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19.影の功労者 /おにやん



 某日、リリアン女学園高等部敷地内新聞部部室。

 一体あの人は何を考えているんだ・・・。
 いや、何も考えていないからこんな愚行を強行できるんだ。そうに決まっている。

「はぁ・・・」

 遡ること約六時間、昨日喫茶店で二時間も妹の説教を食らい、トボトボとこの世の絶望を背負ったような落ち込みようで帰っていった私の姉が、完全復帰して・・・いや、むしろパワーアップして私の前に現れた。

「真美!」

 昨日の絶望はどこに捨ててきたんだろう・・・。この人はホント立ち直りだけは早いんだから。

「・・・却下します」
「ちょっ、ちょっと! 何も聞かずに却下するのはあんまりじゃない?」
「どうせ後々却下になる運命なんです。だから、手間を省いて差し上げたまでです」
「ホント可愛くないわねぇ〜 ちょっとは他の姉妹を見習いなさいよ」
「そのご忠告、そっくりそのままお返しいたします」
「いいから聞いて頂戴! これから忙しくなるんだから!」

 ・・・さて、問題です。今回、一番の被害者は誰でしょう?

「はぁ・・・」

 さっきから溜息が止まらない。・・・というか

「何で私が? ねぇ? なんで?」

 まったくもって理解できない。なぜ山百合会に出す企画書を私が作成しなければならないの?

「真美、あなたは私の妹でしょ? 姉の苦労を労うのが妹の仕事ではなくて?」

 なんじゃそりゃ。苦労させられてるのは私の方で、本来姉は妹の見本になるべき存在ではないのだろうか?

「大体何よ、この“第一回 理想のお姉さまコンテスト”って・・・。こんな企画書、山百合会に通るわけないじゃない。一体何を考えているんだか、私のお姉さまは・・・」

 『一年生対象のアンケート投票型の企画で、理想のお姉さま像のつぼみに投票する。尚、投票日を決め、その日以前にリリアンかわら版にて、つぼみの独占インタビューを公開する。』
 ・・・祐巳さんも由乃さんも、大変ねぇ。・・・っと他人事じゃないわね。この企画を通したら、新聞部から完全に引退するって宣言書を書かせたんだから。・・・意地でも通して見せるわよ。




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