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2.新手の宗教勧誘 /kousi



「お、お姉さま・・・っ?」

 思いもかけない訪問者に、リリアン女学園の黄薔薇さまロサフェティダである支倉令は頓狂な声を上げた。

「久しぶりね、令」

 令とは対照的に訪問者は柔らかに微笑む。
 見紛う筈もない。そこに佇んでいたのは、前黄薔薇さまこと支倉令の姉、鳥居江利子さまの姿だった。
 相変わらずトレードマークのヘアバンドは変わっていないようだ。

「ど、どうなされたんですか・・・?」

 最初の対峙よりかは多少落ち着いてきたとはいえ、若干声が上ずっているのは否めなかった。
 しかし無理はない。すでに夕暮れ時は過ぎており、早や辺りは闇に染まりかけている。何より、時間帯以上に、江利子さまが令の家を訪れる理由が思いもつかないのだ。

「あら? 理由もなく訪ねてはいけなかったのかしら?」
「いえ、そういうわけでは」
「ならいいじゃない。久しぶりに妹の顔が見たくなったってことで」
「は、はあ・・・」

 気のない答えを返す令だったが、そんなはずがないことくらいはすでに理解していた。
 これでも江利子さまの妹を何年もやってきたわけだから、江利子さまが理由もないのに令の家を訪れることなどあるはずがないことくらいすぐに分かる。
 つまり、何か理由があるはずなのだ。
 「久しぶりに顔が見たくなった」以上に納得できる、この時間、令の家に来なければならない理由が。

「こんなところでもなんですし、中でお話しましょうか?」
「いえ、遠慮しておくわ。ご迷惑になるでしょうし」

 江利子さまはキッパリと断った。けん制を投げてみたのだが、反応を見るにどうやら長い話ではないらしい。
 じゃあ、なんだ。
 山百合会について? 一番ありそうだけど、相手が江利子さまである以上一番ない選択肢。
 由乃について? いくら江利子さまでも・・・いや、あるか?
 私生活について? ・・・そんなバカな。
 令の頭の中で、ぐるぐると色々な想像(妄想)が渦巻く。
 そして。
 他愛ないやり取りの中、江利子さまの口から出た言葉は、令を驚かせるには充分だった。

「令。貴女、同人というものに興味はあるかしら?」
「は?」

 ―――それ、何の宗教ですか?




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