作:◆l8jfhXC/BA
「…………っと」
──正直、かなりきついわ。
己の無力さを認めざるを得ず、ベリアルは歯噛みした。
川から南西にあるビルの中。死にものぐるいでそこにたどり着き、幸いにも置いてあった救急箱から消毒液や包帯を引っ張り出して今に至る。
左腕と口を使い包帯を巻き終わったときにはもうスタミナを使い切っていた。
「もうあいつには会いとうない。誰かが殺してくれるのを待つしかあらへんな」
眼帯の奥に白い眼を持つ少女。あの強大な悪魔だけですら脅威なのに、正体不明の銀色の糸も使ってくる。
体術はたいしたことないが、場慣れしている印象を受けた。
「そもそも……なんで俺はここにおるんや」
一度死んで、しかも悪魔になり、そしてそれも消滅し──だが、今こうしてここにいる。
バールに呼び戻されたのなら──いや、肉体ごと復活しているのは明らかにおかしい。
「……生き返った、としか考えられへんな。ゾンビか、俺は」
苦笑する。あんな“悪魔"がいるならゾンビが出てきてもおかしくない気もするが、さすがにそれは行き過ぎだろう。
「まぁ、いまここにおるってことが大事や。理由はどうでもええ」
無理矢理自分を納得させ、ペットボトルの水を飲みほした。疲労は既にピークに達している。
「ここで休んだ後カプセル捜索。……いや、ある程度人数が減るまでここに隠れてた方がええかもしれへん」
ある程度実力がある者がそれなりに減った中盤以降。そこで参加者の隙をついて殺すしかない。
「あー、こそこそやるんは似合わんなー……、せめて右腕が折れてへんかったら肉弾戦が出来るんやけど」
利き腕を失ったのは痛すぎる。炎は出せるが──それだけだ。
「もしくは探知機に引っかかった連中をなんとかごまかして武器──できれば銃器を強奪、か……? まったく、こういうのはバールのすることやろ」
溜め息をついた。せっかく生き返ったというのに、行動が制限されすぎている。
「ま、今は休憩や」
ゆっくりと立ち上がって、無理に階段を上る。1Fにいたら他の参加者に見つかってしまうかもしれない。
階段を左に行った奥から二番目の部屋で、どっと床に倒れ込んだ。
「…………っ」
睡魔をなんとか抑えながら、ドアを閉め、ベッドと壁の隙間に匍匐前進で潜り込む。
「……限界やわ」
デイパックを奥に押し込み、それを枕にベリアルは深い眠りへと落ちた。
およそ四時間後に響いた足音に、彼は気づかなかった。
【A-4→B-3/ビル2F、階段を左に行った奥から二番目の部屋/1日目・03:00(眠りに落ちた時間)】
【緋崎正介】
[状態]:睡眠中。右腕・あばらの一部を骨折。
[装備]:
[道具]:支給品一式(ペットボトル残り1本)、探知機(半径50メートル内の参加者を光点で示す)
[思考]:身体を休めるのが先決。カプセルを探す。生き残る。
【残り91人】
2005/04/10 修正スレ37
2005/04/22 修正スレ56
2005/05/09 改行調整、一マス開け追加
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