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第051話:人無き城内で遭遇する二人と一人

作:◆xSp2cIn2/A

「うわぁ、すごい。あんなに遠くまではっきり見える」
感嘆の声を上げる悠二だが長門の反応は無い。
「でもなんだか見にくいな。クソッ、こんなことだったらシャナと話してないで、
 この前教室にあったモデルガンのカタログを皆と見ておくんだった」
 焦点が合わなかったり、持ち方が下手だったりで、スコープでいくら遠くが見えてもはっきり見えないのだ。
「貸して」
そう言って手を差し出す長門に、悠二はPSG-1を渡す。
スコープを覗く長門と、それを見守る悠二。二人はしばらく無言だった。
物音一つ無い城内が沈黙に包まれる。が、
「ドアの向こう。」
その沈黙は長門のつぶやきによって破られる。
 唐突な一言に虚を突かれた悠二だったが、とりあえず落着きを取り戻し、聞く。
「何?ドアがどうしたの?長門さん?」
「ドアの向こう。誰か居る」
「!?」
 長門の言葉(と、いうよりつぶやき)に、悠二は驚愕を顔に浮かべ、ドアを見る。
それとほぼ同時にドアノブが回り、「ぎぃぃぃ」と、ドアが開いていく。
 そこにいたのは―――
「ぎゃはははは!すごいな、おねぇさん。いくらか手を抜いてたとはいえ、殺し屋の気配を悟るなんてよぉ」
殺戮奇術の匂宮雑技団、団員NO.18 一人で二人、二人で一人。殺戮奇術の匂宮兄妹、その兄。
『人食い』(カーニバル)の匂宮出夢だった。

「ッ!殺し屋!?」
 完全に腰を抜かす坂井悠二に対して、長門有紀の反応は適切で、それでいて効果的だった。ただし、
相手が普通の人間だったとしたら。
 長門は先ほどまで覗いていたスコープの付いた、PSG-1を侵入者に向け、全くためらわず、撃った。
すさまじい轟音が、さほど広いとはいえない室内に響く。
 しかし、侵入者 ――出夢は、長門が引き金を引くより先に、銃を構える長門に向かって、
未だ呆然としている悠二の上を飛び越えるように、跳躍した。
 出夢はおかしな体勢で撃ったせいで、長門の手からふき飛んだ狙撃銃を空中でキャッチ。
そのまま壁を蹴って仰向けに倒れた長門を跨ぐように着地した。
「長門さんッ!」
 轟音で我に返った悠二は、倒れた長門に駆け寄ろうとするが、
「ばかやろう!」
出夢の突然の怒声に、ビクリと体をこわばらせる。
「確認もせずに狙撃銃をぶっ放す奴がどこにいる!あ?ここか?ここにいるんですかぁ!?」
「確認した。」
長門の小さな反論に、出夢の額に青筋が浮く。
「なおさらだめじゃねぇか!あぁあーあー!無理な体勢で撃つから肩が外れてるじゃねぇか。」
出夢は長門の肩に手をかけると、乱暴に、しかし適切に、肩の骨をはめた。
「あの……」
 完全に硬直していた悠二だったが、出夢が長門の肩をはめたのを見て敵ではないと判断したのか、
まだ怪我が無いか、長門の体を触りまくっている出夢に聞いた。
「あの……あなたは?」
ん?と出夢は悠二を見ると、にぃ とシニカルな笑みを浮かべて、言った。
「ぼく?ぼくは匂宮出夢。よろしくね、ってかぁ?ぎゃははははははは!」
長門が
「どいて」
と、短く言った。

【チーム・ザ・いとうのいぢ+α(坂井悠二/長門有紀/匂宮出夢)】
坂井悠二
[状態]健康。
[装備]狙撃銃PGS-1
[道具]デイバック一式。
[思考]出夢とのコンタクト

長門有紀
[状態]健康。
[装備]ライター
[道具]デイバック一式。
[思考]SOS団の捜索

匂宮出夢
[状態]健康。
[装備]???
[道具]デイバック一式。
[思考]害をなすものは殺すけど、殺しは疲れたので自分からは殺さない

【残り残り105名】
【G-4/城内/一日目1:35】

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