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第074話:陰謀は静かに動くよ!ドクロちゃん!

作:◆xSp2cIn2/A

「ぴぴる ぴるぴる ぴぴぴ……る…ぴ…」
 あれからずっと歩き続けていたドクロちゃんでしたが、
歩きつかれてしまったのか、立ったまま寝てしまいました。
 そこはあの零崎一賊の異端児、零崎人識と、炎の魔女、霧間凪の陣取る
一軒の家の前でしたが、雑談を続ける二人がドクロちゃんに気づくのは
まだもう少し後のことになります。

 さて、ちょうどそのころ、大会本部の一室で、艶やかな黒髪を持つ喪服姿の女性と、
一人の優男が会話を交じわしていました。
「やれやれ、ついにドクロがぴぴるモードに覚醒してしまいおったか」
喪服姿の女性がため息とともに言葉を吐きます。
 彼女はバベルちゃん『天使による神域戒厳会議』通称『ルルティエ』の議長を務める立派な女性です。
 対する優男は、あの血塗られたOPでルール説明をした男。
薔薇十字騎士団の人形使い、本名ディートリッヒ・フォン・ローエングリューンでした。
「それにしてもバベルさん、良くぞ来てくださいました」
男が気障な仕草で礼をします。
「カミサマからの勅命じゃからの。それにしてもなぜおぬし等はドクロをこの試練の参加者に選んだのじゃ?」
「それは彼女が『選ばれるべき器』の持ち主だったからですよ。それにしても『試練』ですか」
男の言葉にバベルちゃんは、ふん と不機嫌な顔をして答えます。
「ルルティエの天使たちは、わらわ議長にとってみれば家族も同然。試練とでも割り切らねば家族をこんな戦場に送り込まんわ」
「フフ、『家族』ですか。しかし、あなたの娘さ――」

 男がしゃべりかけたそのときです。ガラッ と、襖が開き、薄暗かった室内に光が差し込みます。
暗くてさっきまでよく分かりませんでしたが、二人が話していた部屋は和室のようでした。
 さて、勢いよく開いた襖に眼を戻しましょう。
 勢い良く襖を開けて入ってきたのは、天使のわっかにくるりん曲がった羊のツノ。金の瞳の下に濃いクマを作った小柄な少女でした。
彼女はサバトちゃん。ルルティエの天使で、今は埼玉県のアバランチ公園に住む、ホームレスな少女なのです。
「どうしたのじゃサバト」
バベルちゃんが上品に体の向きをサバトちゃんに変え、聞きます。
「ぅうっ…えぐぅ……さ、サバトの『ドゥリンダルテ』がないんですぅ」
 サバトちゃんは、ひっくひっく しゃくりあげながら自分の母に訴えます。
そう、サバトちゃんはバベルちゃんの娘なのです。
ちなみにドゥリンダルテとは、サバトちゃんの魔法アイテムである超電磁スタンロッドのことです。
「あぁ、それならいま少し借りているよ。大丈夫、全て終わったらちゃんとかえしてあげるから」
バベルちゃんの変わりに、ディートリッヒが答えます。
「ほ、本当ですかぁ?」
「本当だよ、まぁエスカリボルグは本人の手には戻らないかもしれないけれどね。
 さぁ涙を拭いて、大丈夫だから」
ディートリッヒはサバトちゃんにハンカチを渡します。
サバトちゃんはそのハンカチで顔を拭いて、ちーん と鼻をかむと、ふと気づいたように見知らぬ男に訊ねます。
「エスカリボルグって、ドクロちゃんもここに来てるんですかぁ?」
「フフ、まあね。でも、もう永遠に会えな――」
「サバト!!」
男の言葉をバベルちゃんが遮りました。
「はいっ!」
びくぅ! としながらも、直立不動の体勢をとるサバトちゃんに、バベルちゃんが続けます。
「すぐに元いた部屋まで戻っているのじゃ。わらわもすぐに行く」
「はい、わかったですぅ」


サバトちゃんはそう言うと、とぼとぼと部屋を出て行きました。
「と、言うわけで、すまぬが話はこれで終わりじゃ。わらわはサバトに話があるのでの」
 バベルちゃんの言葉にディートリッヒは無言でしたが、バベルちゃんは開いたままの襖をきちんと閉めると、
サバトちゃんの待つ部屋に歩いていきます。
「くっ!なにが殺し合いじゃ。待っておれドクロ、そなたはわらわが………」
 バベルちゃんが苦虫を噛んだような表情でつぶやきましたが、聞いている者は一人としていませんでした。

【残り 101人】
【D−3】

【ドクロちゃん】
[状態]: 頭部負傷。ぴぴるモード。現在熟睡中。
[装備]: 鉄パイプ
[道具]: 無し
[思考]: 当ても無く移動。他人を見かけたら攻撃。少しは落ち着いた…かな?
  ※能力値上昇中。少々の傷は「ぴぴる」で回復します。

【バベルちゃん(参加者ではありません)】

[思考]:なんとかしてこのゲームを終わらせられないだろうか?

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