作:◆RGuYUjSvZQ
B−2の砂漠地帯にセルティと共に待機している慶滋保胤は
夜明けを待つ間、呪いの刻印について考えていた。
「呪い」という言葉は広義的にはあらゆる術、法の全てを指す場合もある。
この刻印についても「呪い」という名前はついているものの、本質的な意味での
呪いとは全く別のものではないだろうか。
少なくとも、保胤の考える呪いとは全く異なるものである可能性が高い。
呪いという物は本来、「積み重ね」ていくものである。
対象にたいし長い時間をかけて呪いをかけ続け、精神的、身体的苦痛を
じわじわと与え続けることで最終的に死に至らしめる。
ある人間を呪うというのは大変な執念が必要なのだ。
一日やそこらで出来るものではない。
「人を呪わば穴二つ」という言葉がある。
これは、他人を呪うとその呪いが自分にも跳ね返ってくる、という意味合いもあるが、
人を呪うには、自分の残りの人生や死後の安楽すらも捨ててなければならない、
ということを表してもいるのである。
それだけの代償を払ってまで相手を呪おうという怨念が必要なのだ
ところが、今回の刻印からはそういった呪い特有の「怨念」が感じられない。
呪いというよりは、術により体に打ち込まれた「枷」「戒め」の類に近い。
呪いの場合、元(呪いをかけてる側)を断たなければ止めることが出来ないが
この刻印は必ずしも元を断つ必要はないだろう。
問題はかけられている術の内容だが、
陰陽道の術とはあきらかに系統が異なるため、保胤の現在の知識と技術だけでは細かい解析は無理である。
晴明や陰陽寮の精鋭達ならあるいは可能かもしれないが、この場にいない者を頼りには出来ない。
自分の解る範囲内で解明していくしかないだろう。
まず、刻印が発動すると魂がデリート(削除)されると説明されたが
これは魂魄の切断を意味していると考えられる。
「魂」とは精神を司る気、「魄」とは肉体を司る気とされる。
人の命は「魂」と「魄」の2つの要素で構成されている。
命がついえると「魂」は天に上り、「魄」は地に還る。
魂魄が完全に分離するということは死を意味するのだ。
呪いの刻印は視覚することも出来るが、
実態は魂魄自体に「打ち込まれている」と考えたほうが良いだろう。
外部からの干渉に対してなら一時的に結界を張って防ぐという対応策もある。
しかし、この刻印は内側に存在しながら外部に様々な情報を送り続けているようだ。
結界等でそれを遮断したところで、刻印自体は内側に残ってしまうのであまり意味がない。
そもそも、下手に外部と遮断すると自動的に刻印が発動してしまう恐れもある。
結界を使うのは上策とはいえないだろう。
結局、刻印に対して打てる手は今のところはないか。
ひとまずそう結論を出すと保胤は少し仮眠をとることにした。
となりではセルティが横になっている。
首から上がないため寝ているのかどうかは解らないが(そもそも、寝るのだろうか?)
たぶん、体を休めているのだろう。
わずかにだが空が白み始めてきた。
夜明けはもうすぐそこである。
【B−2/砂漠の中/一日目・05:30】
【慶滋保胤(070)】
[状態]:正常
[装備]:着物、急ごしらえの符(10枚)
[道具]:デイパック一式、 「不死の酒(未完成)」と書いてある酒瓶
[思考]:セルティと一緒に行動。夜明けまではこの場所に留まる予定。
[行動]:仮眠中
【セルティ(036)】
[状態]:正常
[装備]:黒いライダースーツ
[道具]:デイパック一式 (ランダムアイテムはまだ不明)
[思考]:保胤と一緒に行動。夜明けまではこの場所に留まる予定。
[行動]:横になっている(寝ている?)