作:◆5KqBC89beU
ライターの仕組みを知らずとも、火のつけ方を覚える事はできる。
悪魔が使えるからといって、超常現象が何でも理解できるわけではない。
(「呪いの刻印」か……なんとなく寄生型の悪魔に雰囲気が似とるけど、別物やな)
己の魂を調べてはみたものの、これくらいしか分からなかった。
(寄生型の悪魔やったら、寄生された側の様子が本体に筒抜けなんやけど……)
あるいは「呪いの刻印」も、術者に情報を送るものなのだろうか。
(あー、少なくとも位置情報は送っとるな。発信機がわりに使えるみたいやし)
ダクトの向こうの音を聞き、手の中の探知機を見ながら、考えを巡らせる。
(この探知機と同じ物か、もっと高性能な物を、主催者側も持っとるはず……)
こちらの位置情報は主催者側に把握されている、と考えるのが妥当だろう。
さっきから、ダクトの向こうでは物音が連続している。
(探し物か? 俺も武器になるもん探したいけど、騒ぐと居るんがバレるか)
食欲は無かったが、今のうちに食べておいた方がいいかもしれない。
(腹の虫が鳴いたせいで見つかったりしたら、死ぬほど間抜けやしな)
デイパックに手を伸ばした瞬間、向こうの物音が消えた。会話する声だけが残る。
(お? 何や?)
今度は、なんとなく扉を開閉したような音がした。あわてて探知機を覗き込む。
画面の端あたりに光点が一つ表示され、しかも、だんだん近づいてくる。
(確か、あの場所は階段やったな……動きからして、一階から来たみたいやけど)
相手は周囲を探索しているらしいが、ほとんど足音が聞こえてこない。
じっと気配を殺して待つ。だが、相手はこちらに気づいてしまったようだ。
こちらが相手に気づいている事も、おそらく既に悟られている。
どうするか迷っているうちに、相手から話しかけてきた。
「そこにいるお前。こっちに敵意はないから、聞いてほしい」
(ふむ……手持ちの情報が一気に増えた訳やけど……)
話しかけてきた相手は、銃を持った男。彼は、こちらが怪我人だと気づいている。
それなりに強い仲間が一階に二人居り、積極的に戦う意思は無く、殺人以外の目的があり、
こちらには干渉してほしくないそうだ。本当かどうかは知らないが。
とりあえず無難そうな答えを返しておいたら、あっさりと男は去っていった。
「クエロ・ラディーン。こいつにだけは気をつけろ。死にはしなくてもろくな目に遭わない」
最後のセリフは、親切で言ってくれたのだろう。多分。
(どないするべきなんやろか……)
キャラクターの状態は「口先の龍理使い」と基本的に同じですが、
緋崎正介に関して補足があります。
【B-3/ビル2F、階段を左に行った奥から二番目の部屋/1日目・08:35】
【ガユス・レヴィナ・ソレル】
[状態]:右腿は治療済み。戦闘は無理。疲労。
[装備]:リボルバー(弾数ゼロ) 知覚眼鏡(クルーク・ブリレ)
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:屋上で安全ルートの捜索。傷を悪化させてでも、B-1とD-1へ急行。
【緋崎正介】
[状態]:右腕・あばらの一部を骨折。それなりに疲労は回復した。
[装備]:探知機(半径50メートル内の参加者を光点で示す)
[道具]:支給品一式(ペットボトル残り1本)
[思考]:カプセルを探す。生き残る。次の行動を考え中。
※緋崎正介(ベリアル)は、六時の放送を聞いていません。
※「呪いの刻印」の発信機的機能に気づいています。
※その他の機能(盗聴など)については、まだ正確に判断できていません。