remove
powerd by nog twitter

第078話:決心

作:◆gzzG2LsYlw

(月が小さくて暗い。やっぱりここはロクシェでもなくスー・ベー・イルでもない、どこか違う世界なんだろうか。)
鬱蒼とした森の中に僅かに差し込んだ薄い月明かりに照らさせながら、ヴィルは思った。そして
「どうやったらここから出られんでしょうね。」と、暗闇の中で、先ほど手に入れたハンドガンを
点検しているもう一人に言った。
そのもう一人、キノが言う。
「さあ・・・。最初に話をしていた軍服の連中に聞くしかないようですが、ボク達の体にも仕掛けを
施されている以上、うかつに逆らうのは危険な様です。」
そして
(できれば三日以内には出たいな・・・。)と小さな声で呟いた。

キノが持っている「カノン」は44口径のパーカッション・リボルバー。作動方式はシングルアクションのみ。
六発装填されていて、弾丸はホーローポイント弾。道具がないので再装填はできない。
一方ヴィルが持っている「ベネリM3」は強力な集弾性とストッピングパワーを持つ、装弾数七発のショットガン。
先ほど一発撃ったので現在の装弾数は六発。弾が無いので、見つけるまでは再装填は不可能だ。


会話は続く。
「あなたはパースエイダーを以前にも扱ったことが?」
「パースエイダー?・・ああ、この銃のことですか?」とグリップに手をかけて脇に置いてある散弾銃
を持ち上げていった。
「ええと、銃器全般のことです。」
「なるほど・・・。えっと、まぁ、少し。」
ヴィルはそう言いながら、
(あら、ここにいるのはカアシの六位入賞者よ?下手なわけないじゃない)
と自慢げに話す幼馴染の顔を思い出して、少し微笑んだ。
そうですか、とキノが言って、平然とした顔で続ける。
「では人を殺したことは?」
少し経って、
「・・・・・一度。」
キノは、
「一番大事なのは・・・命をなくさないこと。殺されないことです。つまり自分の命を守るために、
その場に即した最大限の努力をすることです。―――もっと言うのなら、殺される前に殺すことです。」
―――いつか旅先で出会った、刑務所からでて来たばかりの男に言ったものと同じ言葉を、ヴィルに言った。
「ボクは自分の命を脅かそうとする相手は遠慮なく殺します。・・・それがたとえあなたであっても。」
そう付け加えた。
「そうですか。キノさんの”正解”はそうなんですね・・。以前、僕の幼馴染が同じようなことを言っていました。
でも、僕はずっと、どんな場合でも他人に銃を向けてはいけない、と教わってきました。どっちが正しいんだろう・・。」
ヴィルは、真剣な、深刻そうな顔でそう言った。
そしてキノは
「あなたは先ほど襲ってきた人を撃ちました。あなたの中では答えはもうでているはずです。」
真剣な、でも少し楽しそうな顔でそう言った。


【D-5/森/一日目・3:40】
『チーム時雨沢』
【ヴィルヘルム・シュルツ】
[状態]:正常
[装備]:ベネリM3(弾は六発)
[道具]:デイパック(支給品入り) 
[思考]:待機。 敵対するものは容赦なく殺す決心をする。

【キノ】
[状態]:正常
[装備]:カノン(弾は六発)
[道具]:デイパック(支給品入り) 
[思考]:待機。 敵対するものは容赦なく殺す。
【残り101名】

←BACK 目次へ (詳細版) NEXT→
第077話 第078話 第079話
第061話 ヴィル 第115話
第061話 キノ 第115話