作:◆5KqBC89beU
食事をしている最中に、いきなりガユスが停止した。また顔色が悪くなってきている。
「そういえば……お前の仲間も死んだんだよな」
ようやく本当に落ち着いてきたらしい。物部景を探していた参加者が目の前にいる、
と思い出せる程度には立ち直ったようだ。
「やっと、それに気ぃついたか……お前、大丈夫かいな? 主に頭とか」
「やかましい。でも、悪かったな。お前だって辛いだろうに」
物部景は仲間ではなかったが、個人的には、とりたてて嫌いだったわけでもない。
だが、この島では、自分の敵になりうる参加者だった。
(哀れやとは思うけど、それ以上の感慨はあらへんな。俺、悪党やし)
ミズーの死体を見た時も、正直、好都合だとさえ思った。
そんな本音を隠したまま、ガユスに向かって演技する。
「……あんまり実感あらへんねん。あのガキが死んだやなんて」
「……そうか」
静かな部屋に、飲み食いする音だけが響く。
(できれば悲しんどるフリをせなあかんけど……これで不自然やないやろ)
さすがに、嘘泣きを見破られない自信まではなかった。
悪魔狩りのウィザードは、もう、この島に居ない。
カプセルを手に入れられず、悪魔を召喚できないまま殺されたのか。
それとも、悪魔をもってしても勝てない相手と敵対してしまったのか。
あるいは、仲間だと思っていた相手に裏切られて不意打ちされたのか。
とにかく、殺し合いと無関係な事故で死んだ、という可能性は低そうだ。
(まぁ、この島で死んだ『物部景』が、本物やとは限れへん。
『悪魔の俺』が消滅した後で死んで、俺みたいに生き返らされたんかもしれへん)
隣に居るガユスも『本物のガユス』なのかどうか、分からない。
今、本人に「ここに来る前は死んでへんかったか?」と尋ねる気はないが。
ただでさえガユスは精神的に不安定だ。これ以上、余計に刺激したくない。
自分が生き返ったらしいことも秘密にしておきたい。元々が眉唾な話でもあるし、
仲間を失ったばかりのガユスが冷静に聞ける内容だとも思えなかった。
(ガユスは、俺みたいな奴とは決定的に違う)
禁止エリアを避けながら情報を得たかった。だから同行した。他に理由はないと
思っていた。けれど今では、これが真の理由だったような気がしないでもない。
(なんとなく一緒に歩いてた、って表現するんが正解なんやろな、多分。
……無意識のうちに、こいつを善人やと思ったから、ついてったんや)
出会って数時間の他人が死んだくらいで泣ける人間は、とても利用しやすいだろう。
(【権謀術数騙しあいロワイヤル】に続く)
【残り81人】
【D-1/公民館/1日目/13:00】
『Bad Luck Brothers』
【ガユス・レヴィナ・ソレル】
[状態]:右腿(裂傷)左腿(刺傷)右腕(裂傷)の三箇所を負傷、及びそれに伴い軽い貧血。
心身ともに疲弊の極みだが、休息によって徐々に回復する見込み。
[装備]:知覚眼鏡(クルーク・ブリレ) 、グルカナイフ、探知機
[道具]:デイパックその1(支給品一式。ナイフ。アイテム名と場所がマーキングされた詳細地図)
デイパックその2(食料二人分、リボルバー(弾数ゼロ)、咒式用弾頭、手斧、缶詰、救急箱、ミズーを撃った弾丸)
[思考]:1.休息 2.戦力(武器、人員)を確保した上で、クエロをどうにかする。
【緋崎正介(ベリアル)】
[状態]:右腕と肋骨の一部を骨折(処置済み)。心身ともに疲弊の極みだが、休息によって徐々に回復する見込み。
[装備]:光の剣、蟲の紋章の剣
[道具]:デイパック(支給品一式) 、風邪薬の小瓶、懐中電灯
[思考]:1.休息。 2.とりあえずガユスと組んで最低限の危機対応能力を確保。 3.カプセルを探す。
*刻印の発信機的機能に気づいています(その他の機能は把握できていません)
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