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18.きばらさんち /kousi



 祥子の言い分には充分筋が通っているし、私も同じような印象を受けたので、薔薇の館ではあえて口を出さなかったのだけど・・・。
 こうなってみたらもうちょっと庇ってやった方が良かったかなと思う。

「う〜・・・」

 隣で唸る由乃。あれからさらに、祥子に正論を並べ立てられたのだ。心中察して余りある。
 祥子と由乃が言い合って、まだ1時間も経っていない。そのせいもあってか、帰り道は非常に殺伐とした雰囲気になっていた。と言っても、殺伐としているのは由乃だけだったけど。

「それでは・・・令さま、由乃さん、ごきげんよう」

 志摩子が由乃に挨拶をし、妹である乃梨子ちゃんもそれに倣う。バスに乗らない私たちは、校門まで来たら白薔薇姉妹とはお別れである。こちらが「ごきげんよう」と返すと白薔薇姉妹は去っていった。
 ちなみに紅薔薇姉妹はと言うと、仕事が残っているという理由でまだ薔薇の館に残っている。
 つまり、ここに残るは私と由乃の二人きり。

「うー」

 心なしかさっきより唸りが大きい。周りに人がいなくなるのを見計らっていたみたいだった。少し俯き、肩を震わせる由乃。
 あ、ダメだ。このパターンは。
 危険な予感を察知し、由乃から少し離れてさっと身構える。

「うがー! 何なのよ、もう!」

 大方の予想通り由乃火山は噴火した。間髪いれずに私に向かって飛んでくる鞄。いいかげん慣れたので難なくそれはキャッチするが、それがまた由乃の気に障ったようだった。

「何で受けるのよ!」

 どうしろというのだ。まさか当たれと?

「由乃ぉ、いい加減に聞き分けよくなってよ・・・」
「聞き分けぇ? フン。どうせ私は令ちゃんや祥子さまみたいに優等生じゃないわよ」
「またそういうこと言う・・・」

 よっぽど先ほどの事を根に持っているのか、プイ、とそっぽを向いて頬を膨らませる由乃。
 コレは先長いな・・・。長年の経験がそう判断する。由乃の鞄と自分の鞄を抱え、はぁ、と心の中でため息をついた。
 家に帰りつくまで十数分間。私にできることは、少しでも由乃の怒りを鎮めることだけだった。




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