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16.志摩子 /kousi



 どうして手が出たのか、今になってもわからなかった。だけど、その事実は結果として残っている。今更過程を論じてもどうしようもない。

 お姉さまは追いついたのかしら・・・。

 少し落ち着いたらしい、自分のこと以外にも思考がいくようになった。ついさきほど、走り去った乃梨子を追いかけていったお姉さまに思いを馳せる。追いついたとしたら、今頃はどういう話になっているんだろうか。それとも無言のままだろうか。
 まったく答えの出ないことを考える自分が情けなかった。知りたければ、まず自分が動けばいいだけなのに。これでは、人の内面に深く関心を持とうとしなかった1年前と何も変わらない。学園内においてまったくの異端だと思っていたあの頃は、お姉さまに支えてもらっていただけの存在だった。お姉さまがいなければ何もできなかった。

 けど・・・。

 そこで乃梨子の顔が浮かんでくる。顔を上げて、思考を振り払う。今は違う。乃梨子に出会えて変わることができた。少なくとも、そう思っている。思いを決め、よろめきながらも立ち上がる。自分が動かないと何の進展もない。足取り不確かながらも歩き出す。

 変われたことを信じるために。




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