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第302話:浮沈は定まらず

作:◆a6GSuxAXWA

 町の外れの、一軒家の中。
「う、ううううううっ……」
 どこをどう走ったか覚えていない。
 たしか麗芳とはぐれてしまった“ように”思う。
 そのあと何か物騒な物音を聞いた“ような”気がして、逃げるようにひた走ってきたのだ。
 どこをどう走ったかも、もはや記憶にないが――
 宮下藤花は、台所の冷蔵庫の陰にうずくまり、頭を抱えていた。
「どうしてこうなるのよう……せっかく、せっかく何とかなりそうだったのに……」
 麗芳といると落ち着けた。話しているだけでも不安が紛れた。
 しかし、また孤独に逆戻りだ。
 なぜ自分はこんなにも運が悪いのだろう。
 そもそもこんな馬鹿げたゲームに参加させられたことだって……
 際限の無いマイナスの思考が、頭の中をぐるぐるぐるぐる回り続けている。
 と、遠くから花火のような音が聞こえた。否、花火ではなく――銃声か。
 驚きに一瞬身を竦ませ、藤花は更に身を縮める。
 そのまま、どれだけの時が経過したのだろうか……

「まったく、そんな事では竹田君が泣いてしまうだろう? もう少し頑張ってはくれないかな」

 ふと、そんな呟きが藤花の口から漏れた。
「さて、どうだろう……今回はかなり不安定みたいだ。どうにもノイズが厳しいな」
 今回の出現は、かなり不安定なものらしい。
 次がもう少しだけでも安定している事を祈りつつ、宮下藤花――いや、ブギーポップは颯爽と衣装に身を包む。
「武器は――この程度、と。糸が欲しいところだが、まあ仕方がない」
 皮肉げに肩を竦めながら包丁を探り当て、布巾に包んで身に帯びる。
 そして左右非対称の不思議な表情を浮かべると、不気味な泡は歩き出す。
 世界の敵を求めて――

【B−4/民家/一日目10:22】
【宮下藤花(ブギーポップ)】
 [状態]:健康
 [装備]:ブギーポップの衣装・包丁
 [道具]:支給品一式
 [思考]:世界の敵の捜索

*『まもるべきもの』と『Are You Enemy?』の中間に位置する話です

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