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第094話:科学の申し子?

作:◆7Xmruv2jXQ

「むー……なるほど、このハンドルを回すことでバネが巻き上げられるわけか。
 ふっふっふっ、なかなかによい出来ではないか。
 構造は原始的と言わざるをえんがこのネーミングが素晴らしい! 
 製作者には俺的栄誉賞を授けないでもないぞ!」

 いきなり殺し合いに放り込まれたのにも関わらず、夜の森にて盛り上がってる少年が1人。
 三つ編みを2本おさげにし、黒のローブの上には白衣を着込んでいる。
 緑が主体の森の中では白衣は異様に目立っているのだが、少年は気にする様子もない。
 もっとも、あれだけの大声で話していれば、隠れるも何もないだろうが。
 彼を熱中させているのは支給品である。
 見ためは立方体をした木枠だ。高さは1メートルほどだろうか。
 枠の内部は空洞になっており、無数の歯車と金属の軸が連動するように組み込まれている。
 重さもそれなりのものだろう。鈍器としても使えそうな代物だ。
 だが、その真価は鈍器などではない。
 少年はデイバックから拳くらいの鉄球を取り出した。
 ハンドルを限界まで回し、木枠内の軸に鉄球を装填。近場の樹に向き合う。
 樹を的に試射をするつもりなのだ。  
「科学者は決して妄信しない。己の目で確かめ、初めて真実と認めるのだ。なんせ科学者だしな」
 辺りに緊張した空気が流れる。少年の目は真剣そのものだ。
 少年は息を大きく吸い、木枠を抱えるようにして、


「エドゲイン君、ファイヤ!」

 
 引き金を引くと同時、バネが弾け、伝わった反動で少年が後ろに転がる。
 そして落雷のような激突音。
 射出された鉄球は大樹の幹にぶち当たり、自身を半ばまで埋没させた。
 樹そのものが大きく揺れ、葉が雨のように降り注ぐ。
 樹はしばらくしてようやく動きを止めた。辺りに痛いほどの静寂が戻ってくる。


 少年はしばし機能停止していたが、

「…………コンビネーション3−7−4」

 少年が呪文を唱えると、幹に埋まっていた鉄球がずるりと地面に転がり落ちた。
 拾ってバックの中へと戻す。

「ふっふっふっ、まあ、そのなんだ。
 科学の最先端を駆けてきた俺から見れば玩具同然ではあるが、次回作となる人造人間39号デキサメサゾン君
の主要武器として採用するのも吝かではない。
 別に思いのほか威力があってびびったわけではないぞ! 
 単純な真理に気づいたのだ。
 一時期は小型化を図っていたがやはり時代が求めているのは火力だ! 
 ふっ、キリランシェロの奴、デキサメサゾン君を見たら、驚いて声もでないに違いない…」
 
 再び5分ほど騒いでから。
 少年――――113番・コミクロンは、木枠を担ぎ、ようやく移動を始めた。


【残り104名】
【F−5/一日目/01:30】

【コミクロン】
状態:正常
装備:問答無用調停装置・エドゲイン君1号
道具:デイパック(支給品一式)
思考:とりあえず移動

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