14.哀愁の並木道 /kousi
肩を並べ歩く姉妹。ここリリアン女学園で一番自然なはずのその光景は、話の中身という点においてのみ異質だった。
「だいたいお姉さまには良識というものが足りません。毎回毎回、ネタの裏も取らずに企画を立ち上げることばかりに気を取られて・・・」
ぐちぐちぐちぐち。肩を落とす私を慰めるどころか、さらに塩を塗りこんでくる真美。妹が姉を叱るというのもまた異質な光景に違いない。
はぁ。
ため息を一つ。先ほど薔薇の館でこれ以上ないほどやり込められた姉を見たら、普通慰めるのが筋であり、妹の道ではないのだろうか、なんてことも思うわけだけど。
しかし反論する術もなく、自然と歩幅は小さくなり、今や真美の後ろを俯きながらとぼとぼと歩くのみだった。
「お姉さま? お姉さま、聞いてますか? 」
「うっさいわね、聞いてるわよ」
半ばヤケの返事。慣れたもので、そんな返事に対しても真美は表情をまったく変えなかった。
「そもそもあんな情報、どこから仕入れてきたんですか?」
「え? あの情報? えっと、山百合会に入り浸ってる一年の・・・。ホラ、あの背の高い子と縦巻き」
「ああ、細川可南子と松平瞳子ですね」
山百合会の情報は完全にインプットされてるのか、即座に返してくる真美。フルネームで呼んだのはある意味職業病か。
「で、その二人がどうしたんですか?」
「その二人がちょっとした口論してるのを見かけたんで、物陰に隠れて聞いてたのよ」
負い目などない、と胸を張って答える。
頭痛でもするのか真美は軽く頭を抑えて首を振る。
そして一言。
「盗み聞きのスキル上げる暇があるなら受験勉強でもしててください、元編集長」
情の一片も通わないような冷徹な一言に、今度こそ私のテンションは奈落の底に落ちていった。