20.お祭り騒ぎ /kousi
クラスメートの子たちから聞いた情報は、予想していた以上に魅力的なものだった。
新聞部と山百合会が主催となって行われるイベント。てっきり薔薇さま方絡みのものだと決め付けていたが、どうやらそうではないらしく、メインは薔薇のつぼみだとか何とか。
それはつまり、当然のことながら紅薔薇のつぼみである福沢祐巳さまにもスポットが当たるということ。そんな情報逃すわけには行かない。
「そ、それって、どういうイベントなんですか!?」
「え? 詳しくは新聞部の正式な発表を待たなければならないんですけど・・・」
そう前置きして話してくれたのだが、そんな前置きは無きに等しいほど、彼女はイベントについてよく知っていた。
曰く、一年生対象のアンケート。
曰く、理想のお姉さま。
曰く、投票対象はつぼみ。
その他云々、どういう情報網を持っているのか、ちょっと気になるところだった。
一年生対象。理想のお姉さま。
この二つのキーワードが頭の中で短絡的に結びつき、妄想の中で、ステージ上で祐巳さまと一緒になって観客に向かって手を振る自分の姿を思い描く。何故か頭には王冠。
ちょっと冷静に考えれば、単なる「アンケート」なので、そういう風なイベントではないことなどすぐに理解できたはずなのだが、その時の私は、頭のネジが一本くらい飛んでいたのかもしれない。
「これは・・・もしかして、今までの失敗を全部チャラに出来るほどのイベント!?」
チャンスだ。
いったい何のチャンスかはわからないけど、とにかくこれはチャンスに違いない。
私は心の中で、グッと拳を握った。