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頂きモノSSの部屋
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33   ★カツオさん作『ソリダスター<第2話>』(CLANNAD 杏)
更新日時:
2005.09.09 Fri.
朋也の向かっている場所
 
そこは何処なのか
何のために行っているのか
 
あたしにはわからない
 
でも
 
こういうときのあたしの勘はよく当たる
 
こういうときは絶対に
 
あたしにとって嫌なことが起きてしまうから
 
 
    〜ソリダスター〜
 
 
朋也がどこかの部屋に入っていったけど……
 
ちょっと迷ってる間に見失っちゃったなぁ
でも、こっちに来たのは間違いないんだけど
 
朋也の行きそうな場所……
この雨だから時間をつぶせるところってことでしょう?
 
そしたら……普通は図書室?
 
……有り得ないわ
朋也が時間をつぶすのに読書?
 
あたしが早起きして朝顔の成長日記つけるぐらいないわね
昔、ラジオ体操も全部出席したことないのに…
 
ってそんなことはどうでもいいのよ!
今は朋也を探してるんだから
 
それにしてもどこに行ったのかしら?
 
なんか、廊下でも隅のほうまで来てしまったみたいだし
引き返そうかな……ん?
 
むこうの部屋から何か聞こえる
 
この声は……朋也?
 
この部屋から聞こえる
 
でも、ここって…………資料室?
こんなとこに朋也がどうして?
 
なんでもない部屋
なのにあたしの足は完全に止まってしまった
 
理由は明らかだった
 
部屋の中から声がする
朋也、陽平
そして……女の子の声
 
どうして…?
 
何が起きてるの?
 
あの朋也が誰かと一緒にいる?
 
 
うそ
 
ウソ
 
「岡崎もやれよ!
僕だけじゃなくてお前も同じ結果になるはずだから!」
                         
                                 朋也………
 
「お前と同じ結果にだけはならないから、人として」
 
                                 やっぱり………
 
「断言っすか!? っていうか人としても否定!?」
 
                                 朋也にとって………
 
「お二人とも楽しそうですね♪」
 
                                 あたしは………
 
「いや、五月蝿いだけだろう。
それと宮沢、こいつと同じ扱いをしないでくれ。泣きたくなる」
 
                                 ただの友達なの………?
 
「そんなに嫌がらないでください……お願いします」
 
                                 側にいることは出来ないの………?
 
 
 
「仕方ねぇなぁ…、どうするんだっけ?」
「えっとですね、胸の前で腕を組んでですね心の中で
シナノキノオモイと三回唱えてください」
 
「えっと、こうして…………………」
 
このままここにいたら駄目なことばっかり考えちゃう。
それに……今、朋也と顔を合わせるのが怖い…
 
帰ろう……
 
「どうせ誰もいないって。僕の時にいなかったんだから
岡崎の時だけいるなんて都合の良い事あるわけないって」
 
ガラガラァァ!
 
「「「えっ!?」」」
 
どうしてドアが開いたの?
朋也とどうして目線が合ってるの?
 
「杏…」
「朋也…」
 
駄目……
朋也の顔を見てると、目がぼやけてくる
 
「杏、その、俺は……」
 
朋也の声を聞けない
この言葉を聴くと朋也の側に入れなくなる気がするから
 
「ごめん、バイバイ!」
「杏! 待てよ!」
 
逃げることしか出来ないよ
 
嫌われても、朋也が誰を好きでも
あたしは朋也の側にいたいから
 
いつの間にか下駄箱まで走ってた
 
こんなに靴を早く履き替えたことはないと思う
 
雨が降っていた
でも、傘は差さなかった
 
傘を差すと走るのが遅くなるから
傘を差すと雨に濡れることができないから
傘を差すと泣いてるのをごまかせないから
 
夢中で走っていた
どこに向かって走ってるのかわかんない
 
でも走った
 
何も考えきれなかったから
とにかく誰もいないところに行きたかった
 
 
 
気がつけば見覚えのある原っぱにいた
 
ここは、そうボタンを拾ったところ
そう、あの日もこんな風に雨だった
 
ついて来る仔しか育てない猪の習性
 
それに取り残されたあの仔
 
はぐれたのか、取り残されたのか
あたしにはわからない
 
あの仔はすでに一人で雨に打たれていたから
              
あの仔の大切な場所
 
じゃああたしの大切な場所はどこ?
 
あたしの家?
違う、あそこは大切な場所じゃなくて日常
 
学校?
違う、学校が大切なんじゃなくて中身の問題
 
自分のクラス?
違う、そんな大きな集団じゃない
 
自問していて既に答えは出ている
 
ただ、それを認めるのが怖かった
それを認めてしまったら
そこに入れなくなった時のショックが大きすぎるから
 
「朋也……」
 
あたしの一番好きな人
あたしの大切な人
 
でもこうなってしまって初めて気づいた
 
あたしは彼の何も知らない
 
友人関係、趣味、家族構成
どうしてバスケットを辞めたのかも
 
そして
朋也の好きな人も
 
一年以上一緒にいて何も知らない
 
 
「ハハッ……当然よね」
 
こんな結果になるのは当たり前だった
あたしは彼に近づこうとしていなかったのだから
 
遠くから見ることに満足したあたしに
都合よくことが運ぶはずがない
 
「もう、駄目……」
「プヒィィ!」
 
えっ? ボタン?
どうしてボタンの泣き声がするの?
 
それに、もう一つ足音がする
 
明らかに人の足音
 
でもその足音も止んだ
 
ザァァァァァ
 
雨脚が強くなってきた
 
雨の音と二人分の呼吸音しかしない
 
あたしは今どんな顔をしているんだろう?
せめて笑顔でいないと
彼に嫌な思いはしてほしくないから……
 
「杏…」
 
あたしの大切な朋也には
 
叶わないかもしれない
 
でも
 
あたしは嫌われてでも彼のそばにいたいと思うから
 
「どうしたの朋也? 傘も差さないでずぶ濡れじゃない」
何もない振りをしてないと駄目……
でも
 
心が先に砕けそう……
 
「杏、どうして傘も差さないでこんなところにいるんだ?」
 
駄目、優しすぎる……
聞きたいことが他にあるくせに気を使ってる
 
「たまには雨に濡れたい時だってあるのよ。
女の子のちょっとした気持ちがわからないなんて駄目ねぇ」
「……わかりたくもないな。そんなに寒そうにして濡れてる気持ちなんてわからないさ」
「それは、ちょっと無茶したくなる時だってあるわよ」
これ以上話してると辛くなってきちゃう……
 
「それに、泣いてるお前を無視なんか出来ないから」
 
そうだった。
朋也は優しいんだった
 
本人が気づかないところで優しいから
無意識で優しいから
 
その優しさが人を傷つけることに気づかないんだった
 
「これは……そう、雨が目に入っただけだから気にしなくていいのよ」
 
明らかな嘘
でも、朋也はこれ以上聞いてこない
あたしが結論を嘘でも言ったから
 
「そうか……」
「うん、だからあたしのことは気にしなくていいから。
そういえば朋也傘持ってないじゃない。あたしの貸してあげるから」
 
とにかく今ははやく朋也の側から離れないと
早く傘を渡して離れよう
 
あたしがあたしを保ててる間に……
 
「はい、帰ったらきちんと身体を温めるのよ」
 
これで終わり
この傘を渡して終わ…
 
「キャッ!」
 
傘が地面に落ちている
傘を渡そうとした瞬間何かに強く引っ張られた
そして、何かの側に今いる
 
ううん、何かの正体はわかっている
ここにはあたし達二人しかいないんだから
 
「ちょっと、朋也離しなさいよ!」
「……嫌だ。離すと走っていくだろう?」
「そ、それは……」
それはそのつもりだったけど
 
どうしてそんなことを朋也が気にかけてるの?
早く離れないと
でも
朋也が温かいよ……
 
「杏、寒くないか?」
「うんん、大丈夫」
 
「そうか…ところで資料室に何か用事でもあったのか?」
いきなりそんな質問されても…なんて答えればいいんだろう
「どうして?」
「いや、あの部屋はもうほとんど物置みたいなものだし、それにあの部屋は
もう宮沢のってあの一緒に居た女の子がいただろう?
あの娘二年生なんだけどあの部屋を自由に使っててさ、昼飯も作れるんだぜ」
 
「……そうなんだ」
「ああ、なんか春原が意気込んでいてさ。
まぁ俺の場合は宮沢には悪いんだが暇つぶしに行ってるって感じなんだけどな」
 
朋也の温もりを感じながら
他の娘の話を聞くっていうのはこんなに辛いんだ…
 
「宮沢は感じ的に妹みたいなもんだから、春原が迷惑かけるのを止めないといけないしな」
 
あの娘は彼女とかじゃないんだ…
妹みたいな感じ………か
 
あっ、駄目
またあたしの中に一つ出来ちゃった
 
「ねぇ、朋也?」
聞いちゃいけないことを聞こうとしてる
「ん?」
 
「朋也にとってあたしはどんな存在なの?」
 
「えっ、それは……」
やっぱり朋也も答え難そう
 
「ごめん。答えにくいよね」
朋也の腕から自分を離す
これ以上朋也の温もりを感じてたら
離れきれなくなっちゃう
 
「杏……俺は」
「いいの、ごめんね」
 
これ以上話てるとまた泣きそうになっちゃう
朋也には見せたくない
あたし達は笑い合える関係なんだから
 
「バイバイ……」
 
だからこの場を去らないといけない
 
 
あたしと朋也のために
 
これからも一緒にいるために
 
あたしは忘れない
 
この短い時間だったけど
 
朋也の温もりを
 
朋也の優しさを
 
だから
 
バイバイ
 
朋也
 
--------------------------------
 
(以下、作者のカツオさんからの後書きです)
 
書き始めるまでが遅かった……
 
どうにか第二話書き上げることが出来ました。
 
今回はあの雨のシーンを思い出させる展開になっています。
 
しかし、ここで宮沢を出すことを予想していた人はどれだけいるのでしょうか?
 
自分を含めて読んだ人の中で3%に満たないんじゃないかと……
 
ただ、ここは宮沢じゃないと駄目なんです!
 
意味はないけど宮沢なんです!
 
これだけの思いをもって登場させました。
 
もういい加減気づいている人もいると思いますが
 
タイトルにはきちんとした意味もあります。
 
そしてそれと同じ関連の意味ある言葉が今回の話でも出ています。
 
単純なんですが……もうばれてますか?
 
あと少し続きますのでご寵愛をいただければ幸いです。
 
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 りきおです。切ない感じで良いですね。
 こういう杏シナリオがあっても良いなあ、と思いました。
 続きは僕も期待しています!
 
 カツオさん、ありがとうございましたw

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