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168:危険なる訣別

作:◆PZxJVPJZ3g

頭の中から、死者の名前を告げる声がする。

幸いにしてシャナの名前がなかった事に、悠二は安堵を覚える。
「長門さん、行こう」
悠二は長門の手を取って森の中を進む。
だが悠二は気付いていない。あるいは既に無くなった彼ならば気付いただろう。
彼女の表情の僅かな変化に。そしてこれが、二人の命運を分ける事となる。

「ごめんなさい」
2人で森の中を行く最中、唐突に長門が告げた言葉の意味を悠二は理解できなかった。。
「私は貴方と一緒に行く事は出来ない」
「どうしてさ!?」悠二が長門に理由を問い質す。
「やらなければいけない事ができたから」
長門の答えに対して更に問いかける悠二に、彼女は自分の知ることを全て話した。
長門自身の存在理由、その理由たる世界を変える力を持つ少女『涼宮ハルヒ』、そして
彼女が死んだ今でも自分がここにいる異常についても。
「そんな……、なんで……」
その事実にショックを受けた悠二は、よろよろと背後の樹にもたれかかる。
「でもそれが事実」
あくまで淡々と語る長門。
「だから私は貴方と離れて、残った古泉一樹を捜しだして対策を立てる」
「でも、僕と一緒に捜した方が効率が──」
「それは無理、貴方を間違って殺してしまう可能性があるから」
先程よりも強力なショックが悠二を襲った。

「私の中には、彼女達が殺された事に対するノイズが存在する」

長門は自身の事を淡々と語る。

「このノイズの正体は恐らく、彼女達を殺された事に対する『怒り』と『悲しみ』。今はまだ何の
問題もないノイズだけど、それはおそらく私自身の行動を支配していく」

ただその声音は、長門にしてはとても優しげで──

「もしそのノイズに私が完全に支配された時、私がどんな行動を取るか予測できない。もし貴方と
一緒に行動していたら、貴方を殺してしまうかもしれない」

まるで悠二を諭しているようにも見えるその姿は──

「──だから私は貴方と離れ、一人で行動する」

だけどその顔は、僅かに寂しそうにも見えた。

予め持ってきていたデイバッグをしっかりと持って、長門は北の方へと歩きはじめた。
その姿を、悠二はただ見ている事しか出来なかった。
(なにか、言わなくちゃ……)
頭の中ではそう考えてはいるものの、身体全体が石のように全く動かない。
「長門さん……」
辛うじて名前を呼ぶ事はできたものの、その声はあまりにもか細くて彼女に届きそうはない。
そしてふと、彼女がこちらの方を向いて何かを言った。
悠二には、長門が何と言っているのか聞こえなかった。
でも、なんとなく、何をいったのかは分かった気がした。

あの時彼女が言った言葉。それはきっと、永遠の別れの言葉。

【F−4/森の中/1日目・06:08】

【長門有希】
[状態]:かなり疲労/僅かに感情らしきモノが芽生える
[装備]:ライター
[道具]:デイバック一式
[思考]:現状の把握/情報収集/古泉と接触して情報交換/ハルヒ・キョン・みくるを殺した者への復讐?

【坂井悠二】
[状態]:疲労。
[装備]:狙撃銃PSG-1
[道具]:デイバック一式
[思考]:シャナの捜索

【備考】
悠二がどう行動するかは不明、その辺は次の書き手さんにおまかせ。
長門暴走の可能性が出てきました。

【残り94人】

2005/04/03 修正スレ16-17

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