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第140話:凡人と美少女と

作:◆3LcF9KyPfA

「どうかギギナの馬鹿に遭いませんように。
 どうかギギナの阿呆に遭いませんように。
 どうかギギナの畜生が勝手に死んでいますように。
 ついでにクエロの武器が生卵とかだったりしますように」
 そんなことをぶつぶつと呟きつつ、俺は慎重に森の中を歩いていく。
 自分でも馬鹿げているとは思うが、どうにも神様にでも祈っていないと一番会いたくない馬鹿に遭ってしまいそうな気がしてならなかった。
 尤も、神様なんぞ信じてはいないが。
「いや、でも……」
 口にして改めて考える。
 瞬間移動だの呪いの紋章だの異世界人だのがいるくらいだ。
 もしかしたら、億に一つの可能性としては神様もいるかもしれない。
 少なくとも、今この瞬間には。
 ……そう考えると人間、欲が出るものだろう。
 いや、決して俺個人が欲深いとかではなく、一般的にそういうもののはずだ。絶対そうだ。
 という訳で更に祈ってみる。言うだけなら無料だし。
「どうかこれから最初に遭遇する相手がこんな殺戮ゲームを否定していてそれでいて戦闘能力もそこそこあってついでに美少女でありますようにっ!」
 よし、完璧。
 咒式も無い。まともな武器も無い。知覚眼鏡も無い。おまけに女運も無い俺だ。
 もうそろそろ何かいいことがあってもいいんじゃないか?
「っと、森を抜けきる前に目的地をとりあえず決めるか。
 ……西と南は川、東は湖、川の先は市街地か道を挟んで森……」
 どうしようかね。まぁ、夜明けまでまだ時間もあるし、無理に歩き回るよりは休憩も兼ねてここで少し考えてみるか。


「殺し合いなんて、いけないよ……!」
「――っは!?」
 突然聞こえてきた声に、俺の身体が反射的に強張る。
 どうやら、休憩のつもりが少し眠っていたらしい。考え事の途中から記憶が無い。
 しかし、今の声は……
 考えろ、考えるんだガユス。もしかしたら千載一遇のチャンスかもしれない。

 ケース1:罠。
 わざと殺人否定をする声を張り上げることで、戦闘力を持たない者や、弱者だと勘違いして油断した殺人者を誘き寄せている。

 ケース2:普通の美少女。
 “美”が付くかどうかは解らないが、声は少女のものだった。
 例えばギギナの様な殺人狂と出会い、なんらかのトラブルに巻き込まれている。

 考えた。即決。とりあえず様子を見に行こう。別に美少女かもしれないからじゃない。
 もしかしたら役に立つ武器を引き当ててるかもしれないからだ。そう自分に言い訳をする。
「我ながら情けないな……」
 それでも女の声に勝てる男はいない、と俺は思う。
 とにかく、行ってみよう。どの道このまま誰とも会わずに過ごし続ける事はできそうもないし。


 そして、森を抜けて俺が目にしたものは……
「ああ、神様有難う……もしかしたら俺は今日から宗旨変えしてもいいかもしれない」
 俺が目にしたものは、美女と美少女と、俺の知覚眼鏡だった。


【B-6/森近くの平原/一日目/03:10】

【ガユス・レヴィナ・ソレル】
[状態]:健康
[装備]:リボルバー(弾数ゼロ)
[道具]:支給品一式
[思考]:美女と美少女と眼鏡! 美女と美少女と眼鏡!

【ミズー・ビアンカ&新庄・運切と接触】

2005/05/09 文頭に空白を挿入 改行・口調を微調整

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