3.未知なる世界へ /おにやん
同人。どうじん。同一の人。同じ志の人。仲間。
同人雑誌。同人誌。主義・傾向・趣向などを同じくする人たちが共同で編集発行する雑誌。
パタン・・・。
「はぁ・・・」
今日何度目かの溜息と共にこれまた何度目かの辞書を閉じる音がした。
眠れない。眠れるわけがない。
「貴女、コスモス文庫結構読んでるじゃない? 人は多くの物語を読むと自分でもストーリーが浮かんでくるらしいのだけど? 令はどう?」
「はぁ・・・ まぁ、確かに・・・」
覚えはある。確かに多くの作品に触れることで、頭の中に簡単な筋書き程度のモノが浮かんでくることは。
でも、大概はすぐに忘れてしまう。軽い妄想程度の事で、私は特に気にしてはいないけど・・・。
パラッ・・・。
「それを形にしてみない?」
「・・・はぁ?」
「新しい物語が生まれているのに、それを形にしないのって、すごく勿体ない事だと思わない?」
「・・・そう、ですね」
「そうよね! よかった、令ならきっとそう言ってくれると思ったわ。じゃあ、後程、詳細を知らせるわね」
そう言ってお姉さまは風のように去って行った。
今思えば、あれはお姉さまに上手く乗せられたのだ。あれじゃあ、否定のしようがないじゃないか。ホント、お姉さまは・・・。
「やっぱり敵わないなぁ・・・」
コンコン。
「はいよー」
「令ちゃん、数学教えてー」
・・・この話は、由乃にはしない方がいいよね? 由乃ってばお姉さまの事になるとムキになるから。
「少しは自分で考えなさいよ」
「むー。考えて解かんなかったから来たんだもん!」
「まったく、仕方ないなぁ・・・」
「さすが令ちゃん! 話せるぅー」
パタン・・・。