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19   ★another SUMMER (6)<作・ひでやんさん>(Air summer編)
更新日時:
2007.02.08 Thu.
another SUMMER(6)
 
 
 
 どんなことが起きたって、夜の間は何だか少し現実感に欠けるものがある。
 でも朝日を受けた俺たちの姿は酷く泥で汚れていて、そのことが昨日の雨の晩の出来事が事実であることを物語っていた。
 そう。俺たちはあの社殿から抜け出し、今までとは違う生活に身を置いている。
 あの後2日間、ひたすら山道を進み続けたが、幸いにも追っ手の気配を感じることは一度もなかった。
 今までの俺の経験から言って、この状況なら追っ手を撒くことに成功したと考えていいだろう。
 だがそんな不安から解放されるに従って、今度は夏のこの蒸し暑さが俺たちを襲った。
 歩きにくい山道はとにかく疲れるのだ。
 人里近くに降りればもっと楽に歩けるのは間違いないだろうが、そうはいかない。
 観鈴を追っていた奴等が俺たちを見失ったと判断したら、次は俺たちをお尋ね者として探し始めていても不思議じゃない。
 そうなればのこのこと人里に降りてきた俺たちをそこの住人が見つけたが最後、俺たちの居場所は再び敵にばれてしまう。
 だから、俺たちの事を知っている奴がいないどこか遠いところに辿り着くまでは、辛くても人気の少ない山道を進み続けるしかなかった。
 だが、普段動き慣れていない観鈴はこの2日間の疲労と蒸すような暑さのためにくたくただった。
 それを証拠にさっきから口一つ聞いていない。
「…往人さま…ここで少し休みませんか?」
 そんな観鈴の様子を気遣って、美凪がそう提案してきた。
「ああ、そうするか」
 俺の返事を聞くと、観鈴は糸が切れたように座り込んだ。
「…大丈夫ですか?」
「うん、なんとか…」
 美凪は観鈴に水を飲ませながら介抱していた。
「まだ水は残っているか?」
「…いえ、これが最後です」
 その最後の水も観鈴が夢中で飲んでいるので今に底をつくだろう。
 この暑さの中を水なしで歩くわけにも行かないので、どこかで汲んでこないとな。
「この谷沿いに沢があるはずだから俺が水を汲んでくる。それまで二人とも休んでいろ」
 俺は空になった竹筒を受け取ると、それを持って谷沿いに降りていった。
 
 
 
 水汲みから帰ってきた俺を、観鈴の不思議そうな視線が出迎えてくれた。
「往人どの、それ何?」
「麻衣だ。これを着ればこの暑さも少しは楽に過ごせるぞ」
 そう、水汲みから帰ってきた俺の手には3着の麻衣があった。
「…泥棒ですか?」
「…人聞きの悪いことを言うな」
 そう答えたものの、美凪の予想は当たっている。
 なかなか沢が見つからず里の近くまで降りてみると、籠に入った麻衣を沢の近くで見つけたのだ。
 持ち主は何かを思い出して一旦家に戻ったのか、辺りを見回しても人影はなかった。
 なら、天からの恵みと思って持ち帰るのが当然だろう。
「じゃあ、ちゃんと持ち主の人から譲ってもらったんだね?」
「まあな」
 盗んできたなんて言ったら何か言われて面倒になるだけだろうから、俺は適当に答えておいた。
 観鈴は素直に俺の嘘を信じたようだが、一方の美凪はどうやら嘘を見破っているようだった。
 だが美凪も今の格好では暑さでこの先身が持たないだろうと分かっているのか、それ以上俺に追求する気はないようだった。
「ほら、早く着替えろ」
 そう言って俺は麻衣を二人に渡した。
「あれ? 何か袖に入ってる」
 観鈴が袖の中を探ってみると、何かを詰めて布で縫い合わせたような楕円形の物体が出てきた。
「お手玉だな」
「何、お手玉って?」
「子供の遊びに使う道具だ。その3つの玉を地面に落とさないように空中に順々に投げて遊ぶんだよ」
「へぇー、そうなんだ。ねえ往人どの、やってみて」
 観鈴は、はいっ、と俺にそのお手玉を渡してきた。
「ふっ…俺の上手さ驚くなよ」
 ちなみにお手玉なんて一度もやったことはない。
 だが所詮は子供の遊び。俺にかかれば3個だろうと5個だろうと訳無いぜ。
 そんな自信と共にお手玉を宙に投げた。
 1つ、2つ…
 どうだ、この順調な滑り出し。
 お手玉が舞い上がる高さも完璧だ。
 そして3つ目が宙に舞い上がったとき…
 …ぽてっ
 最初に投げたお手玉が俺の左手に戻ってくることなく地面に落ちた。
 …ぽてっ…ぽてっ
 最初の1つを追うように、残る2つも次々と地面に落ちた。
 …ああ、何だかやけに蝉の声がうるさいな…。
「もしかして初めてだった?」
「…うるさい、聞くな」
 あまりの恥ずかしさに俺は観鈴から顔を背けた。
 そんな俺たちの間に、すっ、と美凪が割って入ってきた。
 もちろん、いつものように気配なしで。
「…こうやるんですよ」
 お手玉を受け取った美凪は慣れた手つきでそれを握ると、それらを次々と宙に放った。
 美凪の手の中から順序よく次々と空に舞っていくお手玉たち。
 その見事な手つきに、俺と観鈴は言葉も忘れてしばらくの間見入っていた。
「…はい、おしまい」
「すごい、美凪! まるで手品みたいだったよ」
「ああ。お前、お手玉慣れてるのか?」
「…ええ、まあ」
「ねぇ美凪、わたしにもお手玉のやり方教えてもらえるかな?」
「…」
 目を輝かせながらせがむ観鈴と目を合わせたまま、美凪はその動きを止めた。
「?」
 観鈴もその様子を不思議に思って美凪に声を掛けようとしたが、それより先に美凪の唇が動いた。
「…いいですよ」
 …何だったんだ、さっきの間は?
「…でも、往人さま。…ここで時間を潰してしまっても良いんですか?」
「ああ。もう追っ手から逃げ切れたみたいだし、今までの疲れを取るのにもちょうどいいだろう」
 そう言って俺は腰を下ろした。
 それを合図に美凪と観鈴は表情を和げると、早速、美凪によるお手玉教室を始めた。
 その様子を見ながら、こんなにも気を緩めたのは社殿にいたとき以来だなと思った。
 こうして気を抜いてみると、何だかんだ言って俺も疲れているのが分かる。
 つい最近までは戦で敗走してこんな生活を送っていたこともあったというのに、あの社殿に配属されてからは呑気な生活を送っていたから体がなまってしまったのかもしれない。
 俺は首を鳴らしながらこれからのことに考えを巡らせてみた。
 取り敢えず、俺たちは追っ手から逃げ切ることが出来た。
 でもそれは俺たちの目標への第一歩でしかない。
 俺たち3人がいつまでも一緒にいるためには、まずは落ち着いて暮らせる場所を探さなくてはいけない。
 その場所を見つけるためにはどれくらい遠くへ行かなくてはならないのだろうか?
 どれくらいの旅を続けなくてはいけないのだろうか?
 改めて考えてみると、なかなか先が長くなりそうな話だ。
 俺は担いできた袋から翼人に関して記してある書物を取り出した。
 例の噂を信じているわけではないが、だからと言って全く気にならないわけではない。
 それに、俺は翼人について何も知らなかった。
 だから翼人についてある程度の知識が得られれば、今は漠然としている何かが少しは分かるんじゃないかと思っていた。
 そんな期待を込めて本を開いた。
 …
 ぱたっ
 読書時間60秒。
「…ふっ、今日はこの辺までにしといてやる」
 俺は文章の難しさに負けて本を読むのを諦めた。
 持ち出す時には少し目を通して選んでみたものの、いざ集中して読んでみると面倒でとても読めた物ではなかった。
 大体、本が古い。
 こんな古臭い文章を俺に読めという方が無理な話だ。
 ぽすっ
 軽い衝撃を伴って、俺の頭の上に何かが落ちてきた。
「ごめん、読書の邪魔したかな?」
 顔を上げると向こうから走ってきた観鈴が見えた。
 どうやら観鈴が練習していたお手玉がここまで飛んできたらしい。
「お前な、どうやったらこんなにも見当違いなところにこれを投げられるんだ?」
「そんなひどいこと言わなくても…。それに往人どのだってお手玉下手だった」
「何っ!? おい、それを貸せ! 俺の腕前がお前とは全然違うことを見せてやる!」
 そんな感じで、いつの間にか観鈴と一緒にお手玉の練習をする羽目になっていた。
 …まあ、いいさ。
 俺たちには十分すぎるほどの時間が用意されているんだからな。
 
 
 
************
 
 
 
 追っ手の恐怖から解放された今では、社殿にいた頃とは全然違う生活をしているということを除いては、実に呑気なものだった。
 だから当然、警戒心というものは次第に薄れていく。
 警戒心が薄れていくということは…
「う、うわあぁっ!」
 俺は目覚めと共に派手に転がると、その辺にあった岩に頭をぶつけた。
「っっ…おい、美凪! 目が覚めて最初の光景に超至近距離で現れるなっ!」
「…往人さまの寝顔がかわいかったので、つい」
 つい、って何だよ?
「美凪、準備が出来たよー!」
 離れたところから元気の良い観鈴の声が聞こえてきた。
「何だ、準備って?」
「…朝食の準備ですよ」
 そう言って美凪は観鈴のもとへと走っていった。
 美凪が向かう先には、空に立ち登っていく一筋の煙。
 ああ、そういうことか。
 つい昨日までは追っ手に見つかるのを避けるために焚き火をすることはなかったが、今日からはそれを安心してすることができる状況になっていた。
 そして昨日までの逃走で、社殿から持ち出してきた乾飯などの乾物はもう底をついていた。
 なら、何かを調理して食べようというのがもっともな考えだ。
 さっきの騒ぎでしっかりと目が覚めた俺が二人のもとに着いたときには、簡単に組み上げられた小枝に勢いよく炎が燃え上がっていた。
「なかなか上手いな」
「美凪が着けたんだよ。ほんと、上手いよね」
「…えっへん」
 観鈴の褒め言葉に小さく胸を張る美凪。
 野外で焚き火をすることに慣れている俺でさえ感心するのだから、観鈴にとっては美凪の仕事ぶりはまるで魔法のように思えたのだろうなと、観鈴の少し興奮した様子から想像がついた。
「で、火を着けたのはいいが、何を焼くつもりだ?」
 そう、火を着けても食材がなければ飯は出来ない。
 飯が出来なければ、いつまで経っても腹は減ったままだ。
「…じゃん」
 そう言いながら美凪は米の入った小さな釜を俺の目の前に差し出した。
「…何でこんな物がここにあるんだ?」
「うん、わたしもびっくり。いつの間にか美凪が持ってたんだ」
 米ならまだ分かる。だが…
「というか美凪。こんな釜、どこに仕舞ってたんだ?」
「…秘密です」
 美凪はちょっと嬉しそうに答えながら、その釜を火にかけた。
 …やはりこいつの行動は謎だ。
 米が炊きあがる間、俺たちは火種となる小枝を火にくべていた。
 女官である美凪はさておき、観鈴にとって焚き火をするのは初めての事だったらしく、始終わくわくした様子を見せていた。
 放っておくと、火が消えてしまうぐらい枝を積み上げていくんじゃないかと思うほどに。
 そんな様子を見ていると、観鈴を社殿から連れ出してきて正解だったなという実感が湧いてきた。
 しばらくして、米が炊き上がったいい匂いが漂い始めた。
 ぐう〜
 その匂いに釣られて、俺の腹が正直に声を上げた。
 社殿から逃げ出してきてからというもの、まともなものを食べていなかった。
 そこに普段でも貴重な米が出されれば腹の虫が騒ぎ始めるのも当然というもの。
 炊きあがったご飯が配られると、俺はすぐさまその銀色の輝きに勢いよく食いついた。
 …うおっ! こんなにも米を上手いと感じたのは初めてだ!
 そんな感想が俺の食欲にますます火を着け、気が付けば俺は速攻で飯を食い終えていた。
「往人どの、もっとゆっくり食べればいいのに」
「ゆっくり食ってたって、飯が冷めるだけだ」
 そんな様子の俺を見て、美凪は満足そうな顔をしていた。
「お前、米を炊くのが上手いな」
「…いいえ、空腹は最高の調味料と言いますから」
 美凪は俺の褒め言葉を謙遜してみせた。
 だが確かに美凪の言葉にも一理ある。
「…それに、日本人はお米族」
 残念ながらこちらの方は俺の頭では理解できなかった。
 意味不明なことをしみじみと言う美凪を見ていると、一体何時になったらこいつの思考を理解できるようになるのだろうかとつくづく思う。
 今後、こいつと一緒に生活していく上での課題だな。
 …むしろ、理解しようと思うことの方が間違いなのか?
「それにしても、お米なんてよく社殿から持ち出してきたね」
「…蔵にたくさんあったので、仕事をするふりをしてちょっと取ってきちゃいました」
「やっぱり盗んできたんだな」
「…もともと観鈴さまにお出しするためのものですし、問題ないです」
 そうきっぱりと答える美凪。
「…美凪、お主も悪よのう」
「…いえいえ…観鈴さまをあそこからさらい出してきた往人さまにはとてもとても…」
 美凪が泥棒扱いだったら、俺の方は誘拐犯扱いだった。
 しかしあの社殿でさえ、米は貴重な食料に違いなかった。
 あそこでは位が高い方だった俺も、白米にありつけるのは数日に1度の割合だったのだから。
「しかし逃げ出してきて最初に食ったまともな飯が白米だと、これから先の貧相な飯に思いを馳せる度に悲しくなりそうだな」
「…安心して下さい。…まだ、いくらか残ってますから」
 美凪は自分で持ってきた袋を開いた。
 ごそごそごそごそごそ…
 凄い速さで何かを漁っている。
 ごそごそ…ぴたっ
 おお、止まった。
 …ごそごそごそごそごそ…
 何事もなかったようにまた漁り始めたな…って、俺は何を解説しているんだ?
「…じゃん」
 どさっ!
「わっ、すごい量!」
 驚きの声を上げる観鈴の目の前には、美凪が持ってきたという米袋が軽く山積みになっていた。
「…凄い?」
 美凪は期待を込めたような眼差しでちらっとこちらを伺った。
「うん、すごい!」
「…びっくり?」
「ああ、びっくりだ」
 びっくりしたのはお前自身にだがな。
 というより、これだけの米をどうやってあの大きさの袋の中に仕舞っていたのだろうか?
 …駄目だ。深く考えれば考えるほど、こいつの背後に広がる未知の世界に呑み込まれてしまいそうな気がする。
「それにしても美凪ってすごいよね。必要な物はいつの間にか用意してあるし、料理も裁縫も上手だし」
 どうやら美凪は裁縫まで上手らしい。
「…そんな事はないですよ。…女官として当然のことですし」
「へぇー、女官の人達ってそんなにもすごいんだ。…それじゃあ、わたしなんかとても女官にはなれないなぁ」
「…大丈夫…観鈴さまも練習すれば料理とかできるようになります」
「そうかなぁ?」
「…はい。…もし観鈴さまがよければ、明日から少しずつ教えましょうか?」
「本当!? じゃあお願い。わたし、頑張ってみる」
「ああ、精々頑張れよ。ちゃんと出来るようになるまでに何年かかるか楽しみだな」
「往人どのの意地悪…」
 
 
 
************
 
 
 
 次の日も観鈴は美凪にお手玉を教わっていた。
 俺も翼人に関する書物を数分ほど読んで根気負けした後、その練習に加わった。
 観鈴にあれだけの見栄を張ってしまった以上、何としてでも観鈴より先にお手玉を回せるようになりたいと思ってはいたものの、なかなか思うようにはいかなかった。
 自分はそこまで不器用ではないと信じていただけに、ここまで下手だとさすがにへこんでくる。
「ねぇ、美凪。なにかコツとかはないのかな?」
 観鈴はなかなか上手に出来ないことに耐えかねて、美凪に助けを求めた。
「…もっと肩から先の力を抜いてみて下さい」
「こんな感じかな?」
 そう言って手をぶらぶらさせてみる観鈴。
「…はい、そんな感じです」
 そう言って観鈴と同じように手をぶらぶらさせ始めた美凪。
「異様だから止めてくれ」
 俺は唯一人残った正常な思考の持ち主として二人を諭した。
「そんなこと言わずに往人どのもやろう。面白いよ」
「いや、そんな仕草をしながら言われても説得感がないからな…」
「…やらないんですか?」
「ああ、やらない」
「楽しいよ?」
「楽しくない」
「…じーっ」
 …やるしか、ないのか?
 俺は観念し、二人に合わせて手をぶらぶらさせてみた。
 ぶらぶら…
 …ぶらぶらぶら…
 ……ぶらぶらぶらぶら…
「だーああぁっ! こんなこと続けてられるかっ!」
 俺は耐えかねて叫んだ。
「大体、こんなことをしたからって上手くいくわけ無いだろっ!」
「そうかな? なんだか肩の力が抜けて上手くできそうな気がするよ」
 その効果を試すべく、観鈴はお手玉を宙に投げた。
 お手玉が綺麗に宙を舞った。
 そしてお手玉達は追いかけっこをするように、観鈴の手の中に戻っては、また空へと向かっていった。
「あっ、できた!」
 観鈴が嬉しそうにそう叫んだ瞬間、つい気がゆるんだのか、お手玉は地面に落ちてしまった。
「が、がお…残念」
 少し回っただけで終わってしまったのが残念だったのか、観鈴は肩を落とした。
「…でも、お見事でした…ぱちぱちぱち」
「ありがと。ねえ、往人どのも見たよね?」
「…」
「往人どの?」
「…」
「ねぇ、往人どの?」
「貸せっ! お前に出来て俺にできないはずがないっ!」
 一時的な精神的打撃による思考の停止から復帰した俺は観鈴からお手玉を奪い取った。
 ああ、そうさ。俺に出来ないはずがないっ。
 1つ目を投げた。
 そのお手玉が宙に舞う。
 すかさず2つ目も放る。
 こちらも申し分ないころあいで宙に舞っている。
 そして…
 …
 ぽてっ…
 お手玉は地面に墜落した。
「ぐはっ…」
 そして俺も両手を地面に突いて撃沈した。
「…観鈴さまの勝ち」
「わーい、往人どのより先にできたっ」
 喜ぶ二人の声が俺をさらに惨めな気分にしてくれた。
「…大丈夫ですか?」
「…全然大丈夫じゃない」
「往人どのも真剣に練習すれば出来るようになるよ」
 もう自分は出来たからか、観鈴は無責任そうに笑っていた。
「何で俺が真剣にお手玉の練習なんかしなきゃならないんだ?」
 そう、俺にはそもそもお手玉をする理由なんかなかったはずだ。
「だって、往人どのだけまだ一度もお手玉回せてないもん」
 ぐさり!
「…あ、傷ついた」
「傷つくわっ!」
「にはは。でも、往人どのや美凪は焚き火ができるけど、わたしだけまだできないんだよね…」
 そうだ、別にお手玉だけが全てじゃない。
 お手玉が出来なかったぐらいでどうってことは…
「…でも、出来た方が良いと思いますよ…お手玉」
 ずごん!
「あ、また傷ついた」
「…まあまあ、気を落とさずに」
「お前が原因だろっ!」
 ここはもう社殿の中ではなかったけど、俺たちはあの頃のように…いや、あの頃以上に温かな時間を過ごしていたのだった。
 
 
 
                   −7話に続く−
 
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<ひでやんさんより後書き>
 
 美凪編にも関わらず、主人公は相変わらず往人のままの第6話はいかがでしたでしょうか(笑)。
 
 今回は律儀にSUMMER編のお手玉ネタを使って、社殿の頃の札遊びの雰囲気を思い出すような場面を描いてみたつもりです。
 
 思えばこの作品でほのぼのとしたシーンを書くのは久しぶりなんですよね。
だらだらと書いていたら文字数が予定よりも多くなってしまいましたが、今回はそういうのんびりだらだらな話を書きたかったと言うことで(汗)。
 
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 ひでやんさんより続編をいただきました。
往人のドン臭さが際立っていましたね(汗)
 
 感想などあれば、
 
「Web拍手」「掲示板」「新・SS投票ページ」
 
などへどうぞ。

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