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265:まロい朝

作:◆J0mAROIq3E

「ふぅ……」
 ガユスが上がっていった後、新庄は深々と嘆息した。
(何やってるんだろう、ボク)
 三人の中で自分が唯一無傷だというのに、ガユスに任せてしまった。
 いくら咒式とかいう術で治癒できるにしても、その道中は危険に違いないのだ。
 とはいえ、ミズーを放っておくわけにはもちろんいかず、自分の持つ剣は防衛に向いている。
 Ex-Stでもあればまだ積極的に動けるのに、と再び嘆息。
「戦力面で駄目なら……考えるしかないよね」
 地図を前にして首を傾げる。
「佐山君ならどう動くかな……?」
 この殺し合いを止めようとする。それは間違いない。
 まず出雲と風見と自分を見つけようとする。その確率も高いだろう。
 同行者がいるにしても佐山は我を貫くだろうと、そこまでは予測できる。
(でもひょっとして、佐山君もボク達の動きを考えて動いてたらすれ違いになるかな……)
 それならば一番高いところに上るという佐山的選択は捨てていいかもしれない。
 なら向こうは自分の動向をどう予測するだろうか。
『ふふふ! 新庄君といえば尻、尻と言えば水浴び! 湖へ行くぞ諸君、尻が待っている!』
 思考を三秒で打ち切った。

「あ……でも尻といえば……」
 変なことを思い浮かべたせいだろうか、自分の最大の特性に思い至った。
 途端、新庄の周りを微風が包んだ。
「や……こ、こんなときに……」
 白い水蒸気のようなものが浮かんで消えると、そこには一見変わらぬ新庄がへたり込んでいた。
「切になっちゃった……」
 いつもの時間に変化しないので油断していた。
 女物の服の胸元が頼りなく垂れ、裸になったような感覚に新庄は身を縮める。
「ど、どうしよう……まだガユスさんたちに説明してなかったし……女物の服じゃ落ち着かないし……」
 きょろきょろと見回しても、残念ながら衣服はない。
 スカートの裾が鬱陶しいほどに意識される。
 困った。下りてくるガユスに説明する必要があるが、時間をとらせるわけにもいかない。
 あのなんとかブリュレとかいう高性能な眼鏡は誤魔化せそうもない。
(き、嫌われたりしないかな? ガユスさん女の子好きっぽいし)
 忙しなげに太ももを擦り合わせる仕草がひどく色っぽい。
 こんなとき屁理屈大王の佐山ならどう対処するだろうか、と再び思考。
『心配は要らないよ新庄君。運君であろうと切君であろうと君の肉体は等しくまロいのだから!』
 一秒で打ち切った。

【B-3/ビル一階/一日目/08:35】
 
【ミズー・ビアンカ】
 [状態]:気絶。左腕は動かず。
 [装備]:グルカナイフ
 [道具]:デイバッグ(支給品一式)
 [思考]:気絶
【新庄・運切】
 [状態]:切(男体)に変化。動揺。
 [装備]:蟲の紋章の剣  救急箱
 [道具]:デイバッグ(支給品一式)
 [思考]:1、下りてくるガユスに説明 2、佐山達との合流 3、殺し合いをやめさせる

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