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134:再開と、会戦

作:◆xSp2cIn2A

「おい、戯言遣い、起きろ」
「ん……」
ぼくは凪ちゃんの声で目を覚ます。どうやら寝てしまったようである。
「どうしたの凪ちゃん?もしかして夜這い?」
「何かがトラップにかかった。今零崎に確かめさせてる」
凪ちゃんは、あえて「誰か」とは言わず「何か」と言う。
ってぼくのギャグは無視ですか?
「そりゃぁ大変だ。零崎なんかを確認に行かせたら、もれなく惨殺死体をプレゼント、だ」
思ったことを口にする。
「とりあえず釘を刺してはおいた」
なかなか抜かりは無いようだ。
ぼくは零崎から借りた時計を見る。5:30.なんと30分も寝ていたようだ。
我ながら、自分の図太さに感心する。しかし凪ちゃんと零崎に、寝顔を見られたのは迂闊だった。
そこに、木の上から何かが落ちてきた。零崎である。
「よぉ。起きたか欠落。おまえはどうやら緊張感ってのも欠落してるみたいだぁな」
かはは と笑う零崎。いや、否定はしないけどさ。
「で、誰だったんだい?そのトラップにかかった「何か」は」
「ガキと女、それと驚け!なんとだな……」
そこで零崎は大きく手を広げると、焦らすように間をおく。
前にも思ったが、零崎はかなりリアクションが大きい。
「なんと、匂宮の『人食い』だ!」

「へぇ、出夢くんか。そういえば名簿には載ってたな」
しかし、あの出夢くんが誰かと組むとは以外だった。
「あ?なんだよ知ってるのか?『人食い』の匂宮兄妹を?」
「知ってるも何も、一度殺しあった中だよ。それに今は兄妹じゃぁないよ、理澄ちゃんは
 死んでるからね。」
もっとも、生き返ってる可能性は否定できない。
「は?理澄が死んでる?二重人格なんだろあいつら」
どうやら零崎はトリックを知らないらしい。
「あぁ、単純な入れ替わりトリックだよ。あれは……」
そう、あのトリックは、気づいてみれば実に簡単なトリックだった。
全く、あんなのに気づかないなんて、戯言遣いの名折れだった。
看護婦さんでも分かったのに。
「俺には話が全然見えないが、そろそろこっちに来るぞ。二つ目のトラップに反応があった」
凪ちゃんが、すこし声をひそませて言った
「あぁごめん。とりあえず出夢くんなら話し合う価値はあると思う。殺し屋だけど、もう隠遁生活に入ってるはずだから」
説明はあとだ。まぁ出夢くんなら、いきなり襲ってくる心配は無いだろう。
とりあえずぼくたちは、各々武器を持って警戒だけしておく。
(零崎が金色のわっか、凪ちゃんが、倉庫から持ってきたというサバイバルナイフ。ぼくは同じく零崎の分のナイフで武装した。)
ちょうどそのとき、三つ目のトラップが作動する。こちらが風下なので、遠くからガサガサと草を掻き分ける音が聞こえてきた。

「ストップ」
出夢は唐突にそう言うと、手で長門と悠二を止める。
「どうしたんですか?出夢さん?」
「くそッ、さっき誰かに見られてるかと思ったが、やっぱり待ち伏せてやがった」
苦々しげに吐き捨てる出夢。
「え?じゃぁ、引き返すんですか?」
心配そうに訊ねる悠二。長門は相変わらず無表情で突っ立っているだけだ。
「いや、もうとっくの昔に気づかれてると考えていい。相手がやる気ならもう逃げられないぜ」
出夢の言葉にますます顔を引きつらせる悠二。しかし、それも一瞬。全身を引き締める。
「戦闘なら、ぼくが狙撃銃で……」
「ぎゃはははは!頼もしいねぇ。だが断る。相手はかなりやるようだからな。
 チッ!ぼくは殺戮は一日一時間って決めてるんだけどな」
さらっと恐ろしいことを言う出夢。 
出夢の言葉に、悠二は内心ほっとする。こんなことを言っても、やはり殺し合いなんてしたくない。
それが素直な心境だった。
「それじゃぁ逝ってきまぁっす!」
出夢はそういうと、デイパックを置いて跳躍しようと身をかがめる。そのとき、
「おーい!出夢くん!とりあえず話し合おう!今のところ、こっちには戦う気は無い!」
今まさに跳ぼうとしていた方向から声が聞こえた。
その声に、出夢は一瞬きょとんとする。
「ぎゃはははは!まさか、こんなところでお兄さんに会うなんてな。僕たち案外、赤ぁい糸で結ばれてたりしてな」
出夢はまた、ぎゃはははは!と笑うと、ニヤニヤ笑いを浮かべて、悠二に言った。
「で?どうするよ?悠二くん?」

 ぼくが呼びかけてから数分して、出夢くんと、銃を抱えた男の子、そして全く無表情の女の子が出てきた。
「やぁ、久しぶり。出夢くん」
「また会ったねぇ、おにーさん」
しかし、まさかこんなところで出夢くんに会えるとは思わなかった。
もしかしたら、ぼくたちは、紅い糸で結ばれているのかも知れない。
血で真っ赤に染まった、紅い糸に。
「……戯言だ」
「あ?何か言ったかい、おにーさん」
「いや、べつに」
そう言って、ぼくは出夢くんと一緒に出てきた子達を見る。
銃を抱えた子は、未だに警戒するような目で僕たちを見ている。
思ったよりしっかりしている子のようだ。
と、男の子と目が合った。数秒間ほど見詰め合っただろうか、ふと、男の子が口を開いた。
「あの、そちらは戦う気は無いと言いました。それは信じていいんですね?」
「あぁ、こっちに戦う気は無い。俺たちはむしろ、何とかしてここを脱出しようと考えている」
凪ちゃんが答えた。まぁ、
「とりあえず自己紹介とでもいこうか?ねぇそこに隠れている君も」
ぼくは2メートルほど先の、茂みの中に向けて言った。
同時に、零崎と出夢くんが茂みの向こう側に飛び込んだ。
【残り95人】

【灼眼戯言ポップの憂鬱】
(坂井悠二/いーちゃん/零崎人識/匂宮出夢/霧間凪/長門有希)
【F−4/森の中/1日目・05:45】
【いーちゃん(082)】
[状態]: 健康
[装備]: なし
[道具]: なし
[思考]: 隠れている何者かの捕縛

【霧間凪】
[状態]:健康
[装備]:ワニの杖 サバイバルナイフ 制服 救急箱
[道具]:缶詰3個 鋏 針 糸 支給品一式
[思考]:隠れている何者かの捕縛

【零崎人識】
[状態]:平常
[装備]:血の付いた出刃包丁 天使の輪
[道具]:デイバッグ(支給品一式)サバイバルナイフ
[思考]:惚れた弱み(笑)で、凪に協力する。何者かの捕縛

【長門有希】
[状態]:かなり疲労。
[装備]:ライター
[道具]:デイバック一式。
[思考]:情報収集/ハルヒ・キョンの安全確保

【匂宮出夢】
[状態]:平常
[装備]:???
[道具]:デイバック一式。
[思考]:生き残る。 何者かの捕縛

【坂井悠二】
[状態]:疲労と動揺
[装備]:狙撃銃PSG-1
[道具]:デイバック一式。
[思考]:いーちゃんをちょっと不信に。シャナの捜索。

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