作:◆I0wh6UNvl6
「よし、とりあえずメニューはこんなものね。」
紙にメニューを書き意気込む千鳥、その量はかなりのものだ。
「こんなに食べるんですか?」
「え、いや、その…ほら、どうせなら夜の分まで作っちゃお〜かな、みたいな。」
あは、あはははははと乾いた笑い声を漏らす。
本当はよく考えもしないで作ったなどと言えるはずがない。
「ああ、確かにいい考えですね。」
真意を知ってか知らずかしずくが同意する。
「よし、じゃあ早速始めましょうか!」
気合十分、腕を捲り上げながらかなめが言った。
オドーと宗介の方、唐突に入り口の方向から声がした。
『皆さん聞いてください、愚かな争いはやめましょう、そしてみんなで生き残る方法を考えよう』
『確かに私たち個々の力は微々たるものかもしれないが、だからこその協力だ!
みんなで一緒に戦おう』
『そうよ!あいつらの好きになんかさせちゃダメ!…わたしは…ダンダンダンッ!!』
小さい声ながら上のほうから確かに聞こえた。
「大佐殿!?これは?」
「うむ・・・おそらく、おそらくメガホンのようなもので呼びかけたのだろう。
キッチンまで聞こえてないのが幸いだな。
最後の銃声を聞く限り何者かの発砲をうけたようだ。
その後の音もないことからして…死んだだろう。」
「大佐、少なくとも敵は銃声が聞こえる距離にいることになります。
この場所にとどまるのは…」
「ああ、危険だ。かなめには、かなめには悪いが料理はしばらくお預けだな…。」
毅然としながらも内心で勇敢な少女が死んだことオドーは落ち込んでいた、
正しきことを訴えてもこの場ではそれ自体が命取りになるのか…。
『だが、私は決して、決して諦めぬ。
必ず協力者はいる、信じなければ奴らの思う壺だ。』
彼女たちに料理を任せている間、宗介とオドーはこのゲームについて考えていた。
「軍曹、君は、君はこのゲームの規模についてどう思うかね。」
「はっ…このようなことを黙認させようとするならば
最低でも一つの国家規模、最悪の場合世界規模の組織が絡んでいる危険性が。」
そう言いながらも宗介は頭の中でこの考えを否定していた。
仮にそんな組織があるとしたらミスリルの情報網に必ず引っかかるはずである。
それに仮に隠しとうせたとしてもそもそもこの島にどうやってあれだけの人数を連れてくるのか、
目の前で死んだガウルンがどうしてこの島に来ていたのか、
彼の常識では計り知れない力が働いている気がする。
『魔法とでもいうのか…ナンセンスだ。』
彼はラムダドライバのことを思い出した、あの装置はまさに魔法のようだが
それでもまだ確実な理論のうえに成り立っているらしい、
その理論を理解できるものは限られているが。
「軍曹、君は、君は本当にそう思っているのかね?」
見抜いているかのようにオドーが言った。
「・・・・・」
宗介は沈黙する。
「軍曹、笑わずに、笑わずに聞いてくれ、
私はこのゲームの規模を世界を遥かに超えていると思っている。」
オドーが切り出した。
「と、申されますと?」
「一つの世界では収まらないのだよ。根拠は君と、君と私の世界の違いだ、
私の世界に君の言う《アームスレイブ》なるものは存在しないのだよ。
そしてこれはおそらくだが、君の世界に私のようなものは存在しないはずだ。」
「…肯定です。」
認めたくはないがといった調子で宗介が答えた。
「つまり、つまり我々はこれから未知の相手と闘わなければならないのだ、
彼女の前でやるのは気が引けるかもしれんが…
もちろん、もちろん誰これかまわずというのは愚かな行為だ。
それでは主催者の思い通りにことが運ぶ。
だが…敵と判断したら躊躇わず殺せ。
でないと我々は生き残ることは出来ん。」
悲しいことだが先ほどのを聞く限り進んで
ゲームにのっているものがいるという事も分かった。
そんな輩と遭遇しない可能性は、ほぼ皆無だ。
「…了解しました、サー。」
宗介から冷たい声で答えが返ってきた。
その冷たさにオドーも若干ゾッとするものを覚えた。
『この若さでこの男・・・相当の、相当の修羅場をくぐっているな。』
ちょうどそのときキッチンから千鳥としずくが現れた、手は料理で塞がっている。
「できたわよ〜、ほら、テーブルの上さっさと片付けて。」
「…すまん、残念、残念だがかなめ、食事をする時間がないようだ。」
「えっ?なんで?」
オドーの急な言葉に千鳥は当然ながら疑問をもった。
宗介が代わりに答える。
「先ほど銃声があった、そんなに遠くはない場所だ。
食事を取っているほどの余裕はない。」
拡聴器で聞こえるとなるとどんなに離れていてもここから100m以内に敵がいることになる。
この答えは間違いなのだがいつもの放送のように
頭に響くタイプでなかったからこう考えるのは当然といえば当然だった。
「そう、残念ね。
タッパーに料理つめるぐらいの時間はある?」
「ああ、その程度、その程度なら構わんよ。」
「大佐、それは…」
「そういうな軍曹、そのくらい、そのくらいの余裕ならあるだろう。」
タッパーに料理をつめおわり、出発の準備が整った。
「さて、とりあえず、とりあえずここを離れるとしよう。」
「もう、ご飯食べるときくらいゆっくりしたいのに!」
「戦場にそんな時間はないぞ、千鳥。」
「分かってるわよ!けどあたしは干し肉だけあればいいあんたとは違うの!」
「それは違う、あれだけでは栄養に偏りが出る、共にトマトなどを摂取し…」
「はいはい分かった分かった、行きましょオドーさん。」
「ああ、早く、早く安全なところを見つけて食事の続きをしよう。
君の料理を楽しみにしている。」
「任せといて、今回はしずくも手伝ってくれて自信作が出来たから。」
だが結局彼がその料理を食べることはなかった。
彼らに別れが来るまであと少し…。
Howling!へ続く
【C3/商店街/11:30】
【正義と自由の同盟】
【相良宗介】
【状態】健康
【装備】ソーコムピストル、スローイングナイフ、コンバットナイフ
【道具】荷物一式、料理
【思考】大佐と合流しなければ。
【千鳥かなめ】
【状態】健康、精神面に少し傷
【装備】鉄パイプのようなもの(バイトでウィザード/団員の特殊装備)
【道具】荷物一式、料理
【思考】早くテッサと合流しなきゃ。
【しずく】
【状態】機能異常はないがセンサーが上手く働かない。
【装備】エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん)
【道具】荷物一式 、料理
【思考】BBと早く会いたい。
【オドー】
【状態】健康
【装備】アンチロックドブレード(戯言シリーズ))
【道具】荷物一式(支給品入り)料理
【思考】協力者を募る。知り合いとの合流。皆を守る。
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