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23.真相 1 /おにやん



「お姉さま、事情を説明して頂けますか?」

 祥子さまの声に誰もが頷く。

「その前にその方の介抱が先ではないですか?」

 志摩子さんが床に伏している哀れな男に手を差し伸べようとした。

「おっと、いいよ。コイツは私が気合いを入れてやるから」

 そういって聖さまは男の肩を持ち上げ背中に膝を入れる。

「ほっ」

 グギッ

 恐ろしい音が辺りに響く。

「お、お姉さま・・・?」
「あれー? おかしいなぁ〜 ドラマとかでこーゆー風にして起きたと思ったんだけど」

 聖さまは悪びれた様子もなく頭を掻く。

 ドン

「あ・・・」

 その表紙に男が顔面を床に打ち付ける。これでは暫く気絶したままだろう。

「聖。お願いだからこれ以上、手間を増やさないで頂戴」

 蓉子さまが額に手を当てて、ため息を吐いた。

 伸びた男を部屋の隅に転がし、私と志摩子さんとでお茶を入れた。
 いつも祥子さまが座っていた席に蓉子さまが座り、私たちもいつもと違う場所に座った。

「ふぅ・・・」

 蓉子さまは紅茶を一口含み、間をおいてから口を開いた。

「あなたたちには、まだ伝わってないと思うのだけれど」
「江利子さまのことですか?」

 突然、由乃さまが声をあげた。

「よ、由乃さん!」

 祐巳さんが慌てて立ち上げる。

「祐巳」

 それを祥子さまが一声で座らせる。うん、いつもの山百合会だ。

「そう、二人は知ってるのね」
「あの、お姉さまに何かあったんですか?」

 令さまが小さく挙手をする。

「まぁ、落ち着いて聞いて頂戴。順を追って話すから」

 蓉子さまの話し方は巧みだった。ただただ感心してしまうほど。
 要するに、令さまのお姉さまの江利子さまが交際してる花寺の先生が休暇を取ってオーストラリアへ化石の発掘へ行ったという情報を、どう やってか江利子さまは入手し、誰にも言わずに追いかけて行ってしまったそうだ。

「まぁ、一応向こうに着いたときに家には電話を入れたらしいんだけどねー」
「はぁ・・・ お姉さまらしいと言えばお姉さまらしい・・・」

 令さまは頭を抱えつつテーブルに突っ伏してしまった。

「でも、それだけじゃないんでしょ?」

 祥子さまの発言に皆の視線が集中する。

「どういう意味ですか? 祥子さま」

 由乃さんの目が輝いた。やっぱり、こういう人なんだなぁ〜。

「それだけだったら、わざわざここまで来なくてもいいんじゃなくって? 足を運んでまで話す理由があるのではないのですか?」
「鋭いわね、祥子」
「お姉さまの妹ですから」
「・・・・・」
「・・・お姉さま?」
「なんちゃって」
『え?』

 聖さま以外の全員の声が同時にこぼれた。

「みんなの顔を見に来たついでよ」
「まぁ、江利子からも昨日電話あったしね」
「お姉さまは何て?」
「一緒にいても邪魔になるみたいだから明日帰る、って。江利子も苦労人ねぇ・・・」
「あーあ、拍子抜けー」

 部屋には由乃さまの嘆きの声が響いた。




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