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2.覚醒 /kousi



 突然情報を持ち込んできた女の子を、由乃さんは一瞥し、ため息を一つ。

「でね、その結婚相手って言うのがね・・・」
「ちょ・・・え!? 由乃さん、あっちの情報無視!?」
「冗談よ、冗談」

 屈託のない笑顔で言う由乃さん。

「祐巳さん、からかうと面白いから」

 なんてことまで言ってくれる始末。そんなに面白いのかな、私・・・。
「さて・・・」

 しかし、落ち込む間すらなく、由乃さんが咳払いを一つして折れた話のコシを一気に戻す。

「ふっふっふ、事件ね。血が騒ぐわ」

 笑顔をかみ殺しながら、ゆっくりと椅子から立ち上がる。
 マリア様の像が消えたという大事件なのに、由乃さんはあくまで嬉しそうだった。今までの鬱屈した雰囲気を発散させるために、何か事件を望んでいたのかもしれない。
 だけど、私の中で何かが警鐘を鳴らす。こうなった由乃さんは危険だ、と。

「祐巳さん、行くわよ!」
「ど、どこに・・・?」
「現場検証に決まってるじゃない! こういうことも山百合会の仕事よ・・・たぶん」

 聞こえた、今確かに小さな声でたぶんって言った。

「さあ! 行くわよ!」
「えっ、ええっ!?」

 有無を言わさず私の手を引き、由乃さんは走り出した。
 ホント、これからどうなるんだろう・・・。




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