋
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37   ★カツオさん作『ソリダスター<第1話>』(CLANNAD 杏)
更新日時:
2005.05.03 Tue.
二年生の頃は同じクラスだったから
授業中もさりげなく見れたから
目が合ったとき
眠そうな目であたしを見てくれる
 
朋也のあの優しい目
あたしだけに向けられる眼差し
 
みんなが黒板に集中してる時に
あたし達だけの空間ができる
 
あの時間はもうできない
 
だって
 
クラスが別だから
 
 
   〜ソリダスター第一話〜
 
 
朝の天気予報では今日は曇りで
明日から雨だって言ってたのに……嘘つき
こんなに重たい空じゃ気分も滅入るわ…
それなのにこの教師は…
 
んもぉ! いつものことながら長いのよ!
もう授業終わる時間が迫ってきてるんだから
その辺考えて早めに終わりなさいよ!
 
  キ〜ンコ〜ンカ〜ンコ〜ン
 
ほら、終わった。早く号令かけさせなさいよ!
「ん?もう終わりかそしたら今日はここまでにしておくか」
よしそこで『じゃあ、委員長』って言いなさいよ
「じゃあ、委員長。号令をかけてくれ」
「起立! 礼!」
しまった…
先生の言葉の直後に号令をかけたから
さすがにみんなちょっと驚いてる……
 
ちょっと待ってよ!
これじゃあこの後すぐに教室を出て行ったら
トイレに行きたいみたいじゃない!
ちょっと焦りすぎちゃった……
 
「杏ちゃん、どうしたの? 号令が早くてびっくりしたよ」
「そうそう、もしかしてどこか悪いの?」
 
早速質問されちゃった……
なんとか誤魔化さないと
「大丈夫よ、ただ、ほら、あのまま話させたら長くなりそうだったし」
「そうだよねぇ!それ言えてる」
よかった、なんとか誤魔化せたみたい
 
これで席を立ちやすく…
「ってことは、杏ちゃん何か用事があるの?」
「えっ!?何で?」
え、な、何?こんな展開予想してなかったのに
話が一段落して終わりじゃないの?
「だって長くなるのに困ってるって事はこの休み時間に何かしたいことがあるんでしょう?」
そ、そんなのないわよ!
ただ、その…朋也に会いに行きたいだけなのに…
「そっか、杏ちゃん、何かあるなら早く行ったほうがいいよ。休み時間も短いから」
賛同しないで〜!えっと、どうしよう
 
「そ、そうよ。り、椋のところに行かないといけなかったの」
とっさにでた言い訳としては十分なんじゃないかしら?
不自然でなく、且つ短い時間でもこなせそうな用事そうだし
「そうなの? じゃあ早く行かないと」
「うんうん、隣のクラスだし。早く終わらせないとね」
よかった、これでようやく席を立てる…
「うん、じゃあ行ってくるね」
 
そうやってようやく自分の席を立てた
なんで自分の席を立つのにこんなに苦労しなきゃいけないのよ!
 
 
さて、朋也は来てるのかしら?
いつも遅刻ばっかりだし、まだ来てないかしら
 
どれどれ……
 
「どうしてそうなるんだよ…」
あっ来てる♪あいつにしては珍しいじゃない
それにしても誰と話してるのかしら…
陽平?じゃないみたいだし、あの前にいる女の子と話をして…
「えっと…お、乙女のインスピレーションです」
 
 
椋……
 
どうしてあの娘が朋也と話してるの?
 
朋也はどうして笑ってるの?
 
朋也をそんな目で見ないで!
 
朋也もそんな優しい目を
 
あたしの大好きな目をあたし以外に向けないで!
 
 
あたしはどのくらい立ち竦んでいたんだろう
分からない……
その場で動けなかった時
休み時間の喧騒は耳に入ってこなかった…
 
ただあの空間だけがあたしの目をひきつけた
いや、魅入られたように動けなかった
 
あたしはドアの前で止まっていた
 
何も聞こえなかった
 
何も聞きたくなかった
 
何も見たくなかった
 
いつの間にかチャイムが鳴っていた
 
それに気づいて教室に戻った
 
さすがに授業中は静かになっている
 
でも、あたしの中のざわめきは静まらなかった
 
 
結局昼休みまで席を立つことなくすごした
授業があんなに長く感じたのも久し振りだった
 
だからいろんなことも考えた
 
あたしは実の双子の妹にさえ
 
なんともいえない感情を持ってしまっているの…?
 
わからない、何もわからない
 
 
ワカリタクナイ
 
 
苦しかった…気を抜けば倒れてしまいそうだった
 
そんな中あたしは悩んで結論を一つ出した
 
昼休みになったらもう一度朋也に会いに行こう
 
その結論に達した理由は簡単だった
 
『朋也と話がしたい。朋也の顔が見たい』
 
ただそれだけだったから…
 
 
そして昼休み
 
ドアの前に来て足が止まっちゃう…
 
自分が何を恐れているのか
それが今になって分かった
 
嫌われるとかじゃない
ただ、今まであたしに向けられていた優しい目
あの眼差しをあたしに向けられなくなるのを恐れている…
 
もしも、朋也に会って
あの目で見てくれなかったら……
 
そう考えただけで背筋が凍りそう
 
こういうときに何て声をかけて教室に入ればいいんだろう…
どうしよう…
 
「あの藤林杏だよ!? あの凶暴で優しさのかけらもない藤林杏?」
……えっ?この声は陽平?
「がさつで、あの鬼のような藤林杏と!?」
…………好き放題言ってくれるじゃない
 
そう思った瞬間、手元にあった漢和辞典を思いっきり投げた
 
「グハァァッ!!」
 
よし命中
 
さて、黙らせたところで文句をいいに行こうかな
「好き放題言ってくれてるじゃないの陽平…」
「いや、杏。多分聞こえてないと思うぞ……」
えっ?朋也?
しまった!陽平が話をしてる相手って朋也以外いないじゃない!
どうしよう、勢いで何も考えずに教室に入っちゃった
 
「しかし、杏。お前の辞書投げ的確にヒットさせるのな」
えっと、どうしよう……
って何?朋也は何の話をしてるんだっけ?
 
ふと足元を見ると陽平が見るも無残な格好で倒れていた
 
これって陽平のおかげで教室に自然に入れたっていうこと?
悔しいけど陽平に感謝かも……
 
「いいのよ。陽平が好き放題言ってくれてたのを止めただけなんだから」
「まぁ、春原がどうなろうと関係ないけどな」
そう言ってはにかんだ笑顔であたしを見てくる
 
この、自然な笑顔
 
そして優しい目
 
これがあたしを安心させる
今までモヤモヤしていたものを消してくれる
あたしの特効薬
 
「それにしても、陽平が来てるなんて珍しいわね」
気分がすっきりしたから自然に会話ができる。
「来てるって言っても、今来たばっかりだけどな」
駄目じゃない…そういえば確かに朝は見なかったわね
でも、役に立ったから許してあげるわ
 
ん?陽平の残骸を見ていて気になったことが……
「朋也、ちょっと聞いてもいい?」
「どうした? 春原の仕組みなんて俺は知らないぞ」
誰がそんなことを聞くのよ…
っていうか仕組みって何?
 
「そうじゃなくて、何で陽平こんなにボロボロなの?」
 
そう、おかしいのよ
あたしは辞書一つしか投げてないのに…
それなのに傷が多すぎるのよ……どうして?
 
「あぁ、なんだそんなことか。もしかして春原の事ちょっとは気にしてるのか?」
「ち、違うわよ! ただ、あらぬ疑いをかけられたら嫌だからはっきりしたいのよ」
ちょっと朋也、何を言うのよ!?
あたしが陽平を心配する?
…………地球が滅びても有り得ないわね
そりゃあ、朋也が怪我したら心配するけど……
 
「その傷はこいつの自業自得だから杏が気にすることはねぇよ」
自業自得ってどういうこと?転んだにしては不自然だけど…
「何?走行中のバイクにでも飛び込んだの?」
「いや、それはお前が引く側になってるだけだから…」
 
そ、それは朋也だけよ
そりゃあ、何人か無関係の人を跳ねちゃった事もあるけど……
意識的に跳ねてるのは朋也だけなんだから
………………………鈍感
 
「なんかこいつ寮の前にうちの学校の女がいたらしいんだよ。
それでこいつ何を勘違いしたのか知らないが、その娘が自分を待ってると思ったらしいんだ」
ば、馬鹿すぎるんだけど…
どうせ陽平のことだから目が合ったとかいう理由なんだろうけど…
「それで、抱きついたらしい」
い、いきなり抱きついた!?
信じられない! 女の子をなんだと思ってるのよ?
ヘタレとは思っていたけどそこまでヘタレとは思わなかったわ…
「それで、ラグビー部の彼氏にやられたっていうことだ、アホだろう?」
 
「アホっていうかただの変態じゃない」
思ったままの言葉を言っちゃった
まぁ、いいや。どうせ陽平だし
「そもそも、こいつに好きになられた女がいたら
それもそれで可哀想だけどな」
 
その瞬間、あたしの中に一つの疑問が浮かんだ
でもこれは聞いてもいいのかな?
聞いたら朋也は嫌な気持ちにならないかな?
 
「ねぇ、あんたって誰か好きな子いんの?」
 
考えるよりも先に言葉が出ちゃった!
ど、どうしよう。朋也怒ってないかな…
 
「…は?なにをいきなり?」
怒ってはないけど、呆気に取られてるだけ?
「なんとなく」
こう言うしかないじゃない
「ほら、不良ってさ、意味もなく格好良く見えたりするらしいでしょ?」
「だから大体、彼女持ちじゃない」
 
『あんたのことが好きだから気になる』
なんて聞けるわけもないのに…
 
「変な先入観持ってんのな、おまえ…」
もう聞き始めたら止まんないよ
どうなんだろう…もしかして実は付き合ってる娘がもういるのかな?
「違うの?」
 
でも好きな子がいないっていうのは
あたしにとっていいことなのかな?
なんか微妙な感じ……
 
「少なくともこの学校じゃ無茶な話だろう」
そんなことはないわよ……
あんたを見てる娘はたくさんいるのに…
「不良と付き合ってるなんて、それだけで教師共に目をつけられるぜ」
そんなこと気にしないのに…
少なくともあたしは朋也と一緒にいれれば
周りになんて思われても関係ないのに
「ふぅ〜ん…ひょっとしてあんた、そんなこと気にして彼女作らないとか?」
気を使って彼女を作らないんなら
あたしには追い風にできるかも……
 
「そういうわけじゃないけどな」
もう、はっきりしないわね!
「ただ、俺と付き合うなんて物好きな女はいないだろう」
鈍感にも限度ってものがある気がするんだけど…
もしかして謙遜してるだけなのかな?
それとも本気でいないと思ってるの?
 
じゃあ、いたら付き合うのかな?
「いたら付き合うの?」
ストレートに聞きすぎたかな?
朋也がすごい不思議そうな顔をしてる
なんか特別変な質問だったかな…
「もしさ、あんたのこと好きて子がいたら付き合う?」
真剣に悩んでる……
こんな質問にでも真剣になってくれる
でもそんな気はないなんて言われたらどうしよう…
 
「相手によりけりだ」
どういうことなんだろう…
去年一年の間、朋也といたから少しは分かる
朋也は生徒会とかの学校寄りとでもいうのか
そういう類の人間を毛嫌いしている
じゃああたしはどうなんだろう…
他の娘達はどうなんだろう…
とりあえず、望みがないわけじゃないから一安心なのかな?
「それもそうね」
「来る者拒まずなんて奴だったら、惚れちゃった子の方が可哀想だもんね」
朋也はそんな男じゃないのは知ってる
誰にでも優しいから…
 
でも、その優しさがあたしの悩みの種なんだけどな…
「でもなんで、んなことを急に?」
そんなこといまさら聞かないでよ…
やっぱり朋也はあたしのことなんとも思ってないのかな…
「ん?別に」
「特に意味はないわよ」
はぁ……分かっていることでもちょっと悲しいかも
平静を装うのも楽じゃないわ…
 
「それよか、おまえはどうなんだよ?」
へ?あたしの事を聞いてるの?
あたしのことを気にしてくれてるの?
 
「おまえこそ好きな相手とかはいないのか?」
本気で聞かれてるの…?
「あ、あたし?あたしはほら。だから…ね?」
何で好きな相手にこんなこと聞かれなきゃいけないのよ…
はぁ…本当に鈍感なんだから……
何であたしこんなのを好きになったのかしら…
 
 
結局この後、曖昧なままで昼休みが終わった
 
午後の授業が始まってしばらくすると
ポチポツ降り始めてきた
まったく、置き傘しといてよかったわ…
 
授業もようやく終わって放課後になった
はぁ…雨が降り始めると気分も重くなるわね…
ソックスに泥が跳ねると落ちにくいのよね…
 
あれ?昇降口にいるのって朋也?
傘がなくて待ちぼうけかしら…
陽平はいないみたいだけど…
寮は近いから走って帰ればいいものね
 
あれ、朋也どこに行くのかしら?
帰るには室内にむかってるし
教室じゃなくて旧校舎に向かってるみたいだし
 
何しに行くのかしら……
 
傘ならあたしの傘に入っていけばいいのに
まったくどこに行くのか気になっちゃったじゃない!
 
でもなんだろう、この感じ
昼休みの時に似てる…
 
はっきりとはしないんだけど
モヤモヤした感じが体中を駆け回る
 
 
朋也……
 
わかんないよ
 
お願い……助けて……
 
------------------------------------------
 
改めまして、カツオです。
 
恋する女の子っていうのは難しいです…
 
恋をすると独占欲が働くんですよねぇ
 
経験ないですか?…えっ?ない!
 
そうですか…
 
さて、読んだ方はお気づきかとは思いますが
 
このSSはゲーム中では何日ぐらい
 
そんな設定はありません!(笑)
 
今回は椋がちょっと出てきましたが
 
次回は誰なんでしょう?自分にもわかりません←オイ!
 
リクエストがあればそのヒロインになるかも…
 
最後になりましたが連載掲載を受け入れてくれたりきおさん
 
本当にお手数をおかけして申し訳ありませんが
 
完結までご迷惑をおかけすると思いますがよろしくお願いします
 
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 りきおです。
 カツオさんから、続き(と言うか、前回はプロローグ的なものだった)を頂きました!
 
 春原(ギャグ?)を自然に取り入れつつも、朋也に対しての想いが暴走しつつある杏の心情が、上手く描かれているなあ、と思いました。
 朋也に暴走する杏って好きなので、これからも一読者として楽しみにしたいですw
 
 感想などありましたら、
 
「新・掲示板」
「SS投票ページ」
「Web拍手」
 
 などにお寄せくださいましたら、作者であるカツオさんにお届けしますので、お待ちしています!
 
 

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