remove
powerd by nog twitter

189:禁止エリアのもたらすもの

作:◆Sf10UnKI5A

 禁止エリアの発生により、大きく影響を受ける者達がいた。
 一つは、蒼い殺戮者(ブルーブレイカー)。
 もう一つは、オドー、千鳥かなめ、しずくの三人。
 さらに一つは、ダウゲ・ベルガー、テレサ・テスタロッサの二人。
 最後の一つは、出雲覚、アリュセの二人。

 青い殺戮者は、放送を聞いてしずく達の名が無い事に安堵した。
 しかしその後、G−2、H−2の禁止エリアの壁が自身の近くに出来たことを理解する。
 南へ行っても意味が無いと判断し、彼は移動目標を中央に定めた。
 ――それが彼としずくとの距離を離す決断だったことを、彼は知る由も無い。

 オドー、千鳥かなめ、しずくの三人は、自分達の現在地が
 禁止エリアの壁により行き止まりとなることを知った。
 次の禁止エリアによっては、完全に閉じ込められる可能性もある。
 一刻も早く移動する必要があるのだが、
「――いいか、いいか、移動経路は二つだ。
海岸線沿いを北上し、この遊園地の方へと進むか、
禁止エリア化するまでの時間を利用し、森を東へ抜けるか。二つに一つだ」
地図の上を指でなぞりつつ、オドーが二人に説明する。
「こっちの北上ルートの方が移動は楽ですけど、でも……」
「最悪、殺る気のある奴らが移動してくる可能性もあるわ。
 オドーさんの実力は見せてもらったけど、出来るだけ戦闘は避けたいわね」
 かなめは思う。
 もし宗介と同レベルの戦闘狂に会ってしまったら、自分達二人は足手まといにしかならない。
「確かに、確かに禁止エリアを抜けるこのルートは、 寄ってくる殺人者の予想を裏切ることとなるだろう。
だが、だがお嬢さん方」
 オドーは顔を上げ、二人の顔を見て話す。
「私はこの森を抜けてきたが、起伏もあり、女子供には少々厳しい。
それでも、それでも大丈夫かね?」
 その言葉に、かなめはフンッと鼻息を荒くする。
「馬鹿にしないでよオッサ……オドーさん。
生きるか死ぬかって非常事態に、歩く道の快適さを気にする人間がどこにいるの?」
 かなめの言葉に、オドーは大きく頷いた。
「その通り、その通りだ。
日本の高校生は軟弱者が多いと聞いていたが、やはりそれは間違いのようだな」
 自分が認めた若者達――全竜交渉部隊の面々を思い出し、オドーはそう呟く。
「わ、わたしも大丈夫です! こう見えても体力には自身があります!」
 自分が機械であることは明かさないが、足手まといになる気が無いことをしずくは表明する。
「結構、結構だ! お嬢さん方の意気は理解した。ならば行くとしよう、生存のために!」
 オドーが締めくくり、三人は移動準備を始めた。

「いいかテレサ。友人を探す前に、まずは敵に見つからないことが重要だ」
 シュバイツァーの墓の横、上着を返してもらったベルガーと
 UCAT戦闘服を着込んだテッサが話し合っている。
「崖沿いに移動するのは襲われた時に逃げ道が無い。
西に抜けるのは、三時間後に禁止エリアになることを考えると避けるのが無難だ」
「南は行き止まり。ならば、東へ行くしかありませんね。ですがベルガーさん。この城というのは……」
 ベルガーは、わずかに間を置き答える。
「……微妙だな。いかにも人が集まってきそうな建造物だが、
殺る気の連中も一緒に寄ってきそうな解りやすい建物だ」
「やはり、避けるべきでしょうか?」
「いや、あんたの探す友人もいる可能性がある。それで、まずはこう……」
 話しつつ、ベルガーは指で地図をなぞる。
「森の中を東南へ移動して、大回りに城に接近する。
南から城の様子を見て、静かなら一度中へ入る。ヤバかったら東の森へ退避だ。いいな?」
 確認するベルガーに、テッサは肯定の頷きを返す。
「私も、それが一番安全だと思います。それで行きましょう」
 話は無事まとまった。
 しかし、ベルガーにとって一つだけ予想外のことがあった。
 テレサ・テスタロッサ。彼女は極度の運動音痴だったのである。
 彼女は森の中を移動中何度も転倒することになるが、ベルガーはまだその未来を知らない。

「こいつぁ随分ヤバいことになっちまったな……」
 地図を見ながら、出雲は苦悩する。
 死者の中に自分とアリュセ(やっと自己紹介をした)の知る名が無かったのは幸いだったが、
 崖だけでなく禁止エリアまでもが、彼らの移動の邪魔となってしまった。
「ねえ、これからどうするんですの?」
「どうするも何も、まずはここから移動しないといけねえ。ほれ。食いながらでいいか?」
 出雲は立ち上がると、山ほどあるうまい棒からアリュセに一本差し出す。
「ええ、大丈夫ですわっ」
「よーしいい子だ。そいじゃ、行くとするか」
 出雲はバニースーツをデイパックに戻すと、二人分のデイパックを持ち上げた。
「? わたし、自分で持てますわよ?」
「いいんだアリュセ。今日は随分歩くことになりそうだからな。
荷物は俺様のスーパーパワーに任せて、お前は体力温存しとけ」
 出雲は放送内容を思い出す。
 23人という死者数。それは相当な殺人者がいることを意味する。
 安全な場所を確保するのは、簡単なことではないだろう。
「そう? それじゃ、お願いしますわねっ」
 足取り軽く、アリュセは歩き出す。
 そして、出雲もその横に並んだ。
 ――こんな年端もいかねえ子、殺させるわけにゃいけねえよなあ……。
 出雲はそう思いながら、彼女の横を歩くのであった。

【残り94人】

【F-1/海岸沿いの茂み/1日目 06:05】
【蒼い殺戮者(ブルーブレイカー)】
[状態]:飛行ユニットの翼に弾痕あり、ただし飛行に関しては問題無し
[装備]:梳牙(くしけずるきば)
[道具]:無し(地図、名簿は記録装置にデータ保存)
[思考]:島の中央方面へ移動。
    しずく、火乃香、パイフウの捜索。脱出のために必要な行動は全て行う心積もり

【H-1/神社付近/1日目 06:05】
【千鳥かなめ】
[状態]:平常
[装備]:鉄パイプのような物(バイトでウィザード、「団体」の特殊装備)
[道具]:デイパック一式。
[思考]:宗介、テッサと合流したい。
[行動]:H−2経由でH−3へ移動。

【しずく】
[状態]:機能異常は無いがセンサーが上手く働かず。
[装備]:エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん)
[道具]:デイバック一式。
[思考]:BBと合流したい。二人についていく。
[行動]:H−2経由でH−3へ移動。

【オドー】
[状態]:平常
[装備]:アンチロックドブレード(戯言シリーズ)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:協力者を集める。知人と合流。仲間を守る。
[行動]:H−2経由でH−3へ移動。

【G−3/林の中/06:10】
【ダウゲ・ベルガー】
[状態]:心身ともに平常
[装備]:贄殿遮那@灼眼のシャナ 黒い卵(天人の緊急避難装置)@オーフェン
[道具]:デイバッグ×2(支給品一式)
[思考]:H−3経由でH−4、城へ移動。テレサ・テスタロッサを護衛する。
・天人の緊急避難装置:所持者の身に危険が及ぶと、最も近い親類の所へと転移させる。

【テレサ・テスタロッサ】
[状態]:心身ともに平常
[装備]:UCAT戦闘服
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:H−3経由でH−4、城へ移動。宗介とかなめを探す。

【H-3/海岸沿いの崖下/1日目・06:05】
【出雲・覚】
[状態]:左腕に銃創あり(出血は止まりました)
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(支給品一式)×2 うまか棒50本セット バニースーツ一式
[思考]:東へ移動。UCATの面々と合流 アリュセの面倒を見る

【アリュセ】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考]:東へ移動。リリア、カイルロッド、イルダーナフと合流 覚の面倒を見る

2005/04/22 修正スレ43
2005/06/13 改行調整

←BACK 一覧へ NEXT→