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133:深夜の闖入者

作:◆3LcF9KyPfA

「それにしてもあれだな……俺の知ってる人間が参加していないというのは不利だよな。
 いや決して寂しいとか心細いとかではなくてだな。単純に「敵」「味方」と断定できる相手がいないというのが……」
 エドゲイン君の試射をしてからしばらく、なんとはなしに南東へと森の中を進んでいたコミクロンだったが、不意にまだ名簿を読んでいないことに気付いて足を止め、そこで読んだ名簿の感想がその第一声だった。
「……そうだな、おそらく名前の響きからして……しずく、クレア、いーちゃんとかいう奴等は無害だろうな。なんとなくそんな気がする。とりあえずその三人でも探してみるか」
 名簿を読み終えて黙考した後、自称科学者であるはずのコミクロンが発した言葉は、なにやら非科学的なものだった。
 尤も、本人が既に魔術士であるので、そもそも科学的云々という話でもないと言えなくはないが。
「あーぁ、せめてティッシかアザリーでもいれば簡単なんけどなぁ。キリランシェロは一々ケチつけてくるからいなくて正解だ」
 と、そこまでひとしきり愚痴をこぼしたコミクロンが更に続けようとした時――
「なんだ? 誰かいるのか?」
 不意に、声がかかる。

(しまった、油断した!)
 思った時には、反射的に魔術の構成を編んでいた。エドゲイン君を構えるのは間に合いそうもない。
 上手く構成が編めないことに苛々しつつも、コミクロンは時間を稼ごうと声を出す。
「あぁ、いるいる。ここにいるぞ。だがしかし、早計にも攻撃しようとしているのならやめることを勧めよう。
 大陸最大の魔術士になるかもしれない世紀の大天才にして科学者であるこの俺を殺すと世界の危機だぞ。
 どれくらい危ないかというとティッシを怒らせるよりも怖いかもしれない……いや、ティッシを怒らせる方が世界の危機か……?」
 最後はよくわからない自問になりつつあるコミクロンを見て、安全だと判断したのだろうか。
 声をかけてきた相手が嘆息しつつ、姿を現した。
「あー……まぁ、こんなとこで大声で独り言してるくらいだから、ゲームに乗った奴じゃないとは思ってたが……」
 こんな変な奴だったとはなぁ。と、声に出さず口だけを動かし、天を仰ぐ。
「俺の不運はどこまで続くんだ……」
 小声で言うと、何かを決意したように頭を前に戻し、言う。
「ま、これも何かの縁だと思うことにしよう。問答無用の殺人者じゃなかっただけマシだな」
 そして、相手の容姿に気を取られて呆けていたコミクロンに向かい名乗りをあげた。
 ヴァーミリオン・CD・ヘイズ、と。

【G-6/森の中/一日目/03:00】

【コミクロン】
[状態]:健康
[装備]:エドゲイン君1号
[道具]:デイバッグ一式
[思考]:ヘイズが即座に襲ってこなかったので安堵。戦力になりそうかどうかを考える。

【ヴァーミリオン・CD・ヘイズ】
[状態]:健康
[装備]:尖った石
[道具]:デイバッグ一式、有機コード
[思考]:とりあえずコミクロンと情報交換をしつつ、休息と紋章の解析。
[備考]:紋章による盗聴、その他機能に気付いている。

2005/05/09 文頭に空白を挿入

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