作:◆l8jfhXC/BA
煙草も吸えずにいらいらしたまま、甲斐は神経を尖らせていた。
そしてそのまま数時間が経った後、突然甲斐の頭に直接嫌な声が響き渡った。──定時放送。
『……090朝比奈みくる、101竜堂始、115マジク・リン───』
「……いねぇみてぇだな」
そこにウィザードや海野千絵、ベリアルの名前はなかった。
ゲームに乗ることを決めた甲斐にとっては、敵──参加者は少ない方がよかったのだが。
『……次に禁止エリアを発表する。一度しか言わないから──』
「……やっべ」
地図も紙も鉛筆もあの家に置いてきてしまった。頭で覚えるしかない。
それでも現実に境界線が書いてあるわけではないので、大まかに避けるしかない。
とりあえず南西と南東の方には行かない方がいいだろう。
6時になりだいぶ明るくなったところで、甲斐は巨木から降りて東に向かった。
北の方に建物と畑らしきものが見えたが、誰かが待ち伏せているかもしれないのでやめておいた。
そしてしばらく行ったところで、まっぷたつに切り裂かれた死体と放り出されたデイパック──そして奇妙なものを見つけた。
「おいおい、これは……」
やばすぎるんじゃねえのか──言葉を飲み込み、甲斐は戦慄した。
焦げ跡を残した、大人数人がすっぽりと入れそうなクレーターがそこにあった。
……異常すぎる。
誰かの武器に、これほどの威力をもつ爆弾があったのか。
「それとも“悪魔”か……? いや、これはいくらなんでも強すぎる」
何であろうと、自分の敵になることは確かなのだが。
「くそ」
こんなことで怖じ気づいている場合ではない。生きて帰るには、これを使った人物とも戦わないといけないのだ。
「……地図だけでももらっておくか」
焦る気持ちを抑えつけ、デイパックを漁る。武器はもう持ち去られているだろう。
中には地図や日用品がそのまま入っており、そして────
「……クッ…ククククク……」
甲斐は思わず笑いを押し殺した。本当は大声を出して笑いたいところだったが、それはかろうじてこらえた。
「……やっと俺にもツキが回ってきたみてえだな」
デイパックには、見慣れたカプセルが大量に詰め込まれていた。
しばしの間、興奮に身を任せた。あのクレーターの恐怖などどこかに吹っ飛んでしまっていた。
そして落ち着いた後、カプセルを五錠ほどポケットに忍ばせて──はっきりとした声で、言ってやった。
「ウィザード、俺はやるぜ」
どこかにいる好敵手に宣戦布告をして、甲斐は住宅街の方へと歩き始めた。
【残り94人】
【E-4/平地/一日目 06:30】
【甲斐氷太】
[状態]:平常
[装備]:カプセル(ポケットに五錠)
[道具]:煙草(残り14本)、カプセル(大量)、支給品一式(ヴォッドのもの)
[思考]:元いた住宅街(D-3)へ、ゲームに乗る、ウィザードと戦いたい
2005/04/22 修正スレ57
2005/05/09 改行調整、一マス開け追加