27.迂闊 /おにやん
久しぶりに会った江利子さまとの長い話しも終えて、教室に戻ろうとしたとき恐ろしい音が聞こえた。
「・・・そういえば昼休みだった」
ちなみに今日の午後の授業は1つ。つまりこれから数分後にホームルームが行われるわけだ。
「最悪」
肩を落としてみてもなにも変わらない。とにかく急いで教室へ戻ることにした。
* * *
「保健室にでも行っていたの?」
教室に戻るなり由乃さんからお声を頂いた。
「いや・・・あの・・・つい」
なんとかうまく誤魔化そうと頑張った。
「・・・まさか祐巳さん、午後の授業忘れてたの?」
「忘れていたわけじゃないの、ちゃんと国語の教科書持ってきてるもの」
「・・・なにかあったわね?」
由乃さん鋭すぎ。江利子さまと話してて、気付いたら終わってたなんて言えるわけないよぉ〜。
「祐巳さん」
突然、由乃さんの顔が笑顔に変わる。それと同時に両手で私の手をぎゅっと掴む。
「私たち、友達だよね?」
いつもの鬼気迫る顔で聞かれるより数倍威力がある。こんな状態の由乃さんに逆らえるほど大きな心臓を有していない私は、泣きながら事情を話すことになるのだった。
「じゃあ、ホームルームの後で」
「ええ。楽しみにしてるわ」
丁度いいタイミングで先生が来たので、助かったけど、今のうちに上手い言い訳を考えておかないと。
しかし、世の中そんなに上手くは行かないものだと、改めて思い知らされてしまった。
江利子さまを聖さまに置き換えて上手く話したつもりだったんだけど・・・
「祐巳さん、今回はまぁまぁだったわ」
話し初めて数分で肩を叩かれる。
「え?」
「で、本当は何があったの?」
だから由乃さん、なんであなたはそんなに鋭いの?
「ど、どうしてわかったの?」
「やっぱり」
「えっ? えっ?」
やっぱり? やっぱりってどういうこと?
「祐巳さん、絶対嘘つけないタイプね。もう諦めた方がいいわよ。たった一回のカマかけで落ちるようじゃ」
カマかけたんだ・・・
「・・・負けました」
「よろしい」
由乃さんは絶対敵に回しちゃダメだ。