作:◆3LcF9KyPfA
「――さて、ここからどうしようか」
そうつぶやく男――姫を助けにきた王子であるクレア・スタンフィールド――は、
目の前の城門を見上げると、ひとりごちる。
「やはり、王道としては正々堂々正面から名乗りをあげるのが格好良いか……
だがしかし、ここで敢えて前代未聞に挑戦してみるのも悪くはないな?」
そう呟いてクレアは、後ろを見る。
大分離してはあるが、先程の男がしつこく追いかけてきているのが見えた。
「悪の手先じゃないなら、あいつを倒しても別に格好がつくわけじゃないしな……」
シャーネを助けるまでは、面倒は御免だった。クレアは即決する。
……何より、「前代未聞」という単語がとても自分らしく、格好良いと思えてきた。
「よし、それじゃあ行くか」
ニヤリ、と擬音のつきそうな笑顔と共に、クレアは鼻歌混じりで巨大な扉を開いていった。
「……捕らわれのお姫様ってのは、最上階にいるのが定番だと思ったんだがな……?」
中に入って直後、クレアは面倒くさい追っ手(平和島静雄)を足止めするべく即座に城門を閉めると、
そのまま正面入り口へは向かわず、手近にあった木を登り。壁面の縁に飛び移り。
そして、比較的凹凸の大きい壁面を運良く発見するなり、一気に登って最上階から侵入したのだった。
だが結局、侵入した階全体を見回ってみてもシャーネを発見することができず、現在に至っている。
「城でないとすると塔か……? だが、この島にはそんな気の効いたものはないしな。
地図にある灯台は、塔と呼ぶには役者不足だし……」
言っている間にも、やや苛立ちが外面に見え始めていた。
……と、何を閃いたのか、クレアが唐突に走り出す。
それは“疾風迅雷”とでも評するのが相応しいような、後先を考えない全力疾走だった。
「はは……そうだ、そうだよな。“城”っていうからには、謁見の間とかそういうのがあるはずだ。
悪役ってのは、偉そうに座って『冥途の土産』とやらを聞かせるのが好きだしな。絶対そこだ」
半ば自分に言い聞かせるように、クレアは駆けていく。
【G-4/城の中/1日目/08:00】
【クレア・スタンフィールド】
[状態]:健康、焦りと苛立ちで神経過敏
[装備]:大型ハンティングナイフx2
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:謁見の間を探す。シャーネはどこだ!?
2005/05/09 文頭に空白を挿入