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31.星空 /おにやん



 目の前には、お姉さまの不思議そうな顔。まるで違う世界に迷い込んでしまったかのように驚いた顔をしている。

 お姉さま、どうしたのですか?

 そう、言おうと口を開いても肝心の言葉は出てこなかった。

 どうして声がでないのだろう?

 何度も何度もお姉さまに声をかけようとするが、声が出てくることは一向になかった。
 私が声を出そうと悪戦苦闘しているうちにお姉さまは音もなく椅子から腰を上げて歩み寄ってきた。

 お姉さま?

 お姉さまは痛そうな顔をしてさらに近寄ってきた。

 お姉さま、どこか痛いのですか? 困ったことでもあるんですか? 私、お姉さまのためなら・・・

 そっと、お姉さまは私の頭を自分の胸に埋めた。

「もう・・・、日が暮れるわね」

 お姉さまの声はどこか淋しげで、それでも暖かかった。
 あっ・・・、私・・・泣いてるの? でも、嫌な涙じゃなかった。



 長い長い夏は、これから始まる。
 また、想い出が増えていく。
 悲しいことも楽しいことも、嬉しいことだって、淋しいことだって、お姉さまがいれば、みんながいれば

 きっと・・・



 空には、都会だと言うのに多くの星が輝いていた。
 今、この空を眺めている人はどれくらいいるのだろう?

「今年も来るのかしら?」

 ううん!来て欲しいなんて思っつれわけじゃない。私はあの人のお姉さまに会いたいんだから!

「・・・なんで自分に言い訳しなきゃなんないのよぅ」

 全部あの人のせいだ。私が変になったのは、絶対あの人のせいだ。

「・・・祐巳さま」

 少女がため息と共にこぼした声は、空の闇に溶け込んでいった。



<<ぷちリレー 終了>>




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