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第402話:ふたりは神将 MaxHard

作:◆5KqBC89beU

 北斗揺光破軍星君、そして、北斗天枢貪狼星君。
 彼らは、北斗七星の名を冠する神将であり、天軍でも屈指の精鋭たちである。
 まぁ、要するに、偉くて強い神仙だ――ということになっている。いや、本当に。
 さて、その偉くて強い神将サマが、今まで何をしていたのかと言うと……。
「おい鳳月。ここは以前通った場所ではないか。知らない間に戻ってきているぞ」
「なっ、何だよ緑麗、俺のせいだって言うのか!?」
「うるさい。叫ぶな。大声を出して、無駄に体力を消耗するな」
「ぐっ……」
「やれやれ。またしても、やり直しか」
「うぅ……俺たち、ここから出られるのか……?」
 二人そろって思いっきり道に迷っていた。

 では、何故こんな情けないことになっているのか、回想シーンで説明しよう。
 時は、メフィストや志摩子と別れ、二人が島の中央に向かって歩き始めた直後。
 鳳月と緑麗は、なんと、森の中で遺跡を発見した。
「ほとんど地下に埋まっちゃってるけど、なんとか中には入れそうだな」
「おそらくは、殺し合いのために用意された舞台装置だ。無視しよう」
 興味津々の鳳月と、どうでもよさげな緑麗。二人の意見が食い違った。
「待て待て緑麗! せっかくの遺跡なんだぞ? 俺と一緒に中を調べようって」
「馬鹿か鳳月。宝探しをしているヒマなどないだろう。さぁ、仲間を探しに行くぞ」
「だから待ってくれってば! そういう意味で言ったんじゃないんだよ」
「ほう、そうか。だったら説明してみろ。くだらない理由だったら鉄拳制裁だが」
「隠れ家に使えるかどうか、確認したいんだ。中が安全そうなら、戦闘能力のない
 参加者を避難させてやれるだろう? どうやら腕自慢ばっかり参加させられてる
 わけでもなさそうだし、怪我をした参加者に会うかもしれないしさ」
「……なるほど。一理あるな」
「だろう?」
「それで、先客がいたらどうする気だ」
「隠れてるなら、『乗りたくない』か『乗れない』かの、どっちかじゃないか?」
「殺し疲れて眠りに来ている、という動機も考えられる。油断はするな」
「そういう時こそ、なんとか説得してやらないと」
「もしも、救いようのない悪党が隠れていた場合は?」
「……とりあえず生け捕りにしとこうか」
「その後で尋問だな。あるいは拷問になるかもしれないが」

 というわけで、二人は地下遺跡に足を踏み入れた。
「罠も、その他の危険物もないみたいだな。それに、誰もいない」
「誰かがいた痕跡もない。我々が最初の発見者だったようだ」
 ――びしっ!
「ええと緑麗。今、なんか、足元から不吉な音が」
 ――びしびしっ!
「諦めろ鳳月。もう既に手遅れだ」
 ――びしびしびしっ!
「……星秀に会えるかもしれないな」
 ――びしびしびしびしっ!
「しゃべるな。舌を噛むぞ」
 ――どがしゃがらがすごすばらどどーんっ!

 こうして二人は、崩れた床と一緒に、地下遺跡の奥へと落下していった。
 全身あちこち怪我だらけになったが、二人とも、どうにか命は無事だったりする。
「なぁ緑麗。ご自慢の鼻で、出口から吹く風の匂いとか、感知できないのか?」
「いいか鳳月。少しは考えてから口を開け。無理だからこそ、困っている」
 ひたすら似たような通路が続く。単調極まる光景が、容易に座標を間違えさせる。
立体的に絡み合った坂道が、今いる深度を忘却させる。そこは、まさしく迷宮だった。
 はてさて、迷子の神将たちは、はたして脱出できるのか?
「だから、今度は、さっきの分岐を右折だって」
「どの分岐だ? 5分前の丁字路か? それとも、8分前の十字路か?」
 頑張れ鳳月! 負けるな緑麗! どっちを右折しても行き止まりだけどな!

【G-6/地下遺跡の迷宮/1日目・11:55】

『破軍と貪狼』
【袁鳳月】
[状態]:全身あちこち怪我だらけ、疲労困憊
[装備]:不明
[道具]:支給品一式(パン5食分・水1500ml)、メフィストの手紙
[思考]:地上を目指す/仲間を探す

【趙緑麗】
[状態]:全身あちこち怪我だらけ、疲労困憊
[装備]:スリングショット
[道具]:支給品一式(パン5食分・水1500ml)
[思考]:地上を目指す/仲間を探す

[チーム目的]:他の参加者と接触して、争いを止めたい意思を伝える。
         また、刻印について調べている参加者を探し、話を聞く。
         ただし、マーダーらしき単独行動者や、多人数のチームは避ける。
[チーム備考]:この後、17:00に某所(詳細不明)でメフィストと会う予定あり。

※地下遺跡のどこかに、迷宮へ続く大穴が開いています。

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