作:◆3LcF9KyPfA
「「グリーン発見!」」
アイザックとミリアが勢いよく叫ぶ。ビシッと擬音が聞こえそうな程に指を突きつけながら。
「誰がグリーンだ誰が! しかもヘンタイヒーローって……よく解らないがそこはかとなくムカつくな、なんか」
潤が不満と胡散臭げな視線を二人に向けるが、当の本人達は一向に気にする様子も無く、
「これでヒーローが揃ったな!」
「完璧だね!」
ひたすらにはしゃいでいる。
「……なんなんだこいつら……」
そのハイテンション……を遙かに超えたアッパーテンションに潤が頭を痛めていると、倉庫の奥から声がかかる。
「誰か、来たんですか……?」
恐る恐る、といった感じで現れたのは、要少年だった。
彼は潤を見つけると一瞬ビクッと後退さったが、次の瞬間には今にも泣きそうな顔になって潤に訊ねてくる。
「あ、あの……その背中の人は?
どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「――はっ!?」
その言葉で我に返った潤は、背中の祐巳のことを思い出す。
アイザックとミリアが当てになりそうもないと悟った潤は、要少年の近くまで歩いていくと口早に告げる。
「そう、そうなんだ。連れの娘が急に熱出して倒れちゃってね。
すまないが、ちっとばかし休ませてもらえないかな」
聞くや否や、大慌てで倉庫の奥へと引き返すと、要少年が促す。
「勿論です! どうぞこちらへ!」
そして自分の服を一枚脱ぐと、バッグからタオルを取り出し服に巻いて、即興の枕を作る。
「さぁ、どうぞ」
「サンキューな。助かるよ」
その枕に頭が乗るよう祐巳を寝かせると、潤は礼を言う。
「それと……もしよかったら、少しこの娘を診ててくれないかな?
周囲に怪しい奴がいないかどうか、少し見回ってきたいんだが」
「それは構いませんけど……大丈夫ですか? 気をつけてくださいね?」
「あぁ、大丈夫。任せときなって」
言って立ち上がろうとした潤の傍らに、いつの間にかシロがやってきていた。
祐巳の顔を見ると、心配そうに鳴く。
「わんデシ……」
「………………」
微妙に胡乱気な目でシロを一瞥すると、潤はアイザックとミリアに視線を移す。
「どうしようアイザック、六人になっちゃったよ?」
「う〜ん、どうしようか……?」
二人はよく解らないことで悩んでいた。
「………………」
うんうん唸っている二人から視線を外すと、潤はもう一度シロを見つめる。
いや、むしろ凝視すると言った方がいいだろうか。更には――
「……じーっ」
変な擬音までついた。
「じーーーーっ」
更に声を出す。
「じーーーーーーーーーーっ」
しつこく擬音を繰り返す。
「……わ、わんデシ?」
遂に潤の視線と擬音に耐えられなくなったシロが潤の方を向くと、
「がしっ」
またもや擬音付きで、潤がシロの頭をホールドした。
そして、ぐりぐりと頭を撫でつつ、潤が呟く。
「なぁ……お前本当は普通に喋れるんだろう?」
「わ……わんデシ?」(気付かれたデシか……?)
「そんでさぁ……本当は白い竜とか、そんな感じの生き物でさぁ……」
「わんデシ!?」(バレてるデシ!?)
「ついでに、幸運とか運んでくるんだよ……」
「――っ!?」
潤のその言葉に、シロは首が取れてしまうのではないかというくらい思い切り、首を横に振る。
だが、潤はその様子が見えているのかいないのか、更に言葉を続ける。
「で、あたしを乗せて遠くまで連れてってくれるんだよな……
ネバーでエンディングな世界とかにさー」
「……デシ?」
「それでよぉ、あそこの馬鹿みてぇにテンションの高い二人は、象牙の塔の住人なんだよなぁ?」
「…………」
最早シロには、何を言っているのかさっぱり解らない。
「…………よし、そういうことに決めた。というわけでもういいや」
どうやら、アイザックとミリアに対する接し方を決める為の儀式的逃避に、シロが使われたらしい。
「それじゃあ見回り行ってくる。そいつら頼んだぜ、ファルコン」
そう言って倉庫から出ていった潤の後に。
またもや名前の変わったシロが、所在無さ気に取り残されていた――
【E‐4/工場倉庫/一日目/08:15】
【アイザック】
[状態]:超健康(眠くてハイ?)
[装備]:すごいぞ、超絶勇者剣!(火乃香のカタナ)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:困ったな、六人になったぞ。
【ミリア】
[状態]:超健康(眠くてハイ?)
[装備]:なんかかっこいいね、この拳銃 (森の人・すでに一発使用)
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:困ったね、六人になっちゃった。
【トレイトン・サブラァニア・ファンデュ(シロちゃん)】
[状態]:健康
[装備]:黄色い帽子
[道具]:無し(デイパックは破棄)
[思考]:あの赤い人はなんだったんデシか?
【高里要】
[状態]:やや平常
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品一式)
[思考]:祐巳の看病をする。赤い人が危険な目に遭ってないか心配。
[備考]:上着を一枚脱いでいる。
【福沢祐巳(060) 】
[状態]:看護婦 食鬼人化 熱で朦朧としている
[装備]:保健室のロッカーに入っていた妙にえっちなナース服 ヴォッドのレザーコート
[道具]:ロザリオ、デイパック(支給品入り)
[思考]:お姉さまに逢いたい。潤さんかっこいいなあ みんなを守ってみせる 聖様を救う 食鬼人のことは秘密
【哀川潤(084)】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:デイパック(支給品入り)
[思考]:周辺の偵察。怪しい奴がいたらひっ捕らえる。殺人者がいたらぶっ殺す。
小笠原祥子の捜索 祐巳の力はまだ半信半疑 祐巳の食鬼人のことは忘れたことにする
2005/05/09 文頭に空白を挿入 改行を微調整