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22.おいしいクッキーの作り方 1 /kousi



 さすが黄薔薇さまロサ・フェティダ・・・。まずそう思った。
 場所は黄薔薇さまロサ・フェティダ宅の台所。開口一番、黄薔薇さまロサ・フェティダが言ったセリフとはこれだ。

「じゃあ、何作る?」

 何って、クッキーじゃないんですか―――?

 言いかけた言葉を寸前で飲み込む。何故と問われれば簡単な話、黄薔薇さまロサ・フェティダがテーブルに積み上げた雑誌、それら全てが「クッキー」というものの専門誌だったのだ。
 ページの間から付箋がいくつも覗いている雑誌の表紙には女の子向けらしい装飾された文字が躍っている。それが「ソフトクッキー」なら、なんとなく意味を察することが出来るのだが、「ショコラのサブレ」だの「チョコレートのテリーヌ」言われた日には、悲しいことにもはやどういう形をしているのかさえ理解できない。

 く、クッキーってこんなに種類あるの・・・っ!?

 思わず立ちくらみ。
 普段からそんなものには気にもかけず仏像ばかり追いかけていたのが悪かったのだろうか、クッキーなんか食えりゃいいと思ってる自分にとって、柔らかかろうが硬かろうが丸かろうが四角かろうがどうでもいいのだ。
 きっと、気付かないだけで、これらが私の口に入ったことはあるのだろう。現に菫子さんは妙に気が若いからこういうシャレたものを良く買ってきているし。
 こんなもの、いくら練習したって作れる気がしない。下手をしたら志摩子さんの顔まで潰してしまうかも・・・。
 そんな、内心一人で焦っている私の気持ちなど察するはずもなく、おもむろに由乃さまが雑誌のページの中から一つを指差す。

「令ちゃん、私これ作りたい」

 その先には素人目から見ても難しそうな代物・・・って、難易度マックス!? いきなり何言い出してんだ、あんた!

「え? それ? 私でも結構難しいよ」
「いいじゃない。そっちの方が作りがいがあるでしょ」
「うーん・・・」

 全然よくないですよ。黄薔薇さまロサ・フェティダも悩んでないでもっとガツンと言ってあげて下さい。
 立場上、口に出せないので心の中で応援。
 すると、見かねたのか、横合いから助け舟を出す紅薔薇さまロサ・キネンシス

「そんなに手の混んだものを作る必要あるのかしら?」
「むっ、祥子さまは口を出さ・・・」
「そうね・・・じゃあ、今回はシンプルな型抜きクッキーでいいかな」
「って、令ちゃん!」

 結局、鶴の一声で最後は紅薔薇さまロサ・キネンシスの言葉どおりに事が運ぶことになった。横では由乃さまがまだ何かぶちぶちと文句を言っていたけど。
 紅薔薇さまロサ・キネンシスの発言は、今の私にとって仏様、もとい天使に思えた。




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