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第019話:鳥と翼

作:◆/91wkRNFvY

シュゥゥゥゥン。
軽い落下感、どうやらテレポートとやらは無事に成功したようである。
「まったく、いきなり目覚めたと思ったら殺し合い?バカバカしいにも程があるっつーの」
一人、森の中で声を出す千鳥。
(でも、これはどういう事よ?あの場で見渡した限り、何かファンタジーっぽいヤツとか蒼いデカいのとかいたけど、
それにこの刻印、どうやらあの「薔薇十字騎士団」とやらの意向に反するようなことがあると爆発する、の・・・?)
辺りを見渡すが、ここはどうやら丘の上に建った神社、その境内の様である。敷地はそれなりに広いようだ。
「しかし、こうなった以上これが現実、なのよね・・・。
いつまでも混乱してるわけにもいかないし、とりあえず荷物の確認でもしますか」
この異常な状況で自分を保つには、とりあえず声に出していないと不安で仕方ないのだ。
しゃがみこみ、確認したデイバッグの中には、食料・水・懐中電灯・地図・鉛筆・紙・方位磁石・時計・参加者名簿、
「それに、これは鉄パイプ…?」
手首よりも少し細い金属の棒、それが千鳥に与えられた武器だった。
「うーん、これは鉄パイプ、よね、どう見ても。殴れってのかしら」
気を取り直し、参加者名簿を確認する。名簿をめくる手が止まった。
「相良、宗介・・・。良かった、ソースケもいるのね、さっきの場所では確認は出来なかったけど。
 しかし、あの戦争バカがいるとなれば話は別ね、いるといないでは状況が変わるわね・・・」
普段、ソースケの事をバカだスットコドッコイだの言っている割には、信頼しているのである。
言いながら、再び名簿をめくる手が止まった。
「ガウルンって・・・、あの軍人?生きてたの!?それにテッサまでいるなんて!」
(まずいわね・・・、テッサなんて陸にあがったら何も出来ないじゃない、もしガウルンに鉢合わせでもしたら・・・)
考え込む千鳥。ウィスパードの知識はこんな時に都合よく出てくる能力では無いのか、良い方法が何も浮かばない。
「さて、じっとしているのが得策とも思えないし、ここは神社みたいだけど、誰かいんのかなー。
 いたとしても、こっちに友好的じゃないと困るなぁ」
千鳥は立ち上がり鉄パイプを肩に下げ、神社の中の散策を始めた。


「しかしまぁ、この神社、なんつー広さよ」
もう10分以上外周を歩いているが、方角・目測で計るに未だに半分すら歩いていない。
「はぁ・・・、この先どうなんのかなぁ、最後の一人になるまで戦い続ける、なんつーオハナシはゴメンだわ」
相変わらず独り言を続けている千鳥だが、

ガサッ

(誰か、いるのっ!?)
慌てて振り向き、鉄パイプを構える。眼前には小さな林があり、その奥には崖が広がっているだけだが。
そこから聞こえた声は、予想とは大きく違うものだった。
「あ、あのっ、私、戦うつもりは無いんです!」
(女性?年齢的にはあたしと同じくらい、いや、それ以下…?)
「どちら様かしら?」
少し、声を落とし尋ねる。
「私っ、しずくって言います!あの、出て行っても良いですか?
 武器は、その、持ってるんですけど、攻撃する意思はありません」
(油断させておいて・・・、ということも考えられるわ。こういうとき、あの戦争バカならどうするでしょうね・・・)
「解ったわ、あたしも鉄パイプを持ってるの、戦う意思はないけど。念の為構えさせてもらうけど、出てきたら?」
千鳥の許可を得、林から出てきたのは上下一体の見慣れない白いスーツを着た小柄な少女だった。


「こ、こんにちわっ、私はしずくって言います、武器は、こんなのが入ってました」
言いながら鞄の中から取り出したものは、釘バットの様なものだった。
「また。随分似合わないモンを貰ったもんね・・・、あたしはこういう武器に縁があるのかしら?
 もう一度確認するけど、戦う意思はないのね? あたしは無いわ、ここを出たいの」
鉄パイプを少し下げ、尋ねる。
「はい、私もです。良かったら協力しませんか?きっと何とかなります!」
「ふふ、そうね。簡単に言ってくれるけど、あたしも賛成だわ。あたしはかなめ、千鳥かなめ」
武器を下げ、手を差し出し、お互い握手をする。
「あんた、手、冷たいけど、大丈夫?」
「はい、私は、えっと、ロボットみたいなものなんです」
「ロボットぉ?こんな大きさで?まっさかぁ」
そうなのだ、千鳥の知識では人間サイズ、それもこの小ささで人型機械を自立稼動させるなど、出来るはずも無いのだ。
「大体、あんたエラい人間くさいじゃない。そんなプログラム何て聞いたことも・・・」
「その、何て言ったら良いんでしょうか。本体の私は戦闘機の様なものなんですけど、この姿はそのオプションで、
 でも、普段はこの姿での自立稼動なんか出来ないのに、元々私はヒトを模して造られたというか、ごめんなさい、上手に言えません」
「まぁ良いわ、何かもうチョージョーゲンショーのオンパレードって感じだし、信じましょ」
深く気にしない性格なのか、その辺の理解不能な部分は流すことにした。
「ありがとうございますっ、それで、これからなんですけど、どうしましょう?」
首を傾げ、上目遣いに訊ねてくる。
「あたしは探してるヤツがいんのよ。2人、あんたは?」
「はい、私も一人探しています。蒼い自動歩兵、ロボットなんですけど・・・」
「またロボットぉ? 蒼いのって、そういえばさっき集められた時にいた様な・・・」
先ほど一度集められた時の記憶を思い出す。確かに何かデカい蒼いのがいた。
「はい、私も見たんですけど、声をかける間も無くって・・・、彼の名前はBBって言います」
「そっか、あたしが探してるのはあたしと同い年の相良宗介って男と、やっぱり同い年のテレサ=テスタロッサって娘よ」
「とりあえず、この建物の中へ入りませんか? そこで少しこれからについてを」
「そうね、悪くないわ」
そして千鳥としずくは神社の中へと入って行った。


【鳥と翼(千鳥かなめ・しずく)】
千鳥かなめ
[状態]健康。
[装備]陣代高校の制服、鉄パイプのような物(バイトでウィザード、「団体」の特殊装備)
[道具]デイバック一式。
[思考]戦う意思は無し、宗介・テッサと合流したい。

しずく
[状態]健康。
[装備]白い上下一体のスーツ、エスカリボルグ(撲殺天使ドクロちゃん)
[道具]デイバック一式。
[思考]戦う意思は無し、BBと合流したい。

【残り115名】
【H-1/広大な神社の中、神社の裏手は崖/1日目・00:30】

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