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7.一日の終わる前に 1 /おにやん



「聞き込みって言っても・・・」

 すでに空は茜色に焼け、生徒の気配もほとんどなくなっていた。さすがに期末テスト最終日で午前授業なのに、こんな時間まで残っている生徒がそうそういるわけないか。

「ま、とりあえず聞き込みは明日から、と言うことかしら?」

 蔦子さんが眼鏡をくいっと上げる。蔦子さんほどこの仕草が似合う人はいないだろうな。

「それに、まだ行動に移すにはちょーっと勇み足ね」

 と、思わぬ言葉が彼女からこぼれた。

「蔦子さん、どういう意味?」
「写真部の隣はね・・・」
『新聞部!!』

 見事に私と祐巳さんの言葉が被った。

「この件に新聞部が何もしないわけないでしょ?」

 ・・・なるほど。

「さすがね、蔦子さん・・・そういうこと」
「いえいえ、とんでもございませんわ。黄薔薇のつぼみロサ・フェティダ・アン・ブウトン
「ふぇ?」

 まぁ、祐巳さんは・・・やっぱり祐巳さんね。

「祐巳さん、わかってないでしょ?」
「う・・・・うん」

 祐巳さんが申し訳なさそうに方をすくめるのを見て、私と蔦子さんは思わず顔を見合わせて笑ってしまった。

「気にすることないわ。そこが祐巳さんのいいところなんだから」
「そ・・・うなの?」

 本人にはわからない魅力、か。私にもあるのかな・・・。

「簡単に説明するわよ?」
「うんうん」
「今回はお姉さま方が目を見張らせているから、大っぴらに行動できない」
「そうだね。江利子さまにまで釘刺されちゃったもんね」
「だからこそ、新聞部を巧く利用するのよ」
「・・・え?」
「いつもは新聞部に利用させてばかりだからね。今回は利用させてもらうのよ」
「で、でも、どうやって・・・」
「だから、ここにスパイがいるじゃない」
「スパイとは心外ね、由乃さん」
「あら、カッコいいじゃない、腕のいい女スパイって」

 口では文句を言ったが、蔦子さんは嫌そうな顔をしていなかった。むしろその逆で、悪代官にゴマすりする越後屋みたい。
あ、そうすると私が悪代官か。



       * * *



「随分遅かったじゃない」

 玄関前で練習を追えた令ちゃんと出くわしてしまった。

「祐巳さんとお茶してたのよ」

 何もないような顔で平然と嘘を言ってのける。私ってさすが!

「・・・ふーん」

 しばらくの間の後、令ちゃんは納得言ったのか、タオルで汗を拭きながら奥へ言ってしまった。きっとこれからお風呂にでもはいるんだろう。

「さて、明日の計画、一応練っておかないとね。祐巳さんは何もしないだろうし」




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