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第121話:闇妖精の依頼

作:◆1UKGMaw/Nc

 蒼い機体が高速で離れていく。
 それを確認して、男は銃を下ろした。
「おや、行ってしまいましたね。あなたの出番は無かったようですよ」
 その男――秋せつらは、近くの木に向かってそう呼びかける。
 と、陽炎が揺らめくようにその木の周辺が一瞬ぶれ、耳が長く黒い肌の闇妖精が姿を現す。
 アシュラムに仕えるダークエルフ、ピロテースであった。
 蒼い殺戮者の不意を突こうと、姿隠しの魔法で身を隠していたのだ。
「構わない。あのような面妖な輩、意思疎通ができるかどうかも怪しい」
「ぼくは少し残念です。配線の一本でも頂戴できれば"糸"の代用品として使えたのですが」
 さして残念でもなさそうにそう言うと、銃をしまい、ピロテースの前まで歩いていく。
「さて、妙な闖入者が来たおかげで商談が中断してしまいましたが。
 ピロテースさん、あなたの依頼はアシュラムという方の捜索、でしたっけ」
 その言葉にピロテースは頷いた。
「そうだ。私はアシュラム様の臣下。あの方をお守りせねばならない」
「なるほど。で、報酬としてぼくはこの銃を戴いてよろしいんですね?」
 銃をしまった懐をぽんぽん叩きながら問う。
 その言葉にも、ピロテースは頷いた。
 精霊は鉄を嫌う。また、使い方も分からないので、どのみちピロテースには無用の長物なのだ。
 それになにより――


「大体、私はお前に敗れた身だ。力ずくで強奪しても良いところを……」
 そうなのである。
 蒼い殺戮者が近辺に現れる前に、この二人は戦闘を繰り広げていたのであった。
「いやぁ、不意打ちを食らったときは、さすがのぼくももう駄目かと思いました」
「よく言う……最初から気づいていたのだろうが」
 頭をかきながら笑うせつらに、ピロテースは半眼になった。
「しかも、その倒した相手の人探しを引き受けるとは……変わった男だ、お前は」
「無益な殺生はしない主義なんです。まぁ、任せておいてください、
 これでも新宿では少しは知られた人捜し屋ですから。本職はせんべい屋なんですけど。
 あ、おせんべい食べます?」
 デイバッグからせんべいの詰まった袋を取り出し、一枚ピロテースに差し出す。
 見たことの無い食べ物に、思わず警戒した面持ちになる。
「支給品として入っていました、ぼくの店のせんべいです。
 どうせ自分の持ち物が支給されるなら、こんな状況では"糸"のほうが有難かったんですけど」
 さぁさぁとばかりに差し出されるせんべいの香ばしい匂いに、さすがに少し食欲が刺激される。
 ピロテースはそれを受け取ると、しげしげと眺めてから口にした。
「……硬いな」
「でも、おいしいでしょう?」
「……まずくはない」
「それはなにより」

 そして二人は歩き出す。
 二人の気配とせんべいをかじる音が、夜の森に溶けていった。


【残り98人】


【人捜し屋さんチーム】
【F-2/森の入り口付近/1日目・03:30】

【秋せつら】
[状態]:健康
[装備]:強臓式拳銃『魔弾の射手』
[道具]:デイパック(支給品一式/せんべい詰め合わせ)
[思考]:ピロテースをアシュラムに会わせる

【ピロテース】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:デイバッグ(支給品一式)
[思考]:アシュラムに会う/邪魔をするものは殺す


[備考]:F-2 → F-1方面へと移動します。
    BBを銃撃したのは秋せつらです。

出典:
秋せんべい店のせんべい@魔界都市ブルース
魔弾の射手@機甲都市伯林
(強臓式による機能は本来の持ち主でしか発動出来ないため、普通の拳銃と変わりありません)
(本来の持ち主はエントリーされていません)

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