奇妙な映画だ。映画の枠を超えている。様々な議論の中、傑作だ。いや、とんでもない作品だと映画界を沸かせたマイク・ミズノ監督の「シベリア超特急」。月日がたつにつれて大変な実験的傑作との評価が高まり、今や爆発的な人気は留まるところを知らない。オールナイトは常に超満員。DVDの売上も記録を伸ばしている。更に2月22日には「〜2」のDVDも発売されるとあって話題は益々上昇している。そんな中、遂に「〜3」が完成を迎えた。
一体どんな作品になるのか。何と今度は「シベリア超特急=瀬戸内海=ニューヨークの3ヶ所を結び、60年に渡る壮大なスケールのミステリーだ。ヒットラー、スターリンとの会合を終えてシベリア超特急で帰国する山下奉文陸軍大将(水野晴郎)。その副官佐伯大尉(西田和昭)。ドイツを脱出中の少年少女を含め、ヨーロッパの様々な人間が乗り合わせている。その中でおきた奇妙な連続殺人事件。真犯人は・・・。
やがて60年の月日が流れた。平和な瀬戸内海。豪華なクルーズ船でパーティーが開催されている。マスコミ界の巨頭 宮城伝蔵(宇津井健)の誕生日を祝うためだ。開催者は彼のおかげで世界的な有名デザイナーになった森裕美(三田佳子)。ところがこのクルーズ船で次々と事件が発生する。それも60年前シベリア超特急でおきた事件と全く同じ事件だ。誰が何の為にどうやって・・・。
60年を超えた2つの事件はどう結びついているのか。ラストにあっと驚くどんでん返しが2つ。そして三田佳子復帰第1作(映画は9年振り)。宇津井健の「催眠」以来の映画出演。2人の火花を散らす演技は涙があふれ、息つまるばかり。更にこの映画には5人の若手新人俳優(全員16歳)が抜擢され実にフレッシュな演技を見せる。この映画が封切られるとブレイク間違いなしの逸材揃いだ。田中丈資・安藤一平・大塚ちひろの3人は40年代の純真な若者を、真柄佳奈子・江成大輝は未来の日本を象徴する若者を演じる。明るい5人の個性がこのミステリーを華麗に彩っている。
映像的魅力も抜群で、開巻11分に渡る長廻し。これはアメリカから特殊キャメラを仕込んだもので、船上を歩く三田の前後左右360度周り秘められた謎の伏線に迫っていく。おなじみになった佐伯大尉のロープ投げ。今回は実際の列車ロケにて撮影されており、佐伯大尉(西田和昭)の手にマメを作っての決死スタントは最大の見物である。今回の佐伯大尉のキャスティングは第1作からの復帰でファンの熱望により実現したもので、西田も熱望に応えるべく猛烈な意気込みでアクションシーンを見せる。シベリア超特急の車両は日本映画界の大御所である木村威夫のデザイン。日活スタジオ内に素晴らしく豪華な1等車両と展望車を作り上げている。見所は他にも多い。全篇を貫くMIKEMIZNO監督のテーマであるパン・フォーカス。そしてマルチスクリーン。宝塚出身で今もカリスマ的存在である大浦みずきがダイナミックに踊るコール・ポーターの「ビギン・ザ・ビギン」。これはドラマ全篇のキーテーマになっている。そして問題は解決したかに見えてクレジット・タイトル。さあ、ここからニューヨーク・瀬戸内海を結ぶ大どんでん返しが2つ。絶対にお見逃しなく!
映画技術を駆使したエンターティンメント満載。
これが映画。
これが映画の面白さだ。
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