作:◆I0wh6UNvl6
宗介とかなめがクルツの死を悲しみつつ商店街を歩いている時、
彼らと一時別れた祥子・しずく・オドーの三人はまじめに食料を探していた。
「BBは何処にいるんでしょうか…?火乃香さんのことも気がかりです」
誰にともなくしずくはつぶやいた。
今、自分は商店街の端にある酒屋の中で食料を探している。
しかし意識はこのゲームに参加しているはずの知人の方へと向けられる。
「そもそもザ・サード管理下にある私達をどのように連れ出したのでしょう…痛っ!」
思考に集中していたため、足元にあるわずかなへこみに足をとられて転倒。
(何してんでしょう私…)
「大丈夫ですか?」
転んだしずくに祥子が手を伸ばす。
「あ、はい、大丈夫です」
しずくは手をとって立ちあがった。
「そういえばオドーさんはどこですか?」
「彼ならお店の外で待っていますわ」
店の外を見ると思考にふけっているオドーの姿があった。
背中には背負っているデイバックは食材を詰め込んでいるはずなのにちっとも膨らんでいない。
『何を考えているのかしら?まさか・・・』
自分のことに勘づいたのか?祥子の顔に不安の色が浮かんだ。
オドーには気がかりな事があった。
「恐ろしい、恐ろしい民族だな。日本人とは…」
原因は先ほどからの千鳥と宗介の様子だった。
宗介に出会ったのもつかの間、いきなり千鳥は宗介に蹴りを入れ、
空腹を指摘されるとバックで顔面を殴打した。
しかも彼女にはそれが日常らしく、彼女は普通の高校生だという。
「ならば、ならば普通の高校生は日常的に闘争の中に置かれていることになる」
日本で暮らす事になった自分の唯一の血族である、
ヒオ=サンダーソンのことが猛烈に心配だった。
(あの娘は、あの娘は本当に大丈夫だろうか…!)
そんなオドーの心を吹き飛ばすように声が聞こえた。
しずくが自分を呼んでいる。
「どうかしたんですか?オドーさん」
「いや、少々、少々気になることがあってな。
これで買うものは揃えたか?」
「ええ、大体は。
まだ少し時間がありますね、どうしましょう?」
「そうだな、どうせなら、どうせなら隠れる場所も見つけておくとしよう。
先ほどの場所は色々と都合が悪い」
---数分後---
三人は少し怪しげな地下にある店の中にいた。
「オドーさん、ここって・・・。」
看板を見る『クラブ・パラダイス』と書いてある。
「いわゆる、いわゆるクラブだな」
「なぜこのようなふしだらな場所に?」
祥子が不機嫌そうに問う。
「見つかる可能性が低いし出入り口が一つだけだから奇襲が不可能だ。
お嬢さん方には少々、少々居心地が悪いかもしれんが」
少し笑いながらオドーが言った。
「私は大丈夫ですけど・・・」
「仕方がないですか・・・」
オドーに続いて祥子・しずくも店に入っていく。
中はいかにも《それ》な感じだった。
どっかりと座れるソファー、机がありカウンターもある。
少し奥の部屋にはキッチンもあった。
「これは、これは休憩するにはもってこいの場所だ。」
笑いながらオドーが言う。
「それではこちらに集合しましょうか?」
「そうするとしよう。しずく、千鳥と軍曹を呼んできてくれ」
しずくが去った後、オドーと祥子だけが残された。
二人はソファーに座って向かい合った。
「・・・さて、さて我々は本題に入ろうか」
急に真面目な顔つきになったオドーをみて祥子はたじろぐ。
「何のことです?私に問題でも?」
「なかなかの、なかなかの演技力だった。しかし貴様は軍曹に注意を払いすぎだ。
不自然なほどにな」
「当然です。あの人は、会ったばかりの私を殺そうとしました」
「あくまで、あくまでしらを通すつもりか?ならばこちらにも考えがある。」
そういうとオドーは指を鳴らした
見えない力が祥子を押し付けた。
「ぐっ!なんですかこれは!?」
ソファーに押し付けられて祥子は口を開いた。
「これが、これが私の力だ、手加減はしているが。」
「…」
相当な力で押し付けられる、体が潰れそうだ。
「時間が、時間が無いのでな。駆け足で質問させてもらおうか」
ここぞとばかりにオドーが睨み付ける。
喋らなければ殺される、そう察した祥子は真実を話した。
「そういう、そういうことか。要するに人探しの途中か、危ない橋も渡ってきたようだな」
「はい…」
祥子は全て真実を話したが、一つ嘘をついた。
彼女の殺人は全て相手が襲ってきてそれに立ち向かった結果とした。
オドーの指が扉をさす。
「止めはしない、彼らが、彼らが来ないうちに行くといい」
「私は敵となるかもしれないのに…なぜ?」
「簡単な、簡単なことだ。獅子身中の虫などいらぬ、だが自ら進んで殺す気もない。
私はこんな下らんゲームには反対なんでな」
「そうですか・・・では、私はお言葉道理に行かせてもらいます」
銀の剣を握りしめ、踵を返す。
パラダイスから去り行く祥子にオドーは声をかける。
「探し人が、探し人が見つかったら戻ってきてほしい。
共に脱出法方を考えよう…」
祥子の返事は聞こえなかった…。
しずくに呼ばれた宗介達は少し遅れてパラダイスにやってきた。
飲料水確保に手間取っていたらしい。
宗介は祥子が居ないことに気づき、
「大佐、あの女は何処に?野放しにすると危険ぐはぁ!…何をする千鳥」
「うるさい!ったくあんたはどーしてそうネガティブな方向へ話を持ってくのよ!」
「しかし、常に最悪の状況を考えて行動しなければ最悪の事態に陥る、この前とある国の…」
オドーは二撃目を叩き込もうとする千鳥を制し、
「もうよい、もうよいのだよ軍曹。彼女は人探しの途中だった、群れるより
単独の方が動きやすい。だから別れた、過去のことはこの際忘れろ」
「…了解しました」
場に漂う気まずい雰囲気を壊すため、かなめが口を開いた。
「それにしてもこんな場所で休憩ってなんかヤダなー」
「そうか?これほど敵からの奇襲を防ぎやすく心休まる場所はなかなかないと思うが」
「そういう意味じゃないってんの、全くこれだからこいつは・・・」
「ハッハッハ、確かに、確かにそのとおりだ軍曹。
かなめ、おまえのボーイフレンドはおもしろいやつだな。」
「お褒めに預かり光栄であります、サー」
「褒めてないって・・・。
それとオドーさん、こいつはボーイフレンドでもなんでもありませんから!」
「アプローチは、アプローチはかけてないのか軍曹?」
「いえ、大佐、今以上のアプローチはおそらく不可能かと」
「ちょっ・・・!あんたなんか勘違いしてるわよ!」
「ん?アプローチの意味ぐらい理解しているが?」
「馬鹿!この場合のアプローチっていうのはね、その・・・」
「前途、前途多難だなかなめ」
会話が大分それてきた所でしずくが本題に引き戻す。
「じゃあこれからどうしましょうか?」 、
「おっと話がそれていたな。そうだな、とりあえず、とりあえずは食事を取るとしよう。
そのあとはこの後の行動の検討。私と軍曹の腕の見せ所だな」
さらに宗介をを見て、
「軍曹、軍曹は何か意見があるか?」
「ハッ、進路を決めるのは次の放送の後からのほうがよろしいのではないかと。」
「ふむ・・・そうだな、それでは、それではそうするとしよう」
「そんじゃあ今からはあたしの出番ね、しずくも手伝ってくれる?」
「はい。」
二人はキッチンへ向かっていく。
「軍曹、彼女の、彼女の料理の腕は?」
「ハッ、自分が食したところでは問題ありません。」
「手料理を食べたことがあるのか!?やはり、やはり軍曹、君は彼女に・・・」
「オドーさん、そこらへんにしとかないと・・・。」
いつのまに後ろにいたのか、かなめだ。
周りにはオーラが満ちている。
戦場でにいた彼らにはすぐ分かった、これは・・・殺気だ。
「すまん、かなめ、かなめ、悪かった」
まずいと悟ったのか流石のオドーも素直に謝る。
釘を刺した後かなめは再びキッチンに戻っていく。
「軍曹、君も、君も大変だな」
「・・・肯定であります、サー」
二人がため息をつくのは同時だった。
【C3/商店街/11:00】
【正義と自由の同盟】
残り88人
【相良宗介】
【状態】健康
【装備】ソーコムピストル、スローイングナイフ、コンバットナイフ
【道具】荷物一式、弾薬
【思考】大佐と合流しなければ。
【千鳥かなめ】
【状態】健康、精神面に少し傷
【装備】鉄パイプのようなもの(バイトでウィザード/団員の特殊装備)
【道具】荷物一式、食料の材料。
【思考】早くテッサと合流しなきゃ。
【小笠原祥子】
【状態】健康
【装備】銀の剣
【道具】荷物一式(毒薬入り。)
【思考】オドーに借りができた。祐巳助けてあげるから。
【しずく】
【状態】機能異常はないがセンサーが上手く働かない。
【装備】エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん)
【道具】荷物一式
【思考】BBと早く会いたい。
【オドー】
【状態】健康
【装備】アンチロックドブレード(戯言シリーズ))
【道具】荷物一式(支給品入り)
【思考】協力者を募る。知り合いとの合流。皆を守る。
この『赤い薔薇とのフェアウェル(別れ)』はID:6xnzi/yZさんの作品『別れ』を作者の許可を得て修正、推敲したものであります。
この作品の投下を許可してくださった皆様に深く感謝の意を表します。